遺産分割協議の悩み

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被相続人に遺産がある場合は

相続人全員で遺産分割協議をすることになりますが

一旦は単独で相続の遺産分割協議が成立したものの

現実問題として署名と印鑑をお願いしたところ

相続人の一人が意を翻し

印鑑を押して貰えないケースある。

困ったところで司法書士へ相談に訪れる場合があります。

 

民法の規定(民909条)では

遺産の分割は、相続開始の時

すなわち、被相続人の死亡日に遡って

その効力が生ずると定められています。

よって、法定相続分による相続人全員の共有名義にすることなく

遺産分割協議により単独で相続することになった相続人は

直接単独名義で相続を原因とする

所有権移転登記の申請ができると古い昔から先例で認められています。

 

相続を原因とする所有権移転登記の申請書に

添付書類として遺産分割協議と申請人以外の

共同相続人全員の印鑑証明書を添付させる趣旨は

真正な遺産分割協議書であることを担保させる趣旨に外なりませんが

相続人の1人でも印鑑証明書が提出できない場合は

事実上、登記をすることはできないことになります。

 

それでは、具体的な解決策として

遺産分割協議書が作成されている場合と

未だに作成されていない場合とでは対応が異なることになります。

 

その前に、遺産分割協議の成立について

書面によらず口頭でした遺産分割協議は有効なのかと言う質問をよく受けます。

この回答としては

遺産分割協議については、方式に制限がありませんので

書面によらず口頭でも可能ですが

特に不動産登記の手続きとしては

書面による遺産分割協議書が添付書類として要求されますので

後日のトラブルを防止するためにも

書面で遺産分割協議書を作成すべきでしょう。

 

1 遺産分割協議が成立している場合

   書面でも口頭でも遺産分割協議が成立しているが

    相続人の一人が翻意して印鑑証明書の提供を拒んでいる場合は

    翻意した相続人を相手として遺産分割協議の真否確認の訴えを提起して

  勝訴の確認判決を得る方法が考えられます。

  民事訴訟法第225条による手続きです。

  登記に協力できる相続人については

  遺産分割協議書を作成して印鑑証明書の提供に協力して貰えますので

  後は、翻意した相続人について

  勝訴の確認判決が得られれば判決書を添付して

  相続登記をすることが可能となります。(大阪高裁昭和56.4.10判決参照)

 

2 遺産分割協議書がない場合

  先ほど述べたとおり、遺産分割協議は要式行為ではなく

  遺産分割協議書を作成していなくても

  相続人間で協議が成立すれば遺産分割の効力は直ちに生じていることとなる。   

  よって、相続人の一人が翻意しても

  遺産分割協議は既に終了しているので

  法律関係には影響を及ぼすことはありません。

  理論的には、家庭裁判所に遺産分割の協議の調停や審判を求めることは

  申立の利益を欠くことになり許されないはずです。

  しかし、実際問題としては、事実上遺産分割の協議がなされたたが

  合意には至らなかったことを前提しているのであれば

  調停や審判を求めることはできると考えられる。

  しかし、相続人の一人が翻意をしている限り

  調停は成立する見込みはなく、審判に移行せざるを得ないが

  当事者間で事前に遺産分割の協議が成立していなかったことを

  前提としている場合は、単独で相続しようとする相続人は

  目的不動産を相続する旨の審判がなされる保証はない。

  これでは、調停や審判をする意味もないことになる。

 

  それではどのような方法で解決すべきかを検討してみましょう。

  単独で相続しようとする相続人は

  共同相続人の1人である以上

  保存行為として法定相続人全員を共有者として

  単独で相続登記することは可能です。

  この共同相続登記後に

  翻意をした相続人を相手として所有権確認の訴えを提起して

  解決する方法が考えられます。

  また、共同相続登記後の遺産分割協議による所有権移転登記は

  権利者と義務者による共同申請によることになり

  相続登記のような単独申請は認められません。

  翻意をした相続人を相手として訴求して

  遺産分割を登記原因として判決による持分移転登記をする方法が考えられます。

 

この他に、被相続人名義の状態で

翻意をした相続人を相手として所有権確認の訴えを提起して

勝訴の確定判決書及び

相続登記に協力してくれる相続人からの遺産分割協議書(印鑑証明書付き)を

添付して単独で相続による所有権移転登記をする方法が考えられます。

 

法律的には、解決する方法がありますけれども

それ相当な費用が伴うことは明らかであり

ここまでして相続登記をしようとする人は果たしてどれくらいいるのでしょうか。

 

普段の日常生活において、私たちは人に寄り添い

支え合って暮らしているのが実情です。

特に親族間に置かれては、その絆は太いと思われます。

 

相続が開始されると被相続人の遺産は

共同相続人に分割されるが法の建前ですが

被相続人の遺産を相続人全員がお互いに支え合うために

誰かが単独で相続する。

相続した後は、相続登記に協力した他の相続人を

支え合うことが親族間における相互扶助であると考えたいものです。

 

兎角、権利だとか理屈ばかりが先行する世の中となっていますが

お互いに支え合う心がきっと自分の人生において

心地よい人生を過ごせる道しるべなのかもしれません。

                                        司法書士 石井 隆 

  

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