辺り一面に咲き誇る向日葵を、一眼レフに収めると、その中にふわふわとやってきたのは、モンシロチョウ。
久しぶりにみた気がする。
モンシロチョウに、ピントを合わせて、もう一度シャッターを切る。
向日葵に立ち止まったモンシロチョウと、その奥で向日葵をまじまじと見ているのは、私の彼女だ。
空を見上げている向日葵は、まるで由依さんに恋焦がれるように、上を見上げていて、その光景はモンシロチョウよりも、惹きつけられるものだった。
カシャッ
機械音が鳴ると、由依さんがこちらを向いた。
カメラを介して、由依さんと視線が重なる。
あまりにも、暖かすぎるその瞳が、自分に向いていると思うと、いつもいつも照れてしまうのだけれど、今日は照れがやってこなかった。
ここぞとばかりにシャッターを押す。
「あっ…、もう! 蝶々が入っとった!
なんで今更写り込んでくると!」
先ほどは、カメラから逃げるように飛んでいたくせに、由依さんの顔を綺麗に隠したそいつに、苛立ちが怒る。
「も〜!」なんて怒っていれば、少し先で由依さんが「ふふ」っと柔らかな笑みを浮かべた。
もう一度。
カメラの中に収まる彼女は、向日葵よりも、太陽よりも柔らかく輝いていた。
そんな由依さんに、私はいつまでも恋焦がれるのだろう。そして当たり前のように、口にするのだ。
「好きです」
「ふふっ ひかるっていつも突然だよね」
「急に、思うんですもん。
由依さんのことが好きだなぁって」
「嬉しい。私も、ひかるが好きだよ」
【完】