英語早期教育は無意味
カナダ移住者の追跡研究から
高井ピアノ教室に来られるお子さんのなかに、<英語ネイティブ講師のいる>、を売り物にする幼稚園に通うお子さんもおられます。
英語がペラペラと出来れば、将来の仕事にも有望だろう。
そのためには、なるべく早くから英語に触れさせるのが良いだろう、という考えも分からないではない。
それなら、ネイティブレベルの英語を身につけるのに、いつから始めるのが良いかという、実証的な研究はないか気にしていたら、ちょうど良い研究が取り上げられていました。
朝日新聞 今月6日の記事
お茶の水女子大学の内田伸子名誉教授(発達心理学)に聞く、から
<「英語耳」を育てようと、赤ちゃんのうちから英語教育に取り組む方
がいますが?>
効果は疑問です。外国語の学習は母語が土台。
まず母語を土台に「考える力」を耕します。
外国語は聞き取り能力も高い、小学5年生ころから学ぶのが良いでしょう。
コミュニケーションで大事なのは、話す内容です。
発音や聞き取りは、後からいくらでも学べます。
<日本語・英語のバイリンガルになるのに、英語の早期教育は必要な
いということですか?>
早く英語教育に取りかかれば良いというのは、誤解です。
カナダ・トロント大学の言語心理学者らが、日本からカナダに移住した子どもを10年間、追跡調査した研究があります。
それによると、
① 子どもはどの年齢でカナダに移住しても、1年半ほどで英語の日常
会話は不自由なく出来るようになります。
② いっぽう、学業的な読解力は、移住した年齢で大きな差が出ます。
③ もっとも適応度が高かったのは、小学校3年間を日本で学んで、日
本語の読み書き能力を習得して移り住んだ子たち。
英語の読解力は、平均1年半というもっとも短期間で同学年に追い
つきます。
④ しかし、幼児期に移住した子らは、同学年並みの読解力になるの
に、平均11年半もかかりました。
家庭で家族と日本語で会話するうちに身につける語彙が足りず、小
学3年生ころに、算数以外の授業についていけなくなる子も出て
きました。
⑤ 学校の成績がもっとも良かったグループは、中学になってから移
住してきた子どもたちでした。
<子どもたちの可能性を広げるのに、親が出来ることは何でしょう?>
一緒に絵本を読んだり、ボール遊びをしたり、親子で楽しい経験を共有して下さい。化学や物理などたくさんの知識の詰まった「料理」を一緒に作るのもおすすめです。
社会性や自制心、チャレンジ精神といった非認知能力は、乳幼児期の自発的な遊びを通して得られるものです。
子どもの主体性を大事にして、親が過度に先回りしないことが大切ですね。