年配の人達に『 ♫ いま、何時? ♫ 』と歌詞調に訪ねると、

ほとんどの人が『 ♫ そうね、だいたいね ♫ 』と答えるのだそうです。

これはサザンオールスターズのデビュー曲の「勝手にシンドバット」の一節だからです。

この曲名は、そのころに流行っていた沢田研二(ジュリー)の「勝手にしやがれ」と、

ピンクレディーの「渚のシンドバット」の両方から取って命名したそうです。

この曲を聞いたことのあるほとんどの人が覚えているのですから、かなりのインパクトだったのではないでしょうか。

若い小、中学生だとこれが『 ♫ 今すぐ、教えて ♫ 』になるそうです。

 

私の仲間の中で一番先にサザンのファンになった友人は、このデビュー曲が発売されるとすぐにファンになりました。

そして、「すごいグループが現れた!」などとみんなに宣伝していたのです。

ところが、そのすぐ後でわかったことですが、彼がファンになるきっかけは、デビュー曲のさびにあたる

“いま、何時!”とシャウトする部分を“茨城(いばらき)!”と聞き間違えており、自分の出身県のことを歌っていると勘違いして好きになっていたのです。

これがもし、“茨城!”だったら、この歌の歌詞は一体どうなってしまうのでしょうか。

 

英語の歌詞だと、さらにこの聞き間違えが多くなります。

中学生のころに流行っていた歌の歌詞に、「 ♫ 二人の仲はyou and me ♫ 」というのがありました。

そして、この“you and me ”の部分が、“ ゆう、え~み”と聞こえ、

学校中のゆう君とえみ子さんは、「二人は仲がいいんだね」などとみんなに冷やかされ、そんなことで本人達は真剣に怒っていたのです。

みんな本当に純情だったのだと思います。

 

このころからビートルズの曲も人気になり始め、いろいろな聞き違いがおこりました。

私の知り合いに、自分の娘さんの名前に『由乃』と名付けた人がいます。

この“ゆの”は、ビートルズの『you now my name』という曲名からきているそうです。

この時代のビートルズの曲には、青春時代の純情な思い出がぎっしりとつまっている人がたくさんいるのではないでしょうか。

その何年か後で発表された『オブラデ、オブラダ』では、歌詞の中の“in a couple of they built ♫”の部分が、“えみ子 is blue ♫”と聞こえて話題になりました。

“えみ子は憂うつになっている”のだそうです。

えみ子さんにはご難続きですが、このときのえみ子さんはどう感じていたのでしょうか。

 

以前書いたことがあるのですが、家庭教師をしていた6年生の男の子に、小学4年生までイギリスで暮らしていた子がいました。

その子の受験直前の12月になってからの一番の悩みは、

「クラスに好きな女の子がいるのに、そのことを相手に打ち明けるチャンスがなかなかこなくて困っている」

というものでした。

「早く打ち明けて、できたら自分の受験を応援して欲しい」

のだそうです。

そして、どんなタイミングで打ち明けたら良いのか私にまで真剣に相談するのでした。

イギリスでは、好きな女の子ができたらそのことを相手に打ち明けることが英国騎士としての男らしさの表れで、これがなかなかできないでいる自分のことを、受験のこと以上に悩んでいるのでした。

 

同じ純情でも、国によってすいぶんと違うものですね。

 〔 カーネル笠井 〕