数年前、6年生のK君の受験指導をしていたときのことです。
受験まであと2ヶ月とせまった12月になっても、K君はなかなか勉強に集中できないままでいました。
何か悩み事でもありそうな様子でしたので、何となくそのことを聞いてみました。
すると、すぐにこんなことを打ち明けてくれました。
K君は、学校の自分と同じクラスに好きな女の子がいるとのことでした。
そして、そのことを彼女に打ち明けて、できれば自分の中学受験を応援して欲しいと考えていたのです。
K君は父親の仕事の関係で、5才のころから小学4年生までをイギリスで過ごした帰国子女でした。
そのイギリスでは、好きな女の子ができたら、必ずそれを相手の女の子に打ち明けることが、英国の騎士(ナイト)としてするべきことなのだそうです。
もしそれをしなかったら、それは騎士としてとても恥ずべき行為なのだそうです。
イギリスでは、それが当たり前のことで、男の友人達はみんなそれを真剣に応援してくれるのだそうです。
ところが日本では、そんな状況を見たことも相談されたこともなく、どうして良いのかわからずに悩んでいたのです。
私はそれに対して、効果的なアドバイスをすることはできなかったと思います。
ところがK君は、私にそのことを打ち明けたことがきっかけで、その騎士(ナイト)魂に火がついたのか、早速そのことを彼女に打ち明けたそうです。
そして、彼女もその申し入れを受け入れてくれ、K君の中学受験を応援してくれることになったのだそうです。
その後のK君は、ようやく集中して受験勉強に取り組むようになり、第一志望校に二回目の試験で合格することができました。
一回目の試験に落ちた時も、その結果に動じることがなく、二回目の試験に向けて集中して学習を続けていた姿が、今でも私の頭の中に印象的に残っているのです。
K君は、小学生ながら真剣な悩みを持ち、騎士(ナイト)魂で自らそれに立ち向かい、かつ中学受験にも取り組んだという、大きな大きな経験をしたのです。
小さな騎士(ナイト)、ばんざい! 〔 カーネル笠井 〕