以前、府中市にある多磨霊園からはさほど遠くない地域に住んでいたので、この霊園内の車道をバイクで走ったことが何度もありました。
横を通る“東八道路”は、一日中車の行き交う広い道路です。
また、この道をはさんだ反対側には府中自動車試験場があります。
ですから、平日でもこの道は人でもにぎわっているのです。
ところが、一歩霊園内に入るとほとんど人影がなくなるのでした。
特に、夜に走ると真暗闇がどこまでも続いているかのようで不気味にさえ感じました。
霊園なので当たり前かも知れませんね。
ところが、春分の日や秋分の日になると、この日が春や秋のお彼岸の“お中日”ということで、お墓参りやお墓掃除の人々でごった返すのです。
ふだん見慣れているのがとても静かな霊園ですから、まるでお祭り騒ぎのようにさえ感じてしまいます。
お彼岸になると、いつももう一つのことを思い出します。
それは以前、地域の理事会で一緒だった人で、もうお亡くなりになった理事長さんのことです。
私が経理担当の理事をしていた関係上、銀行や郵便局に一緒に行ったりするなど、よく行動を共にしていました。
その方は、この理事会がスタートしたときには副理事長を担当していました。
ところが、そのときの理事長が転居のためにすぐに辞めてしまい、新たに理事長のやり手が誰もいない中で、自ら手を挙げて
「私がやりましょう」
と言って就任したいきさつがあります。
強面の方でしたが、いつも笑顔を浮かべていました。
臨時総会や日曜日の住民たちとの連絡会で、心無いヤジやわがままな注文が出されます。
ついついけんかごしになってしまう私達を横目に、そんなときでも平然としていて笑顔を絶やさなかったのです。
そんな様子に私たちはずい分と励まされたものです。
いったいどんな人生を歩んできたのだろうかなどと興味はありますが、余計な詮索はしないで、今はあのころの笑顔だけを思い出そうと考えています。
どうやら人は、他人の怒った顔は不愉快なのでできるだけ思い出さないようにし、自分の記憶から消し去ろうとします。
ところが、笑顔は思い出すたびにこちらの気持ちをすがすがしくさせてくれるので、度々思い出して忘れないでいようとするのです。
やはり、笑顔が一番ですね。 〔 カーネル笠井 〕