小説です。「百輪女子高DAYS(デイズ)」シリーズです。

 

(前作「百輪村物語」のパラレルワールドです。

 登場人物の性別が逆転し、年齢も若くなっています。

 前作を読まなくても大丈夫です。)

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

☆主人公は、いちおうEですが、群像劇です。
(性別が変わったので、新たに名前をふりました)
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
(生徒は下の名前、教師は苗字。男は黄色
A(3-5 スケバンのボス)  悪久亜  アクア
B(2-3担任・家庭科担当)  芭蕉先生  バブル  
C(2-3 生徒会副会長)  千枝  クララ
D(2-3 転校生)     大奈  ディアナ
E(2-3クラス委員・生徒会書記)栄子 エーデル
F(1-1 DIY部)      文子  フェリス
G(1-4 DIY部)      月夏   ゲイナ
H(百輪女子高の教頭)   広瀬先生 ヒラリー
J(3-4 生徒会会長)   純子  ジャニス
K(草切男子校2年)     加流  カール
L(百輪女子高の校長)   蘭堂先生 リンドン
M(1-2 ダズンのヘッド) 正美  マーシア
  ダズン=1年の不良グループ名
O(草切男子校3年)    織音  オリオン
P(2-3)         風由子 プリシア

 

今回のお話は、前話の「見えない時間」の続きです。

 

では、どうぞ。↓

 

見えない構築

 

 

 

  

 

あの騒動のあと、

不良グループ・ダズンの加入によって、
晴れてDIY部を立ち上げることができたFとG。

次は、部費で悩みました。

出来たばかりの部に与えられる部費は、少なかったのです。

FとGは、生徒会室へ相談に行きました。


そこには、先日、就任したばかりの会長のJと

副会長のC、書記のEがいました。

「あの、DIY部の部費なんですけど、
 なんとかもう少し増やしてもらうことって可能っすかね?」
と、先輩の3人に尋ねるF。

E「先生方に聞いてみます。
 どのくらい上乗せして欲しいんですか?」

F「はっきりとは言えないんすけど、

 けっこうかかると思うんす」


G「部員が14人で、できれば工具をそろえたいし、

 材料も必要なんです」

C「大所帯ね。でも、明確な金額が聞きたいわ」

F「学校の技術室にある工具を貸してもらえるなら、

 その金額は浮くっす。
 あとは、素材。これが一番、かかるんす」

J「板とか釘とか?」

F「そうっす。この間、南急ハンズに行ったら、

 1メートル四方の板一枚で3000円したっす」


E「え?そんなにするんですか?」
バイトを掛け持ちしているEにとっては、

目を見張るほどの額でした。

G「はい。なので大きなものを作るときに困るんです。
 先日、椅子を1脚、自腹で作ったんですけど・・・

 あれが予算的に限界の大きさでした」

J「あー。下駄箱で見たよ。かわいい椅子だった。

 すごいね、あんなの作れるんだね」

C「その椅子、預かってもいいかしら?

 先生によく見てもらうから」

FとGは顔を見合わせました。
F「・・・アクシデントで壊れたっす。もうないっす」

E「お話はわかりました。しばらくお時間下さい」

FとGは「よろしくお願いします」と頭を下げて、

部室にしている技術室へ帰りました。
 


そこには、誰もいませんでした。

 

形の上では部員は14名ですが、
残りの12人はダズンという不良グループで、

ほぼ幽霊部員です。

 

FとGの二人は、長テーブルに着いて、途方にくれました。
せっかく立ち上がったDIY部ですが、

現時点では何も作れません。

F「色々と作りたいんすよね。棚とか、机とか、ベンチとか」

 
G「・・・何か、小さいものから、始めるしかないですよね」


F「やっぱ、小さいものか・・・ああっ」

Fは壊れてしまった椅子を思い出したのか、頭を抱えました。
Gは慌てて、気分転換に別の話題を振りました。

G「そ、そういえば、毎朝、素敵な王子様が通りますよね」


F「ああ!草切男子校のKさんとOさんっすね。
 うちのクラスでも2人の噂ばかりしてるっすよ。

 ・・・おいら、Kさんがいいなって思うんすよ。
 なんか、慈愛のオーラが出てるっす」

G「F先輩は、Kさんが好きなんですね。

 ・・・僕は、Oさんの方です」


Gは本当は2人に興味はなかったのですが、

(Fと推しがかぶらないように)とだけ配慮しました。


F「Oさんも気品があるっすよね。

 粗野なイメージの草切男子校には、惜しいっていうか」

Gは、ふと思い出して、鞄から便箋セットを取り出しました。


G「そうだ、F先輩。実はこの間、

 こんなのを買ったんですよ。百均で」


F「わあ、かわいい子犬柄っすね。あ、猫柄も」


G「これで、王子様たちにラブレター書きません?」


F「あははっ。いいっすね」

ふたりはわいわい言いながら、

それぞれラブレターを書き上げました。


G「すごく良い文章が出来ましたね。

 これ、本当に渡したくなりましたよ」


F「そうっすね。・・・なんだか、ラブレター部っすね」


Fが照れくさそうに微笑むのを見て、

Gはそれだけで幸せでした。
 

 

 

 

 

  2

 

下校時間になったので、

FとGは百輪女子高の校舎を出ました。


F「便箋、ありがと。買って返すっすよ」
G「そんな。いいですよ、百均のだし」
F「でもさ、新しい便箋も見たいし。

 これから百均に行ってみないっすか?」
G「あ、なら、大型店舗に行きましょうよ」

二人は、ちょっと遠くの百均の店に向かいました。


G「この店、初めてです。広いですねえ」
F「おいらも。

 えーっと、文具コーナーはどこかな・・・」


ふたりでウロウロしていると、Fが大声を出しました。


F「G!!こ、これ!!」
G「え?あっ!!」


そこには、様々な大きさの板や棒、

木材が所狭しと並んでいました。


FとGは、手を取り合って喜び合いました。



数日後、FとGは、生徒会室に呼び出されました。

生徒会長のJ、副会長のC、書記のEが二人を迎えます。

J「F、G。

 ・・・あれから、校長先生とお話したんだけど、
 出来たばかりの部だから、

 新たに大きな予算は組めないんだって」

C「でもね、2万円だけ増額できたのよ。
 今年はこれ以上は無理だけど、来年度には

 さらに検討してもらえるんですって」

E「生徒会で清算しますので、

 部の名前つきの領収書を持ってきてください。
 それから、学校の工具は使っていいそうです。

 使い終えたら片づけてくださいね」

Fは頷き

「わかりました。ありがとうございます」と言って、
Gと共に、深々と頭を下げました。


部室に戻ったFとGは、ニコニコしています。


G「2万円の追加は大きいですね。

 百均なら素材をたくさん買えますよ」


F「うん。おいら、ちょっとひらめいたんだけどさ」


G「なんでしょう?」


F「ミニチュアハウス、作らないっすか?あと家具も」


G「ええ?すごくいいですね!!やりましょう」


ふたりはおでこを突き合わせて、

紙にアイデアを書き出しました。
 


そこへ、

ケンカを終えた不良グループ・ダズンのメンバーが、

技術室にどやどやと入ってきました。


「あー、ここが部室なんだー」
「ちょっと休憩させてもらおー」
「これからここで、たむろっちゃおうよ」
「雨の日とか、いいよね~」
「あの××高のグループ、まあまあ強いけど、

 うちらほどじゃないね」

制服を着崩したダズン一同が、思い思いの席に着き、
一気に教室の人口密度があがりました。

ダズンのヘッドのMが数人と一緒に、FとGの席に来ました。


M「何してんの?設計図?」
「うそ~。家を建てるの?」

G「本物の家じゃないです」
F「これは、ミリ単位っす。ミニチュアっすよ」
「ミニチュア?」

ダズンの他のメンバーも集まってきました。
「ああ、シロバニラ・ファミリーとかの?」
「ミカちゃん・ハウスじゃない?」
「そんな、おもちゃっぽいの、部活でやるの?」
「小さい人が、ちいさいのを作るんだ」

背が低いことがコンプレックスのGは、むっとしました。
G「予算がないんです。百均で材料を買って、
 細かいのをたくさん作ろうと思ってるんです」

ダズンたちは、ニヤニヤしました。

「材料足りないの?

 じゃあ、うちらが、店でパクッてきてやろうか?」
「その辺のやつらから、カツアゲしてもいいよ」

Fはぎょっとして、立ち上がりました。
F「な、なんてことを言うんすか!!ダメっす!!

 部を潰す気っすか?!」

ヘッドのMは大笑いして、片手をひらひらさせました。
M「やあねえ。冗談に決まってるじゃない。

 F先輩、真面目~」
心の中では、半分本気でしたが。

F「入部したからには、ここではおいらに従って欲しいっす。
 部への迷惑行為はやめて欲しいっすよ」

Mは苦笑して

M「わかった、わかった。もう邪魔しないからさ」と、
またメンバーたちで固まって、

ケンカやナワバリの話をし始めました。

GはFに顔を寄せ、小声で言いました。

G「いいんですか?あの人たち、放っておいて」
F「大事な部員っす。それに、部室に来るのは、権利っす」 
G「・・・」
 

 

 

 

 

  3

 

FとGは、ダズンたちを気にせず、

ミニチュアハウスづくりに没頭することにしました。

まずは高さ40センチほどの2階建ての家をくみ上げました。
今度は、小さなテーブルを作ったり、椅子を作ったり・・・。

ケンカの合間に訪れるダズンのメンバーは、

DIY部の部室である技術室にたむろしながらも、
二人の制作の様子をちらちらと見ました。

「・・・なんかさ、すごいの作ってるよね」
「めちゃ、かわいいんだけど。あのベッド」
「もっと近くで見たい」

Fはその声が聞こえたので、
「見たいなら、こっちに来ていいっすよ」と声をかけました。


2、3人がすぐさま、FとGのそばに座って、
目の前の家具を持ち上げました。
「すご、ちっさ」「激かわ」「まじやば」

ダズンたちも、かわいいのが好きな女子高生。

次々に集まってきました。
「どうやって作るの?」
「やってみたいんだけど」

FとGは、ダズンたちにレクチャーを始めました。


Mだけは少し遠くで見つめていましたが、
いつものメンバーたちのほっこりした笑顔が新鮮で、
(まあ、たまには、こんな時間もいいかな)

とふっと思うのでした。

時間が経つうちに、ダズンたちも

それぞれアイデアや新しい作品を生みます。


「ここに額縁つけない?」
「屋根とドア、絵の具で塗っていいかな?」
「カーテンつけていい?」
「布団を縫ってみた。どう?」

FとGは嬉しくなって、部員たちにどんどんやらせます。

とうとうヘッドのMもFから教わりながら、

別の家を新たに作り始めます。

F「M。文字通り、板についてきたっすね」
M「まあね。最近、メンバーもここが楽しいって言ってるし。
 ケンカも、前ほど面白くなくなってきたかもね」
G「それ、すごくいいと思います」


また、ダズンの誰かが
「DIY部って、ちょっと言いづらいなあ」と言うので、
Fが「じゃあ、大工部でもぜんぜんいいっすよ」と笑います。
「大工部か。いいじゃん、それ」
「言いやすいしね」


部の通称名も出来て、

さらに仲間内の結束が出来たような気がしました。

毎日、技術室に明るい声が響きました。



ある日の休み時間。
Mのクラスに、手紙を頼まれた、と一人の生徒が来ました。
Mが中身を確認すると、

3年のスケバングループのボスAからの果たし状でした。

M「ふん。面白い。決着をつけてやる」
手紙をくしゃりと握りしめ、1年のMは不敵に笑いました。



その日の放課後。

校庭でスケバンたちがケンカをしている、という話を聞いて、
FとGが技術室を飛び出すと、

Aにやられたのか、Mたちが倒れていました。


F「もうケンカはしないって、言ったじゃないっすか」
M「ごめん・・・売られちゃって・・・」
G「みんなで部室に帰りましょう」

Mは、Fに手を貸してもらいながら、

なぜか少しだけ目が滲みました。

ダズンたちがよろよろと立ち上がった時に、
見知らぬ一人の生徒が近づいてきて、
「あの。みなさんは、何の部活ですか?」

と質問してきました。

F「大工部っす。興味、あるっすか?」
Fはつい、通称の方を言ってしまいました。


声をかけてきたのは、2年生の転校生Dでした。

そしてDIY部に、新たな風が吹き始めました。

 


(「見えない構築」終)