「君に聞く」 
         アン・ドヒョン

 ”練炭の灰を蹴るな 君は他人を暖めたことがあるのか”

 ”練炭の灰を蹴るな 君は誰かに一度でも熱い人間だったか”

 韓国ドラマには詩がよく出てきます。アン・ドヒョンの詩「君に聞く」は韓国ドラマ「カイスト」(SBS 1999年)13話のタイトルに使われました。

 ハングルで検索してこの詩を調べてみました。

 アン・ドヒョンは読者に煉炭のように熱く生きなさいと言っている。 じめじめ暮さずに炎炎と燃える煉炭のよう生きなさいと。 煉炭は最後まで燃えながらオンドルを暖め、炊事のために七輪で燃える。 「君に聞く」の詩は”隣人のために必要な人になったことがあるか? 他人のために社会のために生きたことがあるのか?”そう読者に聞く。
 この詩は人間に対する愛と人生をどう生きればよいのかに対する悟りを掲示してくれる。  熱い煉炭のように誰かのために暖かい心で、世の中を温めて生きなければならない。 これは仏教の饒益衆生 思想だ。 世の中をよくする人が大勝菩薩である。
 煉炭は一度火が付けば、ほてるように最後まで燃える。 決して途中で止めることはない。私たちの人生もそうである。 すべての人が一度限りの人生を送る。 二度世の中を生きることはない。  だから一度きりの人生熱く過ごさなければならない。 自分の身を煉炭のように完全に燃やして透徹するように暮すと、よく生きた人生だと言える。 それで生命の価値が貴くて絶対的なのである。
 すべての人間、すべての生命には貴賎がない。一つ一つの生が大事で絶対的である。 一人の生命がこの地に生まれるために、億劫の歳月と奇跡的な縁があった。 ばらの花だけ美しいのではなく、あらゆる野の花が美しいのである。
 「君に聞く」「煉炭一枚」はアン・ドヒョンの代表作 ‘煉炭の詩 2作’ である。 アン・ドヒョンは全教組活動をしている途中、教職を罷職される痛みの中でも人間に対する愛と信頼を失わなかった。 私たちに普遍的な素材を通じて、生の痛みを時として昇華させて人々に大きい希望を与えている。 韓国ブログより

 
 「練炭はオンドルを暖めて燃えつきます。価値ある練炭の燃えカスを蹴飛ばしてはいけないよ。人は誰かのため、社会のために温かく生きて、弱者を蹴飛ばすようなことをせず、悔いなく生きていこうではないか」ということなのですね。
    
   
   「練炭一枚」
        アン・ドヒョン

 他の言葉も多くて多いけど
 人生とは
 自分ではない誰かのために
 喜んで練炭一枚になること

 床がひやっとしてくる日から
 来年の春まで
 朝鮮八道の道で最も美しいのは
 練炭車がブルンブルンと
 頑張って丘を上がることなんだよ
 やるべきことが何か知っているように
 練炭は、まず自分に火を移し燃えると
 限りなく熱くなること
 毎日温かいご飯とお汁をがつがつ食べながらも知らなかった
 全身で愛した後は
 一塊の灰として寂しく残ることが怖くて
 今まで私は誰に対しても練炭一枚にもなれなかったね。

 思ってみれば
 人生とは
 自分を
 粉々に砕くこと

 雪が降り世の中がつるつるしたある朝っぱらに
 自分ではないある人が安心して歩いていく
 その道を作ることもできなかった、私は  
                          (訳)アシェルラングエージスクールより)


 イメージ 1アン・ドヒョンは1961年生まれ。文学博士と同時に大学教授で 韓国を代表する倫理的詩人です。1981年に大邱毎道新聞 新春文芸に詩「洛東江」が当選して文壇に踊りでました。中学で国語を教えている途中、全教組活動のため解職されました。その後本格的に文学者として活動しています。