ただ一度の試合 (後編) | 武道上達法研究会|新大阪・川崎で沖縄空手指導

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前回より続く。

私はポイントで相手を上回っていたしダメージのある攻撃はほとんど受けていなかった。しかし突然攻撃ができなくなった。

酸欠だ。スーパーセーフに慣れていない私は防具をつけたときの呼吸法もわからず、日ごろの稽古と同様の荒い息使いで掛け声を出しながらラッシュを続けていた。どの程度の時間が過ぎたか定かではない。金魚鉢で無理やり顔面をおおわれたかのごとく呼吸も視界も苦しくなった。首つりをしながら闘っているように動きがとまり、逆に相手のパンチを何度も顔面にもらってしまった。


いかん、逆転された。相手も疲労していたのだろう、私は必死に相手のサイドにまわりこみサバキ空手の回し崩しで相手の頭を下げさせると顔面に数発思い切り膝蹴りを叩きこんだ。


素面ならかなりのダメージを相手に与えたはずだ。しかし防具の特性上鼻や口にはほとんどダメージを与えることはできない。


防具 (スーパーセーフ)

防具の薄い側面を攻撃すればよかったのだが日ごろの稽古と違う動きは咄嗟にはできないものだ。

最後の力を使い果たした私はもうほとんど動くことはできなかった。序盤とは逆に相手のパンチで何度も押し出され結果はポイント負け。敗戦は悔しくもあった。同時にへとへとになるまでで戦った爽快感もあった。防具を外すと空気が美味かった。型稽古や約束組手ではこの感じはえられまい。私が若い会員に「ルールの制限はあっても若い時期に試合を経験したほうがいい」と助言するのはこのときの経験も大きい。


試合後。横になったままダメージから回復中の私に相手が握手を求めてきた。互いのレスペクトを掌から感じた。

ラグビー経験はないがこの言葉は実感できた?


「ノーサイド」

(この項、完)