鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2023年10月28日号)

*村松剛の評伝が出た。

 4月に、評論家として名高かった村松剛(むらまつごう)の評伝が出版された。村松は1929年生まれで、1994年に65歳で亡くなった時、その早過ぎる死を嘆く声は保守論壇の随所で聞かれた。

 彼の評論活動は文芸評論から歴史、軍事、国内政治、国際政治と幅広く、保守論壇では江藤淳と二分するほどの高い評価を得ていたのである。また1970年に自決した作家、三島由紀夫とは家族ぐるみで付き合うほど親密な間柄であり、1990年に著した「三島由紀夫の世界」は三島の評伝の決定版として今も評価されている。

 

 だが今ここで村松剛を取り上げるのは、彼が中東問題の専門家でもあったからだ。彼の立場は1960年代から終始一貫してイスラエル側であり、これは当時も今も反イスラエル的なマスコミ世論と鋭く対立していた。

 しかし反イスラエル的なマスコミの論調では、中東問題は何一つ理解できなかった。私は1983年に自衛隊に入ったが、同年に村松が著した「血と砂と祈り」を貪るように読んで、ようやく中東問題に一定の理解を持った。要はイスラエルを悪者にしていては、何一つ問題は解決しないのだ。

 今再び、中東問題が急浮上したが、ここでイスラエルの示す強硬な態度は村松の示したイスラエルの論理からしか解明できまい。この時期に「村松剛-保守派の昭和精神史」(神谷光信・著)が出たのは単なる偶然ではないと言えよう。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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