鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2022年1月10日号)

*北発射は拉致解決の予兆か?

 5日に北朝鮮は極超音速ミサイルの発射実験を行った。これは極めて高度な技術を要するミサイルであり、米国ですら完成させていない。中国が北朝鮮に技術を供与しているようだが、ならば中国の真意は何なのか?

 昨年9月28日にも北朝鮮は同様の実験を行っているが、その後、金正恩の妹、金与正の政治局入りが確認されている。ならば中国の技術供与は金与正の昇格の承認として行われていることになろう。5日の発射で金与正が実権を掌握したと見てよいのではないか。

 

 7日に日米外相・防衛相会談2+2がオンラインで行われたが、その前日の6日の午前中、突然に林外相とブリンケン国務長官の日米外相電話会談が行われたのである。議題は北朝鮮のミサイルへの対応と発表されたが、詳細は伏せられている。

 だが、翌日に2+2を控えた、この段階での突然の外相会談は当然のことながら憶測を呼ぶ。しかも米国は韓国とはこの種の会談を行っていない。つまり、米国が北朝鮮のミサイル発射に絡んで、日本に対して特別の外交メッセージを伝えたわけだ。

 

 日本と北朝鮮の最大の外交懸案といえば、拉致問題である。米国もそれを十分理解しており、トランプと金正恩との米朝首脳会談でトランプは、拉致解決を金正恩に迫り、そこに金与正は同席していた。バイデン政権は、米朝首脳会談に否定的だが、北朝鮮は再開を望んでいよう。

 もし金与正が実権を掌握したとしたら、5日のミサイル発射の前後に、米国に対して拉致解決を条件に米朝会談の再開を持ち掛けたとしても何の不思議もない。バイデン政権、岸田政権ともに外交下手だが、その外交能力が試されているのかもしれない。

 

 軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

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