鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2022年1月4日号)

*5か国反核共同宣言の真相

賀正

 核兵器を保有する5大国すなわち米英仏露中が昨日、核戦争に反対する共同声明を出した。「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならないことを確認する」という共同声明を5大国が出すのは初めてのことだが、これで「核戦争は起こらない。めでたや、めでたや」と喜ぶのは正月ボケだ。

 5大国が今まで出したことのない共同声明を出した背景には、今までになく核戦争の危機が高まっているという共通の認識があるからに他ならない。12月20日号「ウクライナと台湾」でも触れたように、ロシアがウクライナに、中国が台湾にそれぞれ侵攻し、イランがサウジアラビアを攻撃すれば、第3次世界大戦の勃発である。

 

 米国の世界覇権が一瞬にして崩壊しかねない状況を何よりも恐れているのはバイデン大統領だろう。そこで米国は中国・ロシアとの直接対決を避ける方策を模索した。米ソ冷戦期には米ソは直接対決を避け、それぞれの同盟国に武器を供与して代理戦争をやらせた故事に倣(なら)ったのである。

 昨年12月にバイデンはプーチンに「ロシアがウクライナに侵攻しても米国は軍事派遣しない」と約束した。つまり「直接対決を避けよう」とロシアに提案したのだ。これが今回の共同宣言の伏線になったと見て間違いあるまい。

 

 従って中国が台湾に侵攻しても、米国は直接的な軍事介入を控えることが、この共同宣言には含意されていよう。米中戦争が核戦争に発展するのは確実だからである。では中国が台湾に侵攻したら、どうするのか?

 米ソ冷戦期の故事に倣(なら)えば、核兵器を保有していない同盟国が米国の代わりに戦うことになる。一体その同盟国はどこなのか?

 

 今月中旬、岸防衛相と韓国の国防相は米国でオースチン国防長官と3者会談に臨む。岸田総理、林外相の訪米を拒否した上で行われる3者会談の開催は様々な憶測を呼ぶ。親中派の岸田、林を遠ざけたのは中国に情報が漏れるのを抑える狙いであろう。

 つまり中国が台湾に侵攻した際の対応について、密談が持たれると見てよいだろう。分かりやすく言えば、米国は軍事介入できないから日韓で代理戦争をしてくれないかと言う相談である。憲法9条のしばりのない韓国はともかく、日本の政権内部には激震が走るだろう。

 1990年代、細川政権は米国から対北空爆作戦への協力を求められて崩壊した。安全保障は常に日本の政権にとってアキレス腱なのである。岸田政権の支持率は高いようだが、「一寸先は闇」「板子一枚、下は地獄」が政治の鉄則と心すべし。

 

 軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

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