鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2020年2月24日号)

*フィリピンの憂鬱

 今月中旬、フィリピンのドゥテルテ大統領が米軍との地位協定(FVA)を半年後に破棄する旨を公表した。現在、フィリピンには米軍は駐留していないが、米比は同盟関係にあり米軍がフィリピンで合同演習をするに際してFVAは不可欠である。

 事の発端はドゥテルテの側近が米国に入国を拒否されたのに対する報復措置であり、米国の対応次第で、破棄を撤回する可能性はある。しかしこの好機を中国が見逃すだろうか?南シナ海のフィリピン領を侵食しつつある中国にとって、米軍がフィリピンに来援しにくい状態は願ったり叶ったりであろう。

 

 現在、フィリピンは好景気が続いているが、それというのも中国からの莫大な投資によって支えられている。電力供給は既に中国の電力会社の手に委ねられており、中国の意向を無視すれば、フィリピン経済は瞬時に崩壊する。

 新型肺炎騒動では、フィリピンはいち早く中国からの入国を禁止し毅然たる対応を示したかに見えるが、同時に台湾からの入国も禁止せざるを得なかった。一つの中国の原則を守れという中国の圧力に屈したのである。

 

 今後、フィリピンと米国はVFAの再交渉の機会を模索するであろうが、中国が陰に陽に妨害工作を仕掛けるのは必定である。そしてフィリピンがその工作に屈服する公算は極めて高い。そうなれば半年後、VFAは破棄され、米比同盟は実動演習を伴わない絵に描いた餅となる。

 これ即ち、フィリピンが中国の属国になることを意味する。だが問題はフィリピンに止まらない。もしフィリピンに中国軍の拠点ができれば、グアム島の米軍基地と台湾、日本との連絡線は遮断されるから、米国は台湾、日本、韓国を防衛できなくなる。つまり、すべて中国の属国になる訳だ。

 

 いま、中国共産党政権は新型肺炎により独裁政権特有の末期現象を露呈している。それは事実だが、同時に中共幹部が起死回生の一手を模索しているのもまた事実であろう。実は中国共産党は歴史的に見ると、幾度も独裁政権特有の末期現象を露呈し、その都度、奇手、奇策を弄してゾンビのようによみがえってきた。

 今日のフィリピンの憂鬱は、明日の東アジアの絶望となるのかもしれないのである。

*前号「トランプ再選の危機」の動画解説がUPされた。前号に含まれない情報も追加してあるので是非ご視聴を!下記をクリック

https://youtu.be/-INjZip0v9Y

 軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

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