カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。
Twitterでも演劇のこと、おりおりつぶやきます。
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小津安二郎映画の現存する最古の作品『学生ロマンス』上映・於神保町シアター。

 

司会者「このブログでは通常映画は取り上げていないのですが、この作品は映画の上映に弁士(説明者)の語りと、ピアノの生演奏がつくので、ライブの範疇に入れました。黒澤明と並んで、海外で最もよく知られている映画監督・小津安二郎(昭和38年没)の無声映画時代の作品(1929・昭和4年)の作品です。早稲田大学(と、名前は出ていないが学生帽や、牛込若松町の地名など、あきらかに早稲田)の学生で、プレイボーイでお調子者の渡辺(結城一朗)と、堅物の山本(斎藤達雄)が千恵子という女性(松井潤子)をめぐって鞘当てを繰り返し、決着をスキー場でつけることになるが……というのがストーリィです」

 

小津マニア「小津と言えば日本調の代表的監督とされていて、自身“僕は豆腐屋だから豆腐しかつくらない”と純和風監督の宣言みたいなことを言っていますが、若い頃は外国かぶれだったことは有名で、ゼームス・槇などというペンネームを使ったりしてます。すき焼きにもカレー粉をかけ、昼間から黒ビール、それも生卵を落したものを好んで飲んでいたといいますしね。この作品はその小津の舶来趣味が濃厚に出ている、非常に貴重な資料になっていますね。スキー場での恋愛勝負というのが第一モダンですし、結城の部屋に貼ってあるのがジャネット・ゲイナー主演の『第七天国』(1927)のポスター。あと、2人が輸入もの(缶の表記が全部英語)のアスパラガスの缶詰を菓子がわりに食べるシーンもあります」

 

映画ファン「……マニアはそういうところで貴重だ貴重だというが、映画作品として面白いかというと微妙だな。コメディとしてもラブロマンスとしても中途半端だ。ヒロインの千恵子がだいたい軽薄で、山本と親密になるかと思えば二枚目の結城にちょっとチヤホヤされると、彼が人間的に信用できないことは前半でずっとフッているのにやはりなびくし、結局はお見合いでスキー部の部長の畑本(日守新一)と結婚することになると、2人には見向きもしない。人間としてどうかね」

 

昭和研究家「いえ、昭和4年当時はそういうドライな感性がモガ(モダンガール)として尖端を行くもの、と認識されていたのです。この時代の小津は自らもモボ(モダンボーイ)をもって任じていました。こういう男女関係が新しい時代の感覚だったのでしょう。後年の小津が純日本調にこだわったのは、その反動であったかもしれません」

 

映画学校の先生「小津は伏見晁の脚本を自由に脚色して演出したそうだ。思いつきの演出も多かったようで、それが一種の軽みを作品に与えているが、まとまりはいかにも悪いな。前半の、渡辺が自分の下宿を空き間と偽って女の子を釣る手段にしている、という設定はシチュエーションコメディぽいが、後半とのつながりが全くない。何が言いたかった作品なのか、テーマが絞り込まれていないのではっきりしないんだ」

 

小津マニア「でも、やはり小津映画ですよ。お見合いのシーンは出てくるし、ローアングルで煙突とか雪山とか撮っているのを見ると、雀百までという気がしてくるな」

 

ファッション研究家「衣装が今見てもオシャレと思える。スキー場でのスタイルがセーターにベレー帽、それとパイプをくわえているのがカッコいい。千恵子はなんとセーラー服だし」

 

役者好き「役者ではやはり斎藤達雄が抜群にうまいな。結城一朗も軽薄な二枚目をうまく演じている。ヒロインの松井潤子はファニー・フェイスで“不美人”という評判もあるが、表情など可愛いよ。後に巨人の水原茂の奥さんになったくらいなんだから、男性を引きつける魅力をもっていたのだろう。彼女のお母さんを演じた飯田蝶子は50代に見えるがこの年、まだ30代前半。戦後は“日本のお婆ちゃん”として有名になるが、この頃から老け役だったんだね。私生活でも松井潤子とは仲がよかったようで、よすぎて昭和9年に賭け麻雀容疑で2人一緒に検挙されたりしている。あ、そうそう、スキー部員のひとりとして若き日の笠智衆が出てるね。まだこのときは老け役じゃなかったんだ」

 

昭和史研究家「1929年というのは日本にとって奇跡的な端境期でしてね。第一次大戦で日本に訪れたバブル景気が終戦で崩壊したのが1918年。それから10年近い不況が日本を覆っていたのが、ようやく政府の経済政策が効を奏しはじめ、物価が下がって、これからまた好景気に向かう、と国民全体が楽観的予測でうわついていた時代です。この映画もそんな状況を形にしたものではないでしょうか。……もっとも、この年にアメリカでは大恐慌が起こり、日本も当然のことながらその影響をもろにかぶって、またまた不景気のどん底にあえぐことになりますが」

 

映画史家「映画もまたこの時代は端境期でした。2年前の1927年にアメリカでトーキー(発声映画)が開発され、この1929年に日本初のトーキー映画『大尉の娘』が水谷八重子主演で公開されます。時代は一斉にトーキーへとなびきますが、映画界にはそれに反発して無声映画にこだわる監督も多かった。小津安二郎はそのひとりで、トーキー時代になっても意地で無声映画を作り続けていた。この『若き日』が、トーキー的な作りと無声映画的な作りの中間みたいになっているのも、その端境で悩んでいた小津の心中が透けて見えているのかもしれません」

 

頼光ファン「そのせいか、頼光くんもやりにくそうだった。解説をつけにくい映画なんだよな。字幕と芝居も微妙に連動していないところが多いし。もっと頼光調で、映画にツッコミを入れたりしながら解説してもよかったと思うんだが、やはり天下の小津にはそういう茶々は入れにくいのかな」

 

と学会員「頼光さんの坂本頼光らしい代表作と言えば自作のアニメ『サザザさん』ですが、最近は上映を控えているそうです。やはり、彼自身が有名になって、いつまでもこういうアブないのはやっていられないというか……なので、この9月の2日に名古屋でやる『トンデモ演芸界名古屋の陣』における傑作選と、23日に目黒雅叙園で行われる『と学会結成25周年記念大会』での新作『サザザさん番外編』は貴重な上映になりますよ!」

 

司会者「えー、ここで宣伝はお控えください」

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