カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。
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雑誌『PLAYBOY』創刊者、ヒュー・ヘフナー9月28日死去。91歳。

 

昭和のマンガに出てくる大金持ちというのは、家では必ずガウン(スモーキング・ジャケット)を着た姿で描写された。スモーキング・ジャケットは文字通りタバコを吸う際の部屋着であるが、防寒着の役割も兼ねている。昔の洋風建築物は暖炉の前以外は冬などは大変冷えたので、部屋着の上にもう一枚、防寒用の衣装をまとう必要があった。大きな屋敷ほど寒かったので、ガウンを来て屋敷内で過ごすのは18世紀から19世紀末にかけて、上流階級の基本スタイルになった。20世紀も半ばになり、セントラルヒーティングが普及しはじめるとガウンは無用の長物となって廃れたが、マンガやドラマの世界では、ガウンは大金持ちの記号として残った。

 

……21世紀にもなって、“本当に”年中ガウンを着用している大金持ちを、私はこのヒュー・ヘフナーくらいしか知らない。まるでユニフォームの如く、インタビューなどに答え、写真撮影に応じる彼は、常にガウンを羽織った姿であった。

 

ガウン姿である、ということは、その下は部屋着(パジャマ)であるということだ。いつでもベッドにもぐり込める、という印でもある。仕事も終わって食事も終わり(あちらでは晩餐は正装が決まりである)、かた苦しい衣服を脱ぎ捨てて、ディジェスティフ(食後酒)のブランデーに気分もほぐれていく。誘った金髪女性といい雰囲気になり、お互い気分が盛り上れば、いつでもベッドへなだれ込める、ガウン姿というのはその臨戦態勢にあるという表明でもあった。自分の雑誌『PLAYBOY』はそういう状態で読むのだよ、と、創刊者自らが範を示していたのかもしれない。

 

実際、自分の雑誌名を地でいくプレイボーイで、生涯にベッドを共にした女性の数は1000名を超えると豪語し、最後の結婚は2012年、86歳で26歳の女性(もちろん、元プレイメイト)とのものだったが、これらも、愛娘に継がせた『PLAYBOY』社の宣伝のためではなかったか、と思える。彼は自分自身がなにより価値ある自社の広告塔である、ということを心得ていた。ここらへん、高須クリニックの高須院長と相似である。

 

ヘフナーの姿を(もちろんガウン姿だったが)意外なところで見かけたのは、クリストファー・リーがホストをつとめるホラー映画史紹介のビデオ『ホラー映画100年史』(1996)の中でだった。彼はその中で、フレッド・オーレン・レイやジョン・カーペンター、ベラ・ルゴシの息子などと並んでコメンテーターとして出演し、自分が高校時代(1942年)に作ったホラーの8ミリ映画『Return from the dead(死からの帰還)』を紹介している。

 

彼はその作品で、自分自身、死者を蘇らせるマッドサイエンティストを演じていて、当時からかなりのホラー映画マニアだったことを示している。

「当時好きだった女の子を主役にしたんだ。ふられたけどね」

とヘフナーはジョークまじりに語っているが、好きな子をひっかけるための映画ならラブストーリィにすればいいものを、フランケンシュタインテーマのホラーにしてしまう(ふられたのはそのせいもあるのではないかと思われる)というのは、この、アメリカ人の性的嗜好をある程度明確に定着させた人物が、生(エロス)と共に、死(タナトス)にも大いに興味があったことを思わせる。

 

同じ100年史の中で、彼はホラー映画への興味を

「10代の反抗期と関係がありそうだ」

と分析している。反抗期はまた、思春期の謂でもある。性への興味は、モラルへの反抗と(特にヘフナーの世代は)重なり合う。彼がピューリタン的な性格の強かったアメリカ人の社会規範に革命をもたらした(彼は同性愛や黒人と白人のセックスなどに理解を示していたことでも知られる)ことと、ホラーという“秩序の破壊”(フランケンシュタインやドラキュラに見られる“不死”の思想は、人を死すべきものと定めた神の秩序への反抗である)の物語のファンであったことは、無関係とは言えないだろう。

 

小学校4年のころ、家庭科の授業でウサギの刺繍を作らされたとき、私は意味もよくわからぬまま、『PLAYBOY』誌のトレードマークのウサギ(放蕩のシンボル)を刺繍し、あわてた教師にそれを破棄させられた。もしヘフナーがそれを知ったら、

「秩序と良識への大きな反抗」

として喜んだのではないか、とちょっと想像している(笑)。

 

時代を作った天才と、ホラー映画ファンという点で一致することにささやかな喜びを見出しつつ、安らかな眠りを祈りたい。

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