typhoom一家3.5公演『耳障りなシンフォニー』 | カラサワの演劇ブログ

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typhoom一家3.5公演『耳障りなシンフォニー』於新井薬師『SPECIAL Colors』

 

司会者「女優のこうのゆかが中心になったユニット『typhoon一家』の公演です。ここは年2回の公演と企画公演(0.5公演)を交互に行っているので、今回の『耳障りな……』は企画公演になりますね。2015年に上演された作品の再演です。生のピアノ演奏がつくアトリエ公演という形をとっています。酒蔵会社とワイナリーを経営していた父が生命維持装置につながれるようになり、生前の、尊厳死を選ぶという遺言により、明日、その装置が外されるという前の晩に集まった、5人の子供たちと、次女の夫たちの間に繰り広げられる人生模様ですね。主宰のこうのが長女の音々を演じており、脚本と演出はこのメンバーの松下愛子です」

 

演劇ファン「せまい空間に、さらに息がつまるような濃密な人間関係が描かれて、65分という短い上演時間が、じりじり焼け付くような時間に感じられるドラマだった。よく、人間ドラマを描こうと思ったら葬式の芝居を作ればいいと言われるが、父の命が生命維持装置のスイッチを切ることで終わる前夜、という設定はうまいな。仕方ない、というあきらめと、それでもやはり感じられる罪悪感が、兄弟姉妹の本音を引き出している」

 

役者好き「客席に『劇団光希』の人たちの姿が見えた。去年観た『「笑顔。(すまいる)〜さざんかの咲く頃に〜』に出演していた田口和が出演していたからだろう。あのときの田口はコメディリリーフとして笑いをもっぱら取っていたが、こちらはまったくのシリアスで、自分の人生を左右した存在である父の死という現実に向き合えず、酒をあおる次男を演じて、いちばん印象に残る演技をしていたね。実際の田口さんは下戸なのだが、泥酔の演技が真に迫っていたのは、“酒を飲まない役者がいちばん酔っぱらいの演技がうまい。酒の席で観察することができるから”という原則を見事に証明していたな」

 

女優ファン「私は次女の律を演じた小幡りえが印象的だったな。長女ほど一家の一員という自覚がなく、自由人である陶芸家、といえば聞こえはいいがテイのいいヒモである健一を大事なこの家族の集まりに連れてきてしまっている。とはいえ、末娘で東京でテレビ関係の仕事をしている三女(この家族模様を番組企画にして売り込もうとする)ほど奔放ではない、という中途半端な立ち位置をうまく表現していて、リアリティがあったわ」

 

役者好き「とにかく集められた6人の役者の顔立ちがバラエティに富んでいて、面白い。もっとも、本来は兄弟姉妹の話なのだからどこかに似たところがないとリアルじゃないんだろうが、舞台というのは異なる個性の持ち主の役者たちのぶつかりあいを見せるところだからね。重い、暗い話だがそこは大変楽しめた」

 

脚本学校の先生「話もシンプルで訴求力が強い。泣いている観客も多かったね。ただ、シンプルに過ぎて話が単調にちょっと感じてしまった。ストーリィのどこかに転換点……6人のうち誰でもいいが、最初の考え方から、兄弟姉妹同士のいさかいにより何かそこに変化をもたらすポイントが欲しかった。それが話の中心にあれば、“演劇”というくくりがはっきりしたと思う。全体を通しての感じは、よくある家族のある一夜の様子を切り取ったスケッチという感じで、演劇に昇華されていない感じが残った」

 

演劇ファン「まあ、当パンに作・演出の松下が、あえて“よくある話”をテーマに選んだという意味のことを書いてますから、そこらは最初からねらっていたのかもしれませんよ」

 

細部マニア「その当パンのキャスト表を見て面白かったのは、兄弟姉妹の名前が“音々(ねね)”“拓斗(タクト)”“楽斗(ガクト)”“律(リツ)”“奏(かなで)”とみな音楽がらみの名前なんだね。これはライブハウスで上演され、ピアノの生演奏がBGMで入るという公演の性格からだろうが、父親の芸術家的というかロマンチストだったことがうかがわれ、みんなの子供時代に母親が亡くなり、その後、家族で行ったキャンプで泣き出してしまう、といった、ちょっと線の細い父親像が浮かび上がってくるという効果も出していたと思う」

 

司会者「『耳ざわりなシンフォニー』というタイトルも、その五人のキャラクターの合奏、という意味合いが含まれているのでしょうね。なかなかすみずみにまで神経の行き届いた作品でした」

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