カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。
Twitterでも演劇のこと、おりおりつぶやきます。
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オリジナルキャラクターソングCDシリーズ2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ「ツキステ。」第4幕『Lunatic Party』於Zeppブルーシアター六本木。

 

おじさん「うひゃあ、長いねどうも。まるで落語の『たらちね』だな。“みずからことの姓名は父はもと京都の産にして……”ってやつ。『ツキステ。』じゃなくて『タラチネ。』と表記したいくらいだ」

 

司会者「……すいません、司会者より先にしゃべらないでください」

 

おじさん「長いのはタイトルばかりじゃない、劇場のブルーシアターというところ、開演時間の5分前に門のところについてひと安心と思ったら、そこから入口までの距離の長いこと長いこと。入ったときにはギリギリの時間だった。こういうことも告知しといてくれよ」

 

司会者「わかりましたわかりました。あなた、どうか黙ってて。……ええ、ムービックから出ているオリジナルキャラクターソングCDシリーズ『ツキウタ。』を演劇にしたものです。このCDは架空のアイドルグループが歌っているCDという設定で、オリジナルソングとドラマで成り立っているんですが、その舞台版、になります。俗に2.5次元といわれるコミックやアニメの舞台化の流れに乗ったものですが、アニメもあるにはあるけれど、アニメの舞台化ではなく、アニメもこの舞台も共にCDから派生したものですね。

ツキノ芸能プロダクションという、ムービック自体がモデルの芸能事務所が抱える二組のアイドルユニット、Six Gravity(シックスグラビティー:通称グラビ)とProcellarum(プロセラルム:通称プロセラ)を中心に、彼らが住んでいる事務所の寮に飼われているペットたち、それに事務所の人間たちが主な登場キャラクターですが、ある老魔法使いが残した魔術を完成させようとした使い魔によって彼らが魔界に飛ばされてしまう(“すってんころりん”と彼らは称している)事態となり、そこからの脱出をめぐっての冒険がストーリィとなっています。歌あり踊りコントありの、まあ演劇というよりパフォーマンスショーのような趣の舞台ですね」

 

小劇場系劇団主宰者「演劇の世界の人間としては、何も言うことはない。演劇として観ればそれはいろいろ口をはさみたいこともあるが、さっきのおじさんみたいな人を除けば観客のほぼ99.9パーセントが若い女性ファンで、彼女たちは大いにステージを楽しみ、盛り上がっている。これはこれとして成立している世界だし、こういうものがあったからと言って演劇の世界が侵蝕されるわけでもない。芝居としてどうのこうのと文句を垂れるのは野暮というものだろう」

 

演劇ファン「意外だね、あんたがこういう世界を認めるとは」

 

小劇場系劇団主宰者「……正直な話、こういう世界には全く縁がないと思っていたのだけれど、キャストに演劇畑から、劇団ヨロタミの中澤隆範が参加しており、彼を観るために行ってみたら、その他演出の伊藤秀隆も、振付の大勝かおりも、顔見知りだったのには驚いた。逆に言うと、こういうところで仕事をしていることで、演劇の世界の人間たちが“ステージに関わって食っていく”ことが出来ている。むしろ感謝すべきだろう」

 

劇団員「“食べていく”か。確かにブルーシアターの900席が前9ステージほぼ満席で、プレミアム席9800円、一般席でも7500円(当然こっちは一般席で入ったけど、ドンケツの席でもその値段だった)。それで熱心なファンたちは地方から泊まり込みでやって来て、コンプリートで全ステージ観劇して、しかもグッズを買いあさる。これなら関係者全員、十分に潤える。小劇場でちまちまと芝居やっているこちらとは世界が全然別ものだからなあ」

 

小劇場系劇団主宰者「まあ、あまり比べない方がいい。わが身が情けなくなってくるから」

 

演劇ファン「……しかし、小劇場の演劇だって、自分たちに熱心なファンがついていれば、そういう人たちのアンケートを参考にして、もっと評判がよくなるような作品作りにはげむでしょう。この『ツキステ。』などはその点においては徹底していますね。以前も人気歌手の舞台などはあったけど、演じる方もファンたちも、最低限、既製の“芝居”という場を借りる、という意識から離れられなかった。最近のこういうアイドル舞台は、芝居の常識、というか“かくあるべき”をテンから捨てて、ひたすらファンの嗜好に合わせた作りにしています。まず、登場人物全員が男で、全員がイケメンというところが凄い。確かに主要観客はそれだけを目的に観に来ている。余計な登場人物は要りませんからね」

 

一般ファン「あれ、魔法使いのお爺さんがいたんじゃなかったっけ」

 

ヨロタミファン「あれはディアブロ役の中澤隆範の二役です。あ、このために彼が起用されたのか、と納得しました。さすがにあの役には演劇的素養が必要となりますから。でも、ディアブロ役では女性ファン(たぶん初日からずっと観ている人たち)から拍手や歓声ももらっていましたよ」

 

演劇ファン「10人以上いるイケメンたちが、横一線にずらりと並んで話すシーンには、さすがに演劇を見慣れている目で見るとイラッとしますが、これはアイドルグループには逆に常識なんでしょう。芝居でいう立ち位置に深浅をつけて立体的にしたりすると、それぞれにお気に入りがいるファンたちに不公平になりますから」

 

コミケ評論家「こういう2.5次においては、二次創作まで含めての世界観をファンたちは受け入れています。舞台で描き方が浅い人物関係も、そこらは同人誌で深すぎるくらい、みんな自分なりの好みの設定を描いたり、または描かれたものを選んだりできる。むしろ人物描写の足りなさは、そういう、ファンが想像を膨らますための遊びしろになってる。この世界はそういうマルチな展開を最初から頭に入れて作られているので、ひとつのジャンルだけの完結性を云々してはいけないのです」

 

演劇学校の生徒「……今回の舞台で印象に残ったのは、魔界に飛ばされて人間化したペットたちと、その飼い主のアイドルたちとの“主従関係”がテーマになっていたことですね。友情、というより愛情に限りなく近い心情関係が両者の間には結ばれている。ペットと飼い主、という設定なので、男同士の仲良し関係を描いても、妙なことになりません(それ以上に進ませるのはファンの妄想ですから、演じる実際のアイドルにも変な色はつかない)。確かに賢いアイデアです。主人公グループの1人である涙(るい)に対し、ペットの黒猫のヤマトは、“最近、仕事が忙しくなったと言って、自分にかまってくれなくなった”とスネてみせます。これって、普通なら恋人の男性に対し女性が抱く嫉妬ですよね。それを、BL仕立てにして、すんでのところで“いや、ペットの心理です”と交わしてみせる。寸止めBLと言っていいかも」

 

アイドル研究家「ついでに言えば、ペットと飼い主の関係というのは、今のアイドルファンの女の子たちにとっては理想の関係なんです。恋人、となるとずぶずぶの関係になって非常にめんどくさい。かといってただの友達では物足りない。ペットのように、愛情はあるけど、距離を保っている関係がいい。一緒にお風呂に入っても、男女関係のような生臭さはない、というような、ね」

 

脚本家「普通の芝居のセオリーからいけば、登場するペットたちとその飼い主が、あっちでもこっちでも、ラストにそのお互いの思いを吐露するんだけど、あれがしつこくて感動の押し売りになり、減点対象になる。しかし、こういう舞台の場合は、それぞれの役者やキャラクターのファンたちそれぞれへのサービスとして、1人々々にいいセリフを与えなくてはならない。まさに“行く先々の水に合わねば”で、ジャンルが異なればそのジャンルのニーズというものに合わせないといけないんだな。一律に批評することはできないわな」

 

ペット好き「ネットに上がっているペット動画とか見ると、子猫とかパンダとかの、たどたどしい動きが可愛い、と評判になる。2.5次元芝居のたどたどしい演技も、ペットとして観ればそこが可愛くて仕方ないんだろうなあ」

 

演劇ファン「しかし、主従関係の友情というテーマで全てを語ろうとしているあまり、そもそもの発端である、メンバーが魔界に飛ばされたという設定まで、魔術師とその使い魔の主従の愛情、に収斂させてしまっているでしょう。あれはどうなのかな。あの種明かしがあったところで、話のスケールが一気に矮小化してしまった感がありました」

 

演劇学校の生徒「いや、あれは逆にいいと思いましたけどね。ファンタジー系の作品には、魔界とか異世界とかを描くとき、妙にそこの舞台となる場所や魔法の世界設定に凝って、わけのわからない決まりや約束事、固有名詞などを連発してしまう傾向がある。これをやるとマニア以外ははじかれてしまうんですね。年少のファンにもわかりやすい、“ペットへの愛情”に話を絞っている。なまじ自分の文才にナルシスティックなプライドのある小劇場系の作家(誰とは言いませんが)がすぐに観客を置いてきぼりにしてしまうのに比べ、若いアイドルファン少女たちの意識と完全に目線の高さを合わせて最後までブレてないですよ。これは大したものです。プロの技と言えるでしょう」

 

アイドル研究家「アイドル文化草創期の頃のファンたちは、係員の制止もきかず舞台上に上がったり、アイドルにつかみかかってもみくちゃにしたり、興奮のあまり正気を保てないまでの狂乱状態になる子が多かったと聞きます。……それに比べると昨今のファンは上演前の指示を守り、ライトを点灯するタイミングもきちんと守り、ルールに従って整然と楽しんでいる。物販にもちゃんと列を作りますからね。完全に文化として、その楽しみ方が確立されていると言っていいでしょう。作り手ばかりでなく、受け手の側もプロなんです。息がぴったりです。それだけに、パワー不足を指摘する人もいます。善し悪し、ということでしょうね」

 

おじさん「ロカビリーブームのときはだな……」

 

司会者「誰もあなたに聞いてません。誰だ、この人連れてきたの」

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