カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。
Twitterでも演劇のこと、おりおりつぶやきます。
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尾米タケル之一座第九回公演『時間;L』於中目黒ウッディシアター

司会者「お笑い芸人と役者の混淆による劇団で、反原発コントフェスで発表した『絶対!!原子力戦隊スイシンジャー』などが話題になった尾米タケル之一座による公演です。海の近くの田舎町に、東京での職をやめて帰省していた主人公・オサム(尾米トゲル)は、昔知り合いだった女性も最近こちらに帰ってきているという噂を耳にして、彼女を捜そうと悪友たちとドライブしていた時、男をはねてしまう。男は命に別状はなかったものの、記憶喪失になり、病院から失踪してしまう。数日後、その男は突然オサムの前に現れ、ウノと名乗り、事故のときの状況を根掘り葉掘り聞き出したがる。彼は自分のことを、時間を“所有”している神のような存在だ、という。頭を打っておかしくなったのだとオサムは思うが、実際にウノは他人の思考を読む術を心得ており、オサムと友人たちの記憶を読み取ってしまう。彼は、あのとき自分をオサムの車の前に“押した”人物がいるはずだという。そして、なぜかその人物は、事故現場の時間をなんべんリピートしても、出てこない、それどころか、事故が起きない、と不思議がる。一方、オサムたちが探していた女性、キョウコは町にある寺に身を寄せていた……果たしてキョウコが、ウノを殺そうとした人物なのだろうか、というストーリィです」

 

一般人(女性)「演劇はあまり観ないんですけど、知り合いの娘さんが出ているというので観に来ましたの。最初のあたりで出てくるみなさんの、噛みあわないやりとりは大変面白くて、コントを観ているみたいでした。でも、後半の、時間がどうとかという話になるとちょっとわたしたちには難しすぎて」

 

演劇ファン「ミステリ的に、不可解な事件が起きて、その謎を解こうとした主人公もその謎の中に取り込まれていき……という展開は非常にスリリングで面白い。おばさんがさっき言った“噛み合わないやりとり”は確かに、ここの劇団の売り物になっている。話の腰を常に折られる喫茶店のマスターのヤマダ(野々川護)も面白いし、喫茶店の従業員の子(雨宮シオリ犬)がなぜかホットコーヒー恐怖症で、ホットを運ぶとき手が震えるとか、寺の住職の娘が料理自慢で、人に料理を作るが、“おいしい?”“何が入ってると思う?”などとやつぎばやに質問ばかりして食べる隙を与えないとか、無性におかしいね。……ところが、それらは話の本筋にはまったく関係ない。本筋に入って、時間を所有する存在と主人公の会話もまた噛み合わないのだが、その“理屈”が噛み合わないおかしさというのは、さっきの意味のない噛み合わなさのおかしさに比べると見劣りしてしまう。相殺されてしまうんだな。うーん、演出というか、そもそものストーリィ作りの力点を置き間違えたのではないか、と思えてならないんだよねえ」

 

脚本家志望者「主人公とおっしゃいますが、この話の主人公というのはオサムなのかウノなのか。話はオサムの目を通して語られていますが、後半は完全にウノ主体で話が回っていて、ウノともう1人のキーパーソンである寺の住職とのやり取りの間、オサムはただ突っ立って聞いているだけです。ストーリィの収拾や展開、解決には何の寄与もしていない。ストーリィに凝るタイプの作家がよくやってしまうことなんですが、これでは観客は話に共感できません。観客は冒頭でオサムに感情移入をするのですから、たとえ振り回され型の主人公にせよ、観客はオサムの行動と思考と共に物語を回収するのです。その解決なり取りまとめなりに、オサム自身の能動的な動きがなければ、いい芝居とは言えないと思います。キョウコとの恋愛関係も、本来オサムに付与させるべき設定だったと思う」

 

SF少年あがりのおじさん「自分はむかしSFマニアだったから、時間の所有者という概念も、パラレルワールドの概念も理解できたけど、一般人のおばさんとかにはキツいだろうな、と思った。その自分でさえ、その時間の所有者が実は二人いて、その娘が他人の時間を食べて育つ、というような設定は、言葉だけで説明されてもちょっと納得するのに苦労した。ましてSF慣れしていない観客にはちんぷんかんぷんだったろう。非・日常設定をセリフだけで説明するのはやめた方がいい。何か非・日常的な出来事が起こるのを実際に見せて、理屈でなく感覚で納得させないと。演劇はセリフで成立しているものだが、しかしやはり演者の行動という視覚要素がないと、混乱させてしまうモトになる」

 

司会者「……なんか辛口の意見が続きますが、要するにこの芝居は面白くなかったのですか?」

 

演劇ファン「いや、さっき言ったように、コント的なやりとりや、個々のキャラクターは非常に面白い。ぼーっとしてとりとめのない住職のキャラや、萌え系の娘とか(縣佑芽って子、可愛かったです)。あれは稽古場でのアドリブを定着させたものだろうな。ただ、それとストーリィが融合していない。主人公のオサムは東京での生活に破綻して生まれ故郷に帰るわけですが、そこでは悪友たちがまるで時間が止まったかのように、昔と変わらぬ生活を送っている。主人公だけはそこに乗り切れず、自分がもうオトナになってしまった、という時の流れを実感している。この心理、昔に帰りたいというノスタルジーの具現であるかのように、時を自由に操れるウノが登場するわけです。ここ、つまり失われた青春(時間)というテーマにもっとストーリィを割けば、話はずっと観客の共感を得ることができたと思います。ただ、おそらく作者(尾米タケル)はSFマニアなんでしょうが、SF考証の方に力を集中させてしまった。およそ創作ジャンルにはそのジャンルに最も適した表現テーマというものがあり、SFと演劇はあまり相性がいいとはいえない。非常にもったいない気がした作品でしたねえ」

 

脚本家志望者「確かにもったいないですね。ウノにかなり早い時点で人間ではない、と正体をあかさせてしまってますが、ギリギリまで、本当に時間の所有者なのか、それとも交通事故で頭を打って妄想の世界に入ってしまっている人間なのか、ぼやかしていた方がストーリィとしては面白く出来たのでは、と思いながら観ていました。ウノがキョウコに刺されるシーンで本当に血しぶきを吹き出させていたのは驚きましたが、あれもそこだけ描写がダイレクトで、ちょっと違和感が。それに、あれだけのことをやって“木の枝が突き刺さった”という言い訳は通じないでしょう。場所が病院なんだから、調べれば何によってついた傷かはすぐわかる。これもそうですが、病院からウノが消えたことも、本来なら事件性を疑われて警察が出動する騒ぎになるはずです」

 

設定オタク「それを言うなら、記憶喪失(自分の時間を持っていない)女性のキョウコが、看護師として病院に勤めることができる、というのもありえない。患者の命を預かる職業だ、そこらへんの身分証明はしっかりしたものが必要になるはずだよ」

 

演劇ファン「とにかく、キョウコは演じた福原聖子が好演なだけに、設定のわかりにくさが最大級にもったいなかったですね。時間を所有する絶対者的存在であるウノが、本来してはならないこと、つまり限られた時間しか持たない存在であるキョウコを愛してしまい、そのためにキョウコはオサムたちとの付き合いとか、家族との思い出などという“過去”を失うはめになってしまう。それ故にウノを憎み、殺そうとした、という設定にした方がすっきりした。寺の住職親子まで超越者にする必要はないでしょう。喫茶店のマスターと同じく、変なキャラクター、というだけであの二人には十分に存在価値がある」

 

短気な客「2時間という上演時間は長過ぎ。30分縮めて、SF設定も半分にして、テーマもひとつに絞ろう。状況描写手段に漫画や映画などと違い制限がある演劇というジャンル(さっき誰かが言った、SFと演劇の相性の悪さもこれが原因だな)において、観客を混乱させないために必要なのは一にシンプルさ、二にもシンプルさだ」

 

小道具マニア「野々川護の喫茶店マスターが作ったというストームグラスって道具、あれ本当にあるのか。気圧に左右される体質の僕としては大変気になるんだが」

 

SF少年あがりのおじさん「劇中のセリフにもベルヌの『海底二万里』に出てくるとあるけど、確かにノーチラス号の設備として描かれていて、あれで日本のSFファンには知られている。ただ、初めて読んだ40年前から、どういうものかよくわからなかった。今回初めて現物を見て、ちょっと感動だったなあ。ただ、ウノに近づくと内部が結晶化する、という理屈がよくわからない。ウノの周囲は気圧が低かったりするのか」

 

設定オタク「ウノに周囲の人間が眠らされるのもそれが原因じゃないのかね」

 

野々川護ファン「最後のカーテンコールで野々川くんが“本日はありがとうございました”と挨拶したので、野々川くん主宰の劇団なのかと思っちゃいました」

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