カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。


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劇団光希第22回公演『「笑顔。(すまいる)〜さざんかの咲く頃に〜』於池袋シアターKASSAI

 

司会者「女優の音無ミ弥こと竹下宮子が主宰する劇団光希の第22回公演です。旗揚げから18年の歴史を持つ老舗劇団で、音無の次男のりょうすけが本当に劇中で音無扮するアキの息子を演じたり、長男が受付をやっていたりするという、家庭的な劇団です。原案を劇団員の中村政仁、脚本・演出をこれも劇団員の森下知香が担当するなど、かなり手作り感あふれるアットホームな劇団です。ストーリィも劇団員の構成そのままという感じで、東京近郊の登山口にあるうどん屋・たまやを舞台に、店を切り盛りするお母さんのアキを音無が演じ、中村が次男の修二、りょうすけが事故で10年前に死んだ長男の孝一(アキの目にだけ見える)を演じています。亭主が20年前に女と逃げ、頼みの長男は10年前に交通事故で亡くなり、それでも店をしっかりと守ってきた大黒柱の母に、若年性認知症の症状が出始めたことをきっかけに、家族、人のつながりを問い直すという、ストレートでハートウォーミングな舞台です」

 

初観劇者「不勉強で光希という劇団は初めて観たんですが、確かに家族的なつながりを感じた劇団でした。次男が役者として出演している他、受付を長男がやっていたそうです。父親が中心になって、という劇団は鳥獣戯画などいくつもありますが、母親中心というのは珍しい。音無ミ弥はふだんのキャラクターもおそらく劇中のアキそのものなのでしょう。観劇後に劇場を出るとき、脇を通ったら“楽しかった?”と声をかけられました。江東区出身だそうだが、まるきり下町のおかみさんですね。こういう劇団も初めてです(笑)」

 

演劇ファン「しかも、パンフに書いてあったし、千秋楽のカーテンコール時にも音無がちょっと言っていたけれど、この作品の第一稿があがったあたりの今年の5月に、音無の40年連れ添った夫が脳出血で急死したそうで。音無はかなりショックで、この状態で芝居が出来るかと悩んでいたのを、息子たちや劇団員が励まして、なんとか公演にこぎつけたという。……家族的なつながりの劇団ならではというか、まるでこの話自体が舞台のストーリィのようだ。涙が出てきました」

 

辛口ファン「……とはいえ、家族的な劇団というのは、それだけで作品の内容が限定されてしまう、という部分がある。老舗を切り盛りする母親がいて、長男の死後、頼りないけれど頑張っている次男がいて、その暖かみに不満を感じていて飛び出したがっている末娘がいて……という人物配置だけで、展開が読めてしまう。要するに悪人が描けない。アキにやたら親切にする社長さんが出てきて、これに病気で判断力の鈍ったアキが店の権利書を渡してしまう、というのが話のキモになるのだが、これも結局、悪い結果にはならず、反抗してチャラ男とくっつき家を出ていった末娘も結局帰ってきて、チャラ男は実はすごくいい奴、というオチがつく。予定調和というか、演劇的意外性というものが全くない。ハートウォーミングな話でないと受け付けないという人以外は、ちょっと物足りなさを感じてしまうんじゃないかなあ」

 

好意的ファン「……いや、ハッピーエンドにしろバッドエンドにしろ、ストーリィというのは観客が望むラストを用意することが常道です。この劇団は老舗だけに観客の年齢層が高く、こういう年齢層の人はハッピーエンドの物語でないと絶対納得しない、というところがある。この作品も、そのニーズに応えたものと言えるでしょう。それに、アキの認知症は結局治らない。そこらへん御都合主義は排されている。必ずしもハッピーハッピーばかりで終わっているわけではありません」

 

演劇課専攻学生「ラストはハートウォーミングでかまわないんだけど、そこへの持って行き方にもう少し工夫が必要で、ひねりがない。ストレート芝居が売りの劇団とはいえ、電車道演出すぎる気がしました。孝行息子はずっと孝行、長女の亭主も善人を絵に描いたような善人、意外性と言えば下宿人で頼りないと思われていた助六が法律的な事務を引き受けて頼りがいを見せるところでしょうが、これも最初から彼が弁護士になる勉強をしているとバラしてしまっているから驚きがない。何をやっているか、隠れてこそこそしていて、犯罪のことなどときどき口走る、よからぬことをしているんじゃないかと思わせておいて……というくらいの演出上の工夫は必要じゃないかしら。とにかく“話を複雑にする”役割は絶対ストーリィには必要で、たとえば子供もいて、夫が出世を目前にしていて、という立場にある長女は、もっとエゴをむき出しにするキャラクターでもいいと思うの。それが人間味にもなるし」

 

演劇ファン「どうかな。言われるほど一本道でもないと思う。話全体のアクセント部分は、あのオタ芸の部分にあるな。常識人と思われていた長女の亭主や、生真面目な女医までもが大ノリでサイリウム振り回すあのシーンが全体の転換点になり、あの笑いから一転、アキの症状がシリアスさを増していく展開はいい」

 

女優マニア「女医を演じた赤坂茉莉華は白衣から浴衣姿から、いろいろ衣装を替えて見せてくれてよかった。真面目な医者の演技と、オタ芸のところのノリのギャップが可愛い」

 

医療関係者「とはいえ、アキを診断するところで、認知症のネガティブな進行の予想を本人の前でずらずら述べて、患者を不安にさせてしまうのは高齢者担当医として失格。ああいうことは普通は家族だけに伝える。それをアキが盗み聞きしてしまい……というくらいの演出は欲しいところだ」

 

演劇通「物語の前半は、“自分が自分でなくなってしまう”というアキの不安を主体にしていて、テーマもしっかりしているんだが、後半の、家族に主体が移ったあたりで絞り込みが甘くなってしまってるんだな。アキの脳内にだけ現れる長男、という存在があるんだから、それが次第に薄れていって、会いたくても現れなくなる、というような演出で、最後までアキの視線は残しておいてほしかった。長男が単独で現れるのではなく、最初からみんなの中に混じっていて、途中でそれがアキの幻想だとわかる、というような演出があれば、演劇的工夫として印象的だったと思う」

 

塾年ファン「まあまあ、お手柔らかに。若い方々は理想に走りすぎていけない。演劇的工夫というのは、演劇を見慣れていない、年齢の高い人たちには思いの外敷居が高いんですよ。オーソドックスなストーリィ、オーソドックスな演出を主体にしたストレート芝居のこういう劇団があるということは、われわれ年寄りには非常にありがたい。この劇団だって、18年前の立ち上げのときにはもっと若い世代向けの芝居をやっていたんじゃないかな。年を重ねて、劇団員もファンも、その年代にふさわしいものを求めるようになり、そのニーズに合わせていく、というのは素晴らしいことです。中には時が止まったように、50になっても60になっても若い時のままのような芝居を再生産し続けているところもありますが、それは劇団それぞれですし」

 

美術学校生「入倉津の舞台美術は彼の本領と言えるリアルに徹したもので、これが話のオーソドックスさに非常にマッチしていて素晴らしかった。クライマックスの火事の部分で一部が崩れるのもいい(照明にもうひと工夫欲しかったが……)。このセット見ただけでも、この劇団のストーリィが衒いを排したものだということがよくわかる。ストーリィのイメージを印象づける、いいセットだった」

 

演劇ファン「一つ間違うと、テーマの社会性に酔って暗い話にして自己満足する劇団が多い中、この重いテーマでハートウォーミングストーリィにしただけで加点したい気分です。ギャグ担当キャラで盛り上げ役だった田口和さんにはご苦労さまを言いたい。顔もちょっと三木のり平を思わせる感じで、コメディ役者として貴重な存在でした」

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