劇団フェリーちゃん なにわえんそうかい企画『でぃ つぁうばぁ ふれぇて』 | カラサワの演劇ブログ

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劇団フェリーちゃん なにわえんそうかい企画『でぃ つぁうばぁ ふれぇて』鑑賞、於赤坂カーサ・クラシカ。ピアノと4人の歌手で演じるコンパクト版『魔笛』。

 

モーツァルトのオペラ『魔笛』は、中学生のとき、体験授業で見せられたのが最初で、それからなにか縁があって、もう7、8回は観ている勘定になる。

 

実相寺昭雄監督が演出した新国立劇場の公演も観ているし(UFOや怪獣が登場するヘンテコ、いやユニークな魔笛で、クラシック界では『怪獣魔笛』と呼ばれているらしい)、近くは去年の1月に多賀城で上演された、小山高生先生脚本の魔笛も観に行っている。

 

有名な『夜の女王のアリア』や、鳥追いパパゲーノと恋人パパゲーナの『パパパの二重唱』など、印象に残る曲は多々ある作品なのだが、話の中心であるザラストロの教団と夜の女王の関係や、結社に入団するため主人公タミーノが課せられる試練などが何を意味するのかは正直言ってよくわからず、勉強と思って白水社の『魔笛ー秘教オペラ』などを読み、どうもこの話にはフリーメーソンの秘儀が隠されているらしいとは知ったが、はっきり言えばヨーロッパの裏歴史に関する事項であり、あまりに日本人の感覚からかけ離れた文化で、これはとてもわれわれには理解不可能、と投げださざるを得なかった。

 

今回のこの作品は、魔笛ファンのなにわえわみが、もっと日本人に魔笛を楽しんでもらおうと自ら翻訳・構成をして、初めてオペラを聞く人にも理解しやすいようにしたものだという。

 

タミーノ役の飯久保準一が和服姿だったが、これは台本にタミーノの衣装が「狩衣」と書かれているためであり(古代エジプトが舞台なのに!)、妙に忠実。歌詞も全て日本語になり、しかも「ヤバい、マジヤヴァい」などという俗語が多出していたが、実はもともとの魔笛も、本来オペラというのは発祥の地のイタリアに敬意を表して(?)イタリア語で歌われるのが標準だったものを、ドイツの大衆になじみやすいように、とドイツ語で、しかも俗語を多く取り入れて書かれたものなので、原作の指向にはむしろ合っているといえるだろう。

 

ことに驚いたのは、話をタミーノとパミーナ、パパゲーノとパパゲーナのラブロマンスに話をしぼって、ザラストロのくだりをまるまる省略してしまったところであった。非常にわかりやすくなったのはしごく当然というか、この“蛮勇”とも言うべき省略は、確かに日本人の、オペラ初心者向けとしての演出であればアリかもしれない、と思った。忠実にやったって、誰にもわからないのである。

 

原典信奉主義のファンは怒るかもしれないが、われわれは他にも、『白鯨』を本来の主体の神学的捕鯨論を無視してエイハブの復讐ばなしに絞ったダイジェストで、『ロビンソン・クルーソー』を、作者のデフォーが書きたかった信仰論・倫理論を全部ネグった孤島サバイバルものとして仕立て直したものでしかほぼ、知らないはずだ。『魔笛』もそれで人口により膾炙するなら、それでいいではないかと思える。少なくとも、これほどスッキリと

「『魔笛』ってこういう話なんだ」

と頭に入ったことはなかった気がする。もちろん、これは厳密にはモーツァルトの『魔笛』ではすでにないが、これで興味を持って原典に出合い、驚愕するならそれもまた正しい魔笛への取り組み方なのではないか。こういう「裾野を広げる」活動を日本のアカデミズム音楽界はもう少し理解していい。

 

登場する4人の歌手はみな達者で声もいい。ことに夜の女王とパパゲーナを演じたほりぐちはるかのソプラノの響きが素晴らしく、また途中でフルートを演奏するシーンもあって、多才なことに驚く。飯久保準一の衣装の似合い方、伊藤瑛佑のキャラクター、そしてなにわえわみの主役オーラもなかなか。

 

この『魔笛』を観にいったのはピアノ演奏で塩原奈緒が参加していた(なにわえとは10月の疾駆猿公演で一緒になるので、新年会で顔を合わせて意気投合して参加、ということになったらしい)からだが、普通はオーケストラが演奏する伴奏を全てをピアノひとつでこなしたのは見事といいながら、力の入った曲が連続するこの『魔笛』(ただでさえモーツァルトの曲は演奏が大変なのだ)を序曲から連続小一時間弾き続けというのは大変だったと思う。塩原ファンとしてはせっかく女優とピアニストの両立を目指しているのだから、もっと芝居にからむところで演技してもらいたかったが、これは望蜀の嘆。とりあえず、2000円でこれが鑑賞できれば大いにおトク。

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