宮城県多賀城市文化センターで、オペラ『魔法の笛』観劇。
いつも私の舞台を観に来てくださる脚本家の小山高生先生が脚本(潤色)を担当していらっしゃる。そのお礼を兼ねて、多賀城まで足を伸ばした。
タイトルからもわかるように、モーツァルトの『魔笛』。この複雑で裏の意味がいろいろあると言われている作品を、小山先生はわかりやすく、鳥追パパゲーノをアニメ的キャラにして、コンパクトにまとめている。
客席には子供たちの姿も多かったが、次々登場するカラフルな衣装の登場人物に、飽きずに見ていたようだ(字幕の翻訳文がちょっと難しかったろうが。ここの歌詞をアニメソング風にすればよかったかも)。
『魔笛』は2005年に実相寺昭雄監督の演出になる舞台を新国立で観ている。UFOは登場するわ、カネゴンやガラモンなどのウルトラ海獣は登場するわと言った奔放演出の『魔笛』だった(今回の舞台監督の大澤裕がパンフレットにそのことを書いているのに笑った)。
今回の舞台は、それに比べればかなり原作に忠実だが、舞台が多賀の森に設定され、主人公が多賀の王子、ヒロインのパミーナが葉水奈姫と、上演場所にちなんだものになっている(でも、パパゲーノはパパゲーノのまま)。
原作からの最も大きな改変は、原作のラストでザラストロに戦いを挑み雷に打たれて死ぬ夜の女王が、この脚本ではザラストロと和解するところだろう。この若いの儀式、見ようによっては結婚式にも見える。ザラストロは胸に大きな太陽のメダルをかけた、光の王。……おお、光と影の合体は『カリオストロの城』。そして、ザラストロのモデルは錬金術師カリオストロと言われている。アニメ脚本家である小山先生、そこまでお考えになってのオマージュなのだろうか。
文化庁の交付金をフルに使っての公演(なので、入場料は無料!)で、セットや衣装、そして出演者やオーケストラの豪華なことは観ていて絶句する。そして、これがたった一日、一回だけの公演のためのものなのだ。「芸術とは蕩尽である」という言葉を地でいっている。
貧乏な小劇団の主宰者としては嫉妬の念に……と言いたいところだが、ここまでだとまったく別世界の話で、そんな気もなくなりますな