カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。


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ハイリンド番外公演『仮面夫婦の鏡』観劇、下北沢ギャラリーにて。知り合いの幸田尚子ちゃんが客演。

 

50分のふたり芝居なのだが、驚いたことに全編大阪弁で通していた。尚子ちゃんは確か福岡出身なので、これはどうやったのかと思って終演後訊いたら、2週間の稽古で徹底的に叩き込んだということだった。

 

相手役でハイリンド座長の伊原農が当パンで尚子ちゃんのことをやたら“美人女優”と繰り返しているが、これは当然で、整形して美人になって、美術のヌードモデルでダメ夫を養っている妻の役なのである。なのに夫は妻がモデルになった絵が喫茶店に展示されているのに怒って……という話。

 

なので、まずはこの作品、自分が美人、ということを嫌味なく自慢しないといけない(整形手術が成功したわけなのだから)。かなり照れる役だとは思うのだが尚子ちゃん、そこを出しすぎず(すぎると嫌味になる)遠慮しすぎず(しすぎるとテーマが伝わらなくなる)、ちょうどいい案配に演技していた。その底力に感服。無名塾養成所出身だけのことはあると思い、彼女を起用した伊原はキャスティングセンスがいいと思った。

 

女性の、ことに女優の年齢を数えるのは失礼極まりないが、確か、と指を折ってみると、そろそろ熟女とか呼ばれる年齢である。とはいえ、私が彼女とビデオドラマで共演(山田誠二監督のC級怪奇もの)したのは2009年だったが、その時より魅力は増していた。女性はこの年齢になって初めて“いい女”かどうかがわかる。

 

実はうちの先日の舞台で少女歌手のゆーゆちゃん(東京生まれ)にやはり大阪弁を使わせている。役者というのが、自分と違う人間を演じる商売、というのであれば、しゃべる言葉を変える、というのは大いにチャレンジ精神を刺激する行為であろうし、また、惰性に流れず、常に「演技している自分」を意識し続けさせるファクターにもなるだろう。

 

このことは、テーマである「外見に左右されない“人格”というものは果たしてあるか」にも密接につながってくるだろう。整形して自分本来の姿とは異なった外見を手に入れたことで、逆に自分の本当の価値を知った女。……しかし、その価値というのは、果たして“本当の価値”なのだろうか。いや、人間に唯一の本当の価値というものは存在するのだろうか。

 

ストーリィ中では、夫の伊原も妻の勝手な整形に反発し、整形手術を受けて顔を変えた、ということになっている。お互い、ぱっと見だけでは夫婦とわからなくなった夫婦という設定は凄まじく面白いが、これは大阪弁を採用したことによる影響なのか、どうしても会話が漫才風になって、そこの問題を掘り下げる前に下世話な方に流れていってしまったような気がした。要はアイデアだけで終わってしまい、あとはちょっと高度な「おもろい夫婦」なのである。

 

もちろん、それはそれで、平凡な夫婦の日常に起こった、ちょっと奇妙なアクシデントのドラマ(大阪弁を使うのも、あまりシリアスにならないため)を描きたかった、という意図なら十分以上に楽しめる。私なら、夫婦なのに夫婦としての実感がわかない関係に次第に齟齬が生じてきて、精神的カタストロフにまで行き着く経過を書くだろうが、これは好みの問題の範疇だろう。

 

2人の演技対決を観るというところに特化すれば、非常に刺激的でかつ面白い。妻のしっかり現実を見据えた生き方と対照的な、亭主のダメさ、わがままさ(それは妻を愛するが故のことなのだが)が徹底して出ていた。さきほど、大阪弁故に漫才調になってしまうと書いたが、逆の意味で、漫才調が、妙に深刻ぶった話になるのを防いでいるのである。

 

尚子ちゃんの持つ“華”は、この数年、映像中心で(ダイハツウェイクや東京ガス、カップヌードルなどのCM、ドラマでは山村美紗SP等)に出演したことで身についたものだろう。舞台はやめたのかな、と思っていたが、訊いたらやはり

「舞台が恋しくて、事務所説得して舞台と両立させることにしました」

とのこと。どんな舞台女優ぶりを今後見せてくれるか、楽しみである。

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