カラサワの演劇ブログ

演劇関係の雑記、観劇記録、制作日記、その他訃報等。観劇日記は基本辛口。これは自戒とするためでもあります。
Twitterでも演劇のこと、おりおりつぶやきます。
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劇団Please Mr. Maverick 第六回公演『『逆襲のFOOD CHAIN!』観劇、於下北沢『楽園』。2010年の舞台の再演。台本はほぼ、変えていないとのこと。


主宰の歳岡くんが「優勝することを目標に掲げ」作劇に臨んだ『僕だけの楽園をお願い博士!』を引っさげてルナティック演劇祭に参加、思惑通りの優勝をかっさらったのは2011年だから、その前年の作のこれには私の知らないマーベリックがあるわけだが、基本姿勢はほとんど変わっていない。


アニメやゲームなどサブカル系の作劇法、キャラクターを大きく取り込みながら、政治的、形而上的なテーマを大上段にかまえ、臆することなく真っ正面に打ち出す。照れくさいとか、青臭いとかと演劇狎れした“ツウ”に言われることを嫌がらずに正攻法で攻めていくのががマーベリックの特長だろう。


私がこれまで観た歳岡作品中で、演劇的にそれが最も効を奏していたのが2012年の『恩寵のエクスピアシオン~おれとおまえと罪と罰~』だが、これは30分の短編で、それ故に「テーマ」が「ストーリィ」を食うことなく、極めて優れた調和を形成していた。


今回の作品は上演時間1時間45分。極めてたっぷりと「権力とは何か」「正義とは何か」「人間と動物の間に差はあるのか」といった、いくつものテーマが高く、大きく掲げられる。さすがにゲップが出る、と言いたくなるところだが、それが極めて演劇的に、役者たちの熱演によって開陳されていくので、盛りすぎであることが気にならない。……いや、大いに気になりはするのだが(笑)、あきらかに歳岡孝士は、この“盛り過ぎ”こそを自作の特長に置いている。


盛り込み過ぎ、叫び過ぎ、テーマ前面に出し過ぎ、座長の自分をカッコよく描きすぎ、メイド萌え露骨過ぎ(笑)。そしてそれが全部、他の劇団との差別化として“機能”している。この計算しつくされた「過剰」こそがマーベリックの舞台の特長といえる。


実はこの劇団は、ルナティック演劇祭で2回、連続で優勝を果たしている。2回が2回とも、前評判でダントツ優勝候補の劇団がありながらの逆転優勝だった。2回目のとき、その優勝候補だった劇団の役者さんが、審査員の私に
「……内容で言ったら、絶対うちが優勝すると思っていたんですけどねえ。……どうしてマーベリックさんにさらわれたんでしょう」
と質問してきて、私は
「あなたのところは代表作をそのまま、出してきたでしょう。しかも予選と本選で同じ作品だった。マーベリックさんは、“優勝するために”演劇祭用の新作を書き、しかも予選通過を見越して、本選用の新作まで書いて稽古をしていた。その本気度がパワーの差になったんですよ」
と答えたのだが、逆に言えばそこを絶対にルナ側の審査員たちは評価するだろう、と踏まれていたわけで、今にしてその計算の正確さ、したたかさには舌を巻かざるを得ない。


芝居の醍醐味はストーリィ展開の妙と、役者たちの演技力にあると思われているが、実は、テーマの提示、というのも大きな要素になっている。人間の脳は報酬系という快感材料に反応する仕組みになっている。芝居や映画というフィクションに接するとき、脳の報酬系は、餌をねだる犬のように、涙や汗、人の努力や死、政治的主張といった、心を揺さぶる事象を待ち構え、舌を出していると言っていい。そこに、過剰な量のテーマ(感動のモト)をぶち込むことにより、大量のドーパミン(感動物質)が放出されるわけである。


大抵の場合、創作における感動材料の提示とそれの受容は作者と観客の間にうまく橋がかけられた場合に限るが、歳岡孝士の作品は、かなり意識的に、それを通常より大量に、半ば“無理矢理”投入させることを行い、それを観客へのサービスとしている。意図的、計画的、確信犯的と言っていいだろう。私がルナティック演劇祭のときにこの劇団に感じた新しさは、まさにそこにあったのだと思う。


その分、マーベリックの舞台はかなり作為的、人工的な作風ととらえられる部分もある。アニメ的なツクリモノ感に忌避感を抱く観客もいるだろう。本当の感動は、一見隠されたように提示されるべきものだ、という意見もあるかもしれない。しかし、感動を与えられることに慣れてしまっている若い世代には、マーベリック的な作劇法が絶対に受け入れられると思う。ある意味、最も真摯に、「将来の」演劇のあり方に思いを馳せている劇団と言えなくもない。


その分、役者の演技がある意味、テーマを伝えるツール的に使われているという物足りなさは以前からここの劇団には感じられていた。『恩寵のエクスピアシオン』の暁雅火、今回も含めマーベリックにはほぼ出演している草野智博といった個性(クセ)のある役者以外、あまり記憶に残っていないという事実がそれを物語っているが、今回はかなりそこらへんでみな頑張っていた。話の中心となる二頭の動物、サラブレッドとライオンを演じた新原武と丹羽隆博はもとよりだが、対象的な少年役に扮した斉藤優紀と竹内もみの二人が、これまでのマーベリックにはなかった演技と存在感で異色のインパクトだった。

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