子宮頸がん検診について、
”自称がん専門医”大場大氏が、統計の無知をさらけ出して、
恥ずかしすぎる議論
で市民をダマそうとしています。
http://masaruoba.hatenablog.com/entry/2016/02/04/080316
(1)墓穴を掘った論理矛盾
「しかし、このグラフはがんが見つかった女性が放置された結果データではありません。産婦人科医師たちが治療介入して得られたものです。したがって、放置が良いと主張されたいのであれば、放置したデータを示したうえで比較議論すべきです。」
大場氏は、近藤氏の主張は、
比較試験の裏付けデータがないから、信用できないと主張します。
一見、最もらしく見える主張には、致命的なミスが3つあります。
一つは、子宮頸がん検診の有効性について、
ランダム化比較試験で示されたデータがないという事実です。
大場氏の論理だと、比較試験がないのだから、
子宮頸がん検診の有効性については信頼できないということになります。
(たぶん真実です)
なお、インドの比較試験は、
クラスタ試験というバイアス(偏り)があって、信用のできない試験でした。
しかも、彼は、クラスターランダム化試験の内容を知らず、
近藤氏に指摘されて大恥をかいています。
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218ページで暴露されており、多くの人に知るところとなっています。
恥の上塗りとはまさにこの事、恥ずかしいですね。
2つ目は、医療の有効性については、
介入する不利益を上回る利益があることを、医療者側が示さないといけません。
有効性を説明できないのなら、強制わいせつと言われても文句言えません。
3つ目は、疫学データの見方の基本を全くわかっていません。
「以下のグラフは80%を越える検診受診率によって
子宮頸がん検診の有効性が示された英国のデータです」
とイギリスについては、比較していない疫学データで、
有効性が示されたと言い切っています。
論理が破たんし、支離滅裂としか言えません。
なお、疫学データにて、
死に至るようながん(指標としては死亡率)と、そうでないがんもどきの比率を見て、
がんもどきだけが増えるなら、過剰診断であると考えるのが、有力な考え方です。
補足をすると、将来がんになる病変を未然に防いだのなら、
その分、死亡者数が減らないといけません。
日本でこれだけの膨大な数の子宮頸部が切られているのに、
死亡者数が減らないということは、
将来命を奪うがんとは関係のない「がんもどき」を治療しているということです。
(2)グラフのトリックと評価項目のすり替え
イギリスでの検診データについて、
読者は縦軸の数字がごまかされているのに気づきましたか?
0-10までを省略し、ごくわずかな差を大きく見せる典型的なトリックです。
そして、評価項目が、死亡率ではなく、
浸潤癌の発生率(罹患率)であることの意味を考える必要があります。
20年前の話ですし、上皮内癌(高度異形成)でも、
安易に子宮摘出をされてしまったケースが多かったはずです。
子宮摘出したら、子宮頚部はなくなりますので、
その後、子宮頸がんとは診断されることはまずありません。
乳がん予防のために、癌になる前に乳房を摘出するのと同じです。
乳房を予防的に切り取ったら、乳がんが減ったというデータを見て、
あなたは予防的に乳房を切除しますか?
また、子宮頸がんの転移が後から見つかった場合、
他のがんとして、子宮頸がんの死亡にカウントされない欠陥もあります。
したがって、総死亡を減らすのかも議論しなくてはなりません。
しかし、世界中のがん検診において、総死亡率を減らした検診はありません。
(参考記事 :がん検診で死亡率は減少しない(2016年1月のBMJ論文) )
(3)インチキ論文の引用
次に、2004年のLancet論文
。これは、トンデモと言われた論文の一つです。
女性の医学のコメント でも記載しましたが、
これは、死亡率の非常に高い時期のデータを使って、
ありえない仮定をもとにシュミレーションしたものです。
直後に、非科学的などとの批判コメントが5本もランセットに投稿される
異常事態となりました。全く信用ならない論文です。
嘘をつく医者は、都合の悪いことは一切説明せずに、
一流誌の名前だけでダマそうとしますので注意です。
(4)不妊リスクの嘘(論文の結果を紹介しないウソ)
大場氏が引用した論文には、
円錐切除による不妊、特に流産リスクの増加について、
後期流産は、2.6倍になると明確に記載されています。
http://www.bmj.com/content/349/bmj.g6192
大場氏は、その都合の悪い数字を隠してごまかしています。
(5)流産で失われる命は、がん検診で救われるとされる人数より多い!
http://ameblo.jp/karasawa-hotaka/entry-12
以前の私のブログの抜粋
円錐切除で、妊娠12週以降の「後期流産リスクがおよそ2.6倍」とのメタアナリシス報告があります。
(上記BMJの論文のことです)
一般には、自然流産の確率は約15%ですが、
12週以降の後期流産はそのうちの2割程度と言われています(産科婦人科学会HPより)。
円錐切除での流産が増加する確率は、2.6倍の数字を使って計算すると
15%×0.2×(2.6-1)=4.8%
20-30代の妊娠を望む女性15000人が子宮頸がん検診を受けると、
15000×0.4%の60人が円錐切除以上の手術を受けると想定されます。
その後、治療者の70%が妊娠したとして、
円錐切除に起因する後期流産で失われる命は、60×0.70×0.048=2人
一方で、子宮頸がん検診で1人を救うために、
15000人の検診が必要だと検診推進派は宣伝します。
私は、そもそもの有効性(死亡率低下)も怪しいと思っていますが、
ここでは100歩譲って15000人に1人助かるとしましょう。
なお、助かる女性はほとんど中高年の女性です。
若者は子宮頸がんではほとんど死なないからです。
妊娠を望む15000人が子宮頸がん検診を受けると
中高年女性1人が助かるかもしれないが、2人の子供の命が失われるかもしれない!!
流産の増加は、絶対リスクで5%弱と小さく見えますが、
実数で計算すると、検診推進派が主張するがん死亡数低下よりも
多くの流産を生み出します。
なお、HPVワクチンは、予防できるとされるがん死の100倍もの流産を生み出す可能性があるので、
それよりはマシですが、それでも不利益が大きすぎます。
(それでもHPVワクチン受けますか? 不妊(流産)リスクの増加 )
(6)10年生存率は、がん検診の有効性と一切関係ありません。
この部分は、がんの専門医ならば、絶対に知っている常識中の常識です。
ここの記載については、意図的に読者を誤解させようとした、
欺瞞によるもので、無知ではなく故意で悪質です。
(7)罹患数が増えたのは、検診の受診率が上がって過剰診断が増えただけ
マザーキラーというのは、子宮頸がんワクチンを売るために、
若い女性を脅すために作られたキャッチコピーです。
40歳までに死亡するのは、累積リスクで10000人に2人。
非常に稀な疾患です。
(8)お決まりのようにトンデモの村中氏の記事を引用
あまりのレベルの低さに呆れるばかりです。
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その他、大場氏の残念な記事はこちらも参照
NATROM氏の非常に残念な言説はこちらを参照
ウソの見破り方講座~似非科学コンビの片瀬久美子氏とNATROM氏の情報操作を斬る
NATROM氏のウソ~情報操作(乳がん検診の過剰診断を過小に見せるトリック)
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最後に、医師の欺瞞を見抜くためにおすすめの書を紹介します。
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統計や表現のウソを見抜き、真実を知るための、
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