インドネシアにはムシャワラといういわゆる譲り合いの精神のような、日本のあうんの呼吸に似たもので相互理解を図ることがあります。ジャカルタの会社でインドネシアの現地スタッフの会議に出ると、いろいろな意見が出てくるのですが、徹底的に白黒をはっきりさせるまで議論をすることなく、特に結論が出ないままなんとなく終わった感があることが良くありました。日本人から見るといったい何が起こったのか、狐に鼻をつままれたような感じになります。

 

それは彼らには自分の意見を相手に聞き入れてもらう替わりに、相手の意見も受け入れることをよしとする傾向があるのです。これは島国インドネシアでは、最後まで相手を追いつめると海に落ちてしまうことから、互いに譲り合い認め合うことが共に生活をしていく上で重要だからなのだ、とあるインドネシア人から聞きました。

 

ちょっと古い話ですが、インドネシアの国会の場でも同様なことがありました。1999年11月に国会で正・副大統領が選出されたときのことです。大統領の座をめぐってワヒド氏とメガワティ女史が激しい争いをし、接戦でワヒド氏が大統領に選ばれました。すると同氏は副大統領候補に自分の気に入った人間ではなく、それまで対立していたメガワティ女史を推し、結局副大統領には同女史が圧倒的多数で選出されたようなところに、この譲り合いの精神が発揮されています。

 

そんな具合ですから大方の日本人の予想がはずれてしまったのですが、結果を見ると見事にバランス良く敵味方が相応のポジションに収まって、一件落着結果オーライとなっているのです。この辺が大陸側の常に隣の国々と接して、生きるか死ぬかの緊張を強いられているタイやベトナムなどの国々と、海を隔てた島国のインドネシアとの環境の違いが出てくるところです。良く言えば人懐っこいマイルドな人当たり、悪く言えばとかく何を考えているかわからない、優柔不断なところのあるインドネシアの人の特徴が出ているようです。

 

(水車小屋でコーヒー挽き:後方でコーヒー豆を槌で挽いている@パダン)

 


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