曽祢まさこ短編集―ブローニイ家の悲劇 (講談社漫画文庫)/曽祢 まさこ
¥683
Amazon.co.jp

1975年のなかよし本誌初掲載作品から1994年までの作品が収録されています。
デビューが1970年…てことは40周年! すごいっっっ。
私は古い作品しか集めないですけど、曽祢さんは今でも現役でバリバリと連載されていらっしゃる。
そしてそんなに劣化してない。ホント、すごいですよね~!!!

絵柄は80年代前半が一番好きかな~次いで70年代後半。
つまりは、良く読んでいた時代の絵柄が一番好きってことなんですけどね。

ブローニイ家の悲劇
これは本当に悲劇。
ブローニイ家にはときどき大きくなれない「こびと」が産まれるんですって。そんなこびととして産まれたマリアは、世間から隠されて育つ。末の弟ロビンに会いに、リスベットと偽名を使って実家に戻ってきたマリア。妹の婚約者が両親を毒殺しようと企てていることを知り、彼が持っていた薬を彼の飲む水差しにいれたところ、薬が強すぎて死んでしまった。婚約者をマリアが殺したと誤解した妹は、マリアから逃げようとして階段から転落死してしまう。マリアが来た精で不幸が続くと勘違いしたブローニィの人々。

こびと、という表現がイケナイ、てことで、妖精の呪いとセリフの変更を余儀なくされたそうです。でも、白雪王子に出てきたこびとは、こびとって書いてあったよ。ほんと、これって言葉狩りだよね。
で、この話は本当にマリアが可哀想です。
なぜだかブローニィ家には、ときどきこびとが生まれるそうで、いつまで経っても子どもの姿のままなんだそうです。でもマリアのせいじゃないよねー。マリアはロビンを助けるために必死だったのに、誤解されたまま死んでしまうなんて…。ロビンがマリアを信じてくれていることだけど、唯一の救いですけど。

あ、なかよし本誌初掲載の作品だそうですよ。

秘密の小箱
小学二年生の時に、殺人事件を目撃してしまったわかな。犯人に襲われ、とっさに石で頭を殴ってしまった。人を殺してしまったと幼なじみのアキに相談するわかな。目撃者が居ないし、正当防衛になるから警察には捕まらない、とアキに言われ、このことは2人だけの秘密にすることにした。しかし、時が経つに連れて、自分に優しくしてくれるアキの気持ちが愛情ではなく、殺人という秘密が2人を近づけているだけではないか、と疑うわかな。事件の詳細を手紙に書いて警察へ郵送する。警察がわかなとアキから事情聴取するが…

これも切ない。自分への愛情を疑ってしまったために、アキが捕まってしまった。
んーまーアキも悪いけどね。
作者自身もこの2人はどうなるんだろう?と言ってましたけど、ほんと、どうなるんだろう。
アキが可哀想すぎです。

琥珀色の夜
由緒ある寄宿制の女子校に転校してきたエマ。特別室をひとりで使い、友だちのいないオードリィに声をかける。オードリィに慕われてしまったエマだが、ふたりきりになるのを避けていた。そんなある日、エマと同室の先輩が殺され、遺体の薬指が噛み千切られるという事件が起きた。オードリィの様子を不審に思ったエマが、彼女の部屋を訪ねると…

いや~これは心が病んでいるとはいえ、オードリィの言動には驚きですね。

忘れられた教室
3年前、教室で心中した中学3年生のカップル。その教室のある校舎が壊されることになった。校舎で幽霊の目撃談が相次ぎ、カップルと仲の良かったみさをは、壊される前の教室へ行く。

なんつーか、これも救われない物語って感じですね。偽装心中するつもりだったけど、本当に死んでしまったっていうね。みさをちゃんは罰を受けなかったけど、この後も「愛が無くても生きていける」と頑なな感じで生きていくんでしょうね。
幽霊よりも人を認めない人間の方が恐ろしい…ということだそうです。
確かに。

夢見る教室
お人好しで気の弱い少女がいじめられた。教室で自殺を図った少女。その少女をいじめていたクラスメイトが行方不明になる。

これは面白いですね。主人公は教室です。教室が意識を持ち、うるさい学生達にイライラしながらも馴染んでいく。そして教室の掃除をしたり、花を飾ったり、優しい少女に好意を持つが、彼女はいじめられて自殺。怒った教室は主犯格のクラスメイトを飲み込んだ。て事でした。
すごいな~教室が意志を持つっていう設定が、ほんとスゴイと思う。

死霊教室
過度な親の期待に応えきれなくなった中3の広子。塾をさぼってしまい、学校で時間を潰していたら夜になってしまった。「授業が始まる」と言われ言ってみると、死んだ人ばかりがいる教室だった。幼い頃顔見知りだった青年がおり、彼に「コートを片袖だけ着てはやく教室をでなさい」と言われて教室を出ようとするが…

北欧の伝説が下敷きになっているそうです。そんな伝説があるなんて知りませんでした。オリジナルも読んでみたいな。

風の墓標
夏休みに母の療養のため高原ホテルに滞在しているリロイ。そこで転校生のアルビンと出会う。彼はとにかく問題児で、リロイだけでなく他の生徒にもちょっかいを出して、彼の周りでは騒ぎが絶えなかった。しかし悪びれもなくほほえむアルビンに誘われて着いていくリロイ。強引に家に招待しようとするアルビンを払ったら、倒れて頭を打ってしまった。死んでしまったと思いその場を立ち去るが、もしかしたらいたずらかもしれないと思い直し戻ってみたが、アルビンは間違いなく死んでいた。
父親が来たら罪を告白しようと思っていたけど、その父親がなかなか来てくれない。耐えられなくなりアルビンの家へ行き、遠縁の叔母に告白すると、彼女に許される。しかし、そこでリロイはアルビンの死の真相を知る。

なかよしでは余り評判が良くなくて、読み返すと確かに小学生向きの話ではない、と曽根さんがおっしゃってました。確かに、これは難しいと思いますよ~。
嫌なヤツだと思っていたアルビンだったけど、実は家族愛に恵まれていなくて、本当は寂しがり屋さんだったんだと気づくリロイ。もっと早くに彼の気持ちに気づいていたら…と後悔するんですけど。でも、仕方ないよ。アルビンのツンデレに気づける人は少なかったでしょうね。

しかしこの文庫本、悲劇ばかりだわぁ。