私が白塗化粧を始めて経験したのは六歳の初舞台の時でした。この写真がその時のものです。常磐津「妹背山」のお三輪を踊りました。この頃のほうが今より色っぽい気がするのは、気のせいでしょうか?白塗化粧独特の香りがとても好きで、楽屋に張り付いていた記憶があります。所謂普通の化粧品とは違い、より自然に近い成分を原料としていることで、何か安心感の有る癒しに近い感覚になるのかも知れません。舞台本番前は緊張しているはずなのに、この独特の香りの漂う楽屋に居ると心がスッと定まるのです。不思議ですね。
白塗化粧の時に使われるものが何から出来ているのか、私も前々から不思議に思っていましたが、以前、顔師さんにお話を伺う機会に恵まれましたので、そのときのお話を・・・。皆さんの参考になればと思います。
①鬢付け油
和蝋燭の原料としても使われている櫨(はぜ)の実を潰し、白蝋にしたものに水油(植物性油:ごま油・つばき油等)、香料(伽羅・丁子)、松脂をまぜあわせたものだそうです。用途により、水油の量によって硬さが調節されています。髪を結う時や、白粉を塗る前の下地や、眉消しを作る時にも使います。
②白粉
昔は植物の粉を塗っていたそうです。その後金属を酸化させたものを使うようになり、身体や肌に良くないのではないかという心配をしている人も居ますが、白粉の原料になっている酸化亜鉛(亜鉛華)・チタン等は粒子が大きいので、身体に吸収される事はないそうです。又汗腺も塞がないので、皮膚呼吸の妨げにもなりません。昔はより白さを際立たせる為に水銀を混ぜ、その鉛毒で命を落とした役者さんも居るそうですが、今はそんなことはありません。
③口紅
昔は紅花を使っていたそうです。今は意外なことにニコチールというメキシコのサボテンに着く寄生虫のメスをつぶして使っているそうです。昔は鮮やかな朱よりも少し黒味掛った色味の方が上等な口紅だったそうです。艶を良くする為に、氷砂糖を溶かしたものを混ぜたり等の工夫をするそうです。
④眉墨
毛筆で使う墨と同じものが原料です。
顔師さんも仰っていましたが、本来の色が原料不足でどんどん無くなって居るそうです。今手元に有るものを大切に大切に使っているということですが、同時に無くなった時の事を考えて、それに変わるものを試行錯誤されているそうです。
文化は自然の中で育まれ、滅び行く自然とともに運命を共にするものなのでしょうか。