以前、インターナショナルスクールの課外授業で、様々な国の子供たちに日本舞踊を教えていた事が有りました。週に2回、幼稚園のクラスと、小学生のクラス、全部で男女合わせて約20名位だったでしょうか。アメリカ、フランス、インド、ドイツ、イギリス、韓国等、ハーフの子供もいました。子供たちの家族は日本に住み着いている家族も居れば、親の仕事の都合で一時期だけ日本に滞在している家族も居ました。

 日本舞踊を習い始めの頃は、授業から開放された子供たちは、嬉しさの余り広い講堂をひとしきり走り回り、正座をさせて挨拶をするだけで、10分以上掛かっているような状況でしたが、その内、面倒見の良い姉御肌の女の子が、「早く座りなさいよ~、お稽古できないでしょっ!」と仕切るようになってくれて、稽古は滞りなく始められるようになりました。その中で、男の子でしたが何が気に入ったのか、踊りの稽古は殆どマジメにしないのに、でも出席率は100%という子もいました。国も様々なら、個性も本当に豊かな子供たちでした。

 お稽古を始めて一年が過ぎた頃、ちょっとした発表の場を持つことになりました。区の催し物で、ちゃんとしたホールでの文化祭のようなもので、子供たちには本当にいい経験になったようでした。子供たちの踊った後に私も踊り、ほっとして袖に入ると、スタッフの人が傍に来て、「先生~私もう感動しましたよ~。」と興奮した面持ちでこう言うのです。「先生が踊り始めると、子供たちどうしたと思います?先生が踊るから座って見ようと言って、袖で正座をして先生の踊りをず~っと見てたんですよ。本当に素晴らしいですね~。」これには私もビックリ!!師匠に似合わぬ出来の良い弟子たちです。本当に「先生が踊る時は座って見なさい」なんて、一度も言った事無いんですよ。でもこれを聞いたとき私は、「上手だったデスね」という言葉を聴くより嬉しかったです。「伝わった!」と思いました。踊りを通して私はこういうことが伝えたかったのです。文化を伝えるってこういうことなんです。形ではなく心を伝えることなんです。

 彼らにとって日本という国は人生の中でほんの少し、寄り道をしたくらいの国かも知れません。でもその国で、短い期間だったけど日本舞踊を習い、日本の精神にわずかでも触れたことは彼らに大きな影響を与えたのでは無いかと思うのです。

 様々な国に帰っていく子供たちは、私の中でタンポポの綿毛のイメージです。日本からフワフワと世界中に飛んで行ったタンポポの綿毛たちが自分の国で根付き、どんな花を咲かせるのか楽しみです。