
天声人語 2014年10月11日(土)
有名な短歌のもじりとはいえ口調は真剣だ。本歌は俵万智さんのサラダ記念日。「憲法を解釈だけで変えられる、だから7月1日は『壊憲(かいけん)』記念日」。社会学者の上野千鶴子さんが今月8日、東京の日比谷であった集会で詠み上げた▼7月1日は、憲法9条の解釈を変えて、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定の日。その撤回を求めて日本弁護士連合会が催した。第1次安倍内閣などで内閣法制局長官を務めた宮崎礼壹(れいいち)さんも訴えた。「閣議決定は読みようでいくらでも広く解釈し、適用できる。歯止めの名に値しない。反対の声を上げなければ」▼9条の危機を憂える人々の声がやまない。日本の歩む方向が大きく変わるかもしれないという懸念である。なかでも意表をつく発想で国内外から注目されたのが、「9条にノーベル平和賞を」と呼びかける市民の運動だ▼神奈川県の子育て中の主婦が始め、全国に共感が広がった。署名をする人が閣議決定の前後から増え、40万人を超えた。安倍政権の前のめりな姿勢が人々の不安をかきたてたのかもしれない▼異論もあろう。掲げる理想と日米同盟の現実とがかけ離れているではないか。「押しつけ憲法」ではないか。賞を受けるのは「9条をもつ日本国民」とされているが、そのなかには改憲論者もいるのに、と▼それでも、戦後日本に平和をもたらした9条の役割の大きさを否定できるものではない。きのうの受賞はならなかったが、粘り強く続ける値打ちのある挑戦ではないか。
壊憲記念日ですかww
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