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危険!―“白い竜”

自然現象
ほとんどの場合,どっと崩れ落ちるこの膨大な白い力の塊は,微小な雪片から成っています。ちらちらと舞い落ちる雪のような美しいものが,どのようにして,ごう音を立てて下る雪崩のような破壊的なものになるのでしょうか。答えは雪の特質にあります。雪は,結晶,小球,顆粒といった様々な形で降ってきます。雪の結晶はたいてい六角の星形で,パターンは千差万別です。その一つ一つが驚嘆に値します。雪の結晶はいったん地面に積もると,形状が変化します。気温差や積雪の重みが原因で,押し固められながら小さくなります。30㌢の新雪がわずか24時間のうちに10㌢にまで圧縮されることもあります。
積もった雪の安定性は,雪片の形によって異なります。六角形の結晶は絡み合いますが,小球や顆粒状の雪は一つ一つが転がるため,不安定な層を形成します。そのような層は,より固い下の層の上をちょっとしたことで滑り出す可能性があります。そのようにして,雪質や積雪量,斜面の角度,温度差,風の強さが相まって雪崩発生の条件を作り出します。傾斜のある雪原を歩く人間か動物が,自らの体重によって意図せずに雪崩を引き起こしてしまう場合もあります。とはいえ,ほかの種類の雪崩もあります。
煙型の雪崩(乾雪なだれ)は,新たに降った顆粒状の雪と結晶質の雪が混ざったもの―スキーヤーの好む粉雪<パウダースノー>―が,強風によって空中に運ばれる時に生じます。その種の雪は軽いため,空中に舞い上がり,時速300㌔以上のスピードで谷を一気に下ることもあります。この場合,雪崩の前方に生じる風圧は,ほんの数秒で屋根をはがして家屋をも破壊し得るほど強いものになります。
多くの人命を奪ってきたのは,全層雪崩です。これは,長い間に積もって圧縮された古い雪の層に起因するものです。表面部分の雪の層が崩れた時に,大きな氷の層の部分も滑り出し,山の斜面を時速50㌔ないし80㌔で下ることがあります。また,そのような固い層が崖からせり出している場合もあります。これはスキーヤーにとって大変危険です。せり出した部分がスキーヤーたった一人の重みで崩れて雪崩が生じ,一瞬にしてスキーヤーも呑み込まれてしまう恐れがあるからです。
春になると雪崩の危険が高まります。雨が降るか日光が照りつけるかして雪が解けはじめ,しばしば湿雪なだれが生じるのです。この雪崩の速度は比較的遅いのですが,斜面全体の雪が滑り落ちることもあります。その大量の雪が滑りながら岩石や樹木や表土をこそげるため,流れ下った地点には土砂混じりの雪の壁ができます。
雪崩と似た現象として,氷河つまり氷塊の流動があります。氷河とは,非常に寒い地域,中でもくぼ地や雪の解けない日陰の斜面などに形成される巨大な氷塊です。あるいは,雪が時たつうちに凍結して固い氷になるのです。氷河は非常にゆっくりと低い方へ移動します。その動きは予測できるため,人や物に大きな被害が生じることはまずありません。