~三重の枠がものすごく重要だと身に沁みて思い知ったこと~

 

それは『心の変容のためのスピリチュアル&神秘主義的ナラティブ』という1年間の連続講座に参加していての、私に起きたとてつもなく恐ろしいできごとの報告です。

あらかじめ言っておくと、これはあくまで私が超アホだったために起こった、大失敗による共時的エピソードです。でも同時に、人間の意図の力と人類の数万年の歴史に基づく英知に、あらためて畏怖の念をもってひれ伏す契機になったことでもありました。

 この連続講座でのある回で、「意図された断片化を三重の枠に入れてアーティスティックに制作しましょう」という宿題が出ました。

 

ここでまずは断片化ということを少し説明しなければならないかもしれませんね。

例えば典型的な心の断片化としてすぐ思いつくのは統合失調症です。

統合失調症は心がバラバラになって統一化されず、まとまらなくなった状態となります。

それからまた、解離も、耐えられない事態が生じた時に、心(脳)が自分を守るために別人格を形成したりするのも断片化です。人格障害の高名な治療者ジェームズ・マスターソンは、BPDやNPDの心のスプリッティングにも断片化という用語を使っています。

ところが、ヨガや神秘主義、シャーマンの訓練においては、意図をもって自分を断片化させるという修行、イニシエーションがあるのです!

訓練を受ける者は変性意識状態の中で、恐ろしい神に自分をバラバラに切り刻まれたり、食い散らかされて骨となって捧げものにされたりする体験を志願するか、余儀なくされます。

そしてこのイニシエーションは、世界各国の宗教や神秘主義やシャーマニズムで共通してみられるのです。

しかし、何故わざわざこんな恐ろしい修行をするのでしょうか?

日常の意識では誰でも首をかしげる話ですよね。

 

 そのわけとは―。全く新しい次元の自分に変容するためには、古い自分が死ぬ必要があるからなのです。古い自分のまま、新たなステージに移行することは不可能だからなのです。

青虫が蛹になる時、青虫は蛹の殻の中で、それまで少なくとも葉っぱの上を這いまわっていた自由さえなくなり、ドロドロに溶けて青虫という形態は死にます。

しかしその過程を経なければ、蝶という、全く新しいステージの自分に変容し蘇ることはできません。

 

つまり、古い自分が死ぬことを経ない限り、青虫は二次元の存在から、蝶という三次元の自由を手に入れることはできないのです。

蝶(昆虫)の場合は、このプロセスは遺伝子に組み込まれているので、どの青虫もこの過程を拒否することはありません。

プログラミングされているから、自動的に粛々とプロセスは進行します。

 

 では、振り返って人間はどうでしょう…?赤ちゃんがおかあさんのお腹から外に出るというのは人生の大きな変容の瞬間です。母と子の、まさに命がけの変容の共同作業です。ですが、これも長い人類の歴史からプログラムされたものであり、陣痛が痛いからといってお母さんがそれを止めることはできない相談です。

赤ちゃんは、お母さんのおなかの中でぬくぬくと共生関係の中で安住していた自分を自ら切断し、新しい一人の人間として誕生するのです。

  

しかし―。大人になって、自分が変わりたい、成長したい、と口では言いながら、

そうできず自分のアイデンティティのまま「性格だから変えようがない」と開き直ったり、変わったりした気になって、その実ちっとも変化できないままで一生を終える人のなんと多いことか―。

そして日常的にも、私たちは人の顔色や世間体に囚われ、自由を失い、苦悩しています。

 

ヨガやシャーマン、神秘主義の伝統では、師という超強力な器があり、その指導と庇護のもとで弟子に、この古い自分を断片化・破壊する修業が課されるといえるでしょう。師は超強力な器(コンテイナー)なのです。

 

 シャーマニズムでは、シャーマンは、彼、彼女が属するコミュニティがそれを必要とし乞われるため、それへの応答として実施されます。つまりコミュニティという

器(コンテイナー)によって、同様に古い自分の断片化・破壊が応援されるのです。

 

そこには魂の視点が必要です。「青虫が蝶になる」=「魂の自己実現」過程を応援するには、

そしてその変容のためには「器(コンテイナー)」=容器=子宮=「さなぎ」が実は無くてはならないということなのです。

言葉を変えれば、変容と器は不可分、セットであるのです。

 

意図しようがしまいが(たいていは想定外)、変容には、多大な、または過大なエネルギーが魂から満ち溢れてきます。魂から発せられるその力を受容し、時が来るまで封印できる器が是が非でも必要なわけです。考えてもみてください。あかちゃんに子宮が無かったらどうなるか? 青虫がドロドロに溶けた時にサナギの硬い殻が無かったらそれはどうなるか?

過剰なエネルギーは、放っておかれると、身体症状や精神病、人間関係における衝突や軋轢、DVなど、負の形で表出されかねません。

 

精神病、致命的な病、離婚、縁切りなどの背後には、過剰なエネルギーの暴発がままあります。そこには、エネルギーを引き受け、封印して、陶冶するための「さなぎ」がありません。

 

今だからこそ、私はこんなことをさも知ったように書いていますが、その時の私は、この人類の魂の伝統をなめていました。三重の枠の概念はよく知っていたし普段の臨床ではそれを確実に実施していたのにもかかわらず、自分自身については、なめていないまでも軽んじていたのは間違いありませんでした。そしてその結果、このあと私はたいへんな目に合うのでした。次号へつづく

金色のサナギをマカバに入れ、シュリヤントラの外枠に入れて3重の枠としたオブジェをつくりました。