1、レク中止?
「はぁ?!学級レクが無くなったぁ!?」
教室に騒がしい声が響く。
声の主は、<鈴本 ゆうき>。
クラス1の行事好きである。
「うるさいな。そんなことでいちいち騒ぐなよ」
前の席から冷たく言い放ったのは、<大月 嵩也>。
メガネの弦をくいっと持ち上げて言う。
「理由も無くレクが無くなる訳ないだろう」
「じゃあ、どういう理由で無くなったっの?」
隣の席から、<福地 里子>が質問する。
「そんなの、俺が知るわけないだろ」
「じゃあ、何でなくなるんだよっっ!!」
鈴本がまた、大きな声を出した。
そんな鈴本をなだめた<福地 里花>は先生に聞き返す。
「ゆうき、ちょっと黙ってて。先生、どうしてレクが無くなるんですか?」
里花の言葉に、<真保 直樹>先生はクラス中を見回した。
「実は、このクラスの中に、数学のテストの解答用紙を盗んだ奴がいる」
真保の言葉にクラス中がざわつく。
「どうしてうちのクラスの奴だって分かるんですか?」
「なくなったのは、昼休みの時間だったんだが、
先生の机の近くを3年B組の名札をつけた生徒が捜し物していたそうだ。
隣のクラスの八雲が見たそうだ」
大月の質問に真保が答える。
「俺は、わかんないよ!昼休みは体育館でバスケしてたし」
<北原 涼二>は手を上げて言う。
真保の目はその隣の<富山 夏樹>に移る。
「私は知りません。教室で本読んでましたから。・・・体操着、萌え。」
夏樹の最後の呟きが聞こえてしまった近くの生徒は、
得体の知れないものを見るような目で夏樹を見やるが、
本人はまったく気にしていないようだ。
「とにかく、名乗り出てくる奴がいるまで、学級レクは無しだからな」
真保は一言残すと、教室から出ていった。
真保の一言に教室内がざわめく。
『誰だよ、盗んだ奴』
『さっさと名乗り出て欲しいよね~最悪ぅ!』
不満の声があちこちから聞こえてくる。
「ま、どっちにしろ今日はひとまず帰ったほうがいいんじゃない?」
里花がそう言うと、教室内にいた生徒もぱらぱらと帰路につく。
「ほら、ゆうきも落ち込んでないで帰ろう?」
「くそー、楽しみにしてたのになぁ」
鈴本もぼやきながら教室をでる。
それに続いて、大月、福地姉妹、北原、夏樹が教室から出る。
「憂さ晴らしに、ゲーセン行こうぜ!」
「いいけど、俺は金貸さないからな」
鈴原の提案に大月は嫌味っぽく言い返す。
その横で里子は呆れ顔で歩いてる。
「どうせなら、バッティングセンターあるとこにしようぜ!」
「そのあとは、アニメイト行こう!」
北原に続いて夏樹も提案する。
「あそこはゴメンだよ、変人が多すぎて異次元のようだ」
大月はアニメイトが苦手らしい。
確かに一般人には辛い空間かもしれない。
最後尾を歩いていた里花は何となく後ろを見た。
里花の視線の先には、真保と話をしている<松野 美佐子>だった。
「・・・・・・」
「里花?どうしたの」
「ううん、なんでもない」
里花は笑顔でみんなの輪の中に入る。
しかし、里花の脳裏には美佐子の姿がなかなか離れることはなかった。
2、犯人は・・・
次の日の朝学活は、謝罪から始まった。
「皆さん、ごめんなさいっ!!」
美佐子は教卓に立ち、深く頭を下げた。
突然のことにほかの生徒は驚きを隠せない。
唯一、<芦田 真美>だけは、俯いていて表情は分からない。
「私のしたことで、みんなに迷惑をかけることになってしまって、本当にごめんなさい!」
美佐子の言葉に、教室内は不思議と静かだった。
みな、美佐子がやったとはどうしても思えないのだった。
そんな中、担任の真保が口を開く。
「松野が素直に名乗り出てくれたので、このまま内緒にしておこうと思ったんだが
本人が、みんなの前で謝りたいというので、そうしてもらった。」
真保は、美佐子を座らせると教室内を見回した。
「松野のしたことは、決して許される事じゃない」
真保の言葉に美佐子は深く俯いた。
「しかし、素直に名乗り出てくれて良かった。松野、二度としないようにな」
「・・・はい」
美佐子の口からは小さい返事が漏れた。
「それじゃ、今日の連絡をする。一時間目は・・・」
放課後、いつものメンバーで帰り支度をしている最中、
里花がおもむろに口を開いた。
「ねぇ、本当に美佐子ちゃんが犯人だと思う?」
「はぁ?だって本人がやったって言ってんじゃん!!」
鈴本はわからないと言ってふうな顔をして否定する。
「確かに、美佐子はそんなことする奴じゃないよな」
「何か事情があったのかな?」
大月や里子も美佐子がやったとは信じられないようだ。
「でも、本当かどうかなんて調べようがないじゃん!」
北原の言葉にみんな黙ってしまう。
夏樹は読んでいた本をしまうと、荷物を持って教室を出ようとする。
「ちょっと、夏樹も考えてよ」
「だから、今から隣りのクラスに行くんだよ。八雲君に話を聞きにね」
夏樹の言葉に、ほかのメンバーは、あっと言う顔をする。
3年B組の名札をしていたと言っていたのはA組の<八雲 孝太>だった。
「よし、確か八雲は陸上部のはず!」
「今は、体育館だよね、行こう!」
6人は、急いで体育館へと向かった。
体育館の中は部活をしている生徒の声が響いていた。
居たのは、陸上部とバドミントン部だった。
「八雲くん、いる?」
陸上部の後輩である生徒に、声をかける。
「あ、いますよ。八雲先輩っ!」
「どーしたぁ?」
「鈴本先輩が呼んでます!」
後輩の呼ぶ声に、体育館内を走っていた八雲がこちらへ向かってくる。
「おお、鈴本じゃん!何か用?」
「ちょっと来い」
「え?テストの解答用紙が盗まれた!?」
「ばっ!声がでかいよ・・・」
八雲は、詳しい内容を知らされていなかったようだ。
「それで、あんなに慌ててたんだ」
「うん、それでね?他に見たことはないかなって・・・」
里子の質問に八雲は考え込む。
「うーん。あんまり覚えてないなぁ」
八雲は本当に何も覚えていないようだ。
八雲は済まなそうな顔をしてこう言った。
「悪いな、役に立てなくて・・・。あの時、里奈も一緒にいたんだけど」
「里奈って、奥井里奈?」
「うん、そうだけど」
<奥井 里奈>は3年B組の生徒である。
「そんなこと一言も言ってなかったけど・・・」
里花は眉根を寄せる。
「とにかく、里奈にも話を聞いてみよう!」
「ありがとな、八雲!」
「おう、頑張ってな!」
6人は、また教室へと向かった。
「里奈、待って!」
里奈は丁度、教室をでるところだった。
「どーしたの、みんな」
「昨日の昼休み、八雲と一緒に居たって本当!?」
「そ、そーだけど?」
里奈は、里子の勢いに驚いた顔をした。
「名札以外に、覚えてることない?」
「覚えてること?・・・そういえば、スカートは履いてなかったかも」
「え・・・?」
犯人は美佐子のはずだが、
里奈はスカートを履いていなかったと主張している。
里奈の言うことが正しければ、
美佐子が嘘をついているということになる。
「ね、もう帰っていい?」
「あ、ごめん。ありがとう里奈」
「んじゃね~」
里奈は颯爽と教室を出ていった。
「スカートじゃないってことは、男子の誰かが真犯人なんじゃ・・・?」
「待てよ、もしかしたらジャージを履いてた可能性もある」
里花の推理を否定した大月は、時間割表を見た。
四時間目のところには、<体育>と書いてある。
「昨日は体育があったから、ジャージは持ってきているはず」
「じゃあ、やっぱり美佐子が・・・?」
「やっほ~美佐子いる?」
6人が考え込んでいると、後ろのドアから女子生徒が顔を出した。
A組の<福島 千夏>である。
「美佐子は、もう帰っちゃったけど。どうしたの?」
「借りたジャージ返しに来たんだけど・・・」
「あぁ、ジャージね・・・って!」
夏樹は、一気に千夏に詰め寄った。
「ジャージ、いつ借りたの!?」
「え、5時間目に使うからっていったら、給食前に貸してくれたけど・・・」
「給食の時に借りてから、ずっと持ってたの?!」
今度は、横から里子も詰め寄る。
千夏は困ったかをしながら頷く。
「ありがと、これはうちから返しとくよ」
夏樹は千夏から美佐子のジャージを受け取った。
「そ、そう?じゃ、お願いね!」
千夏は小走りで教室を出ていった。
夏樹の顔が余りにも近すぎて、気持ちが悪かったのかもしれない。
「これで、美佐子がやってないって証拠になるよ!」
「「よかったぁ~」」
北原の安堵の声に双子は同時に息をついた。
「じゃあ、結局真犯人は誰かわかんねーじゃん!!」
鈴本は腑に落ちない様子で、ドカッと椅子に座った。
「美佐子ちゃんが庇うくらいだから、仲がいい子が犯人とか・・・?」
「松野と仲良いのって、芦田と石田だろ?」
<石田 唯華>と真美と美佐子は、いつも一緒にいる仲良し三人組だ。
「唯華は、俺達と一緒にバスケしてたぞ?」
北原の言葉に鈴本が大きく頷く。
「じゃあ、真美ちゃん?」
「バスケに来てたのは、クラスのほとんどだったけど、
居なかったのは夏樹と芦田だけだな」
「ま、まさか、夏樹が・・・!」
「そんなことしたって、萌えの足しにもならないじゃん。そんなことしないよ!」
予想通りの答えに、ほかのメンバーは苦笑する。
「でも、真美ちゃんって学年4位でしょ。盗む必要なくない?」
「そういえば、最近成績がガクッと落ちたて落ち込んでたよ、真美ちゃん・・・」
里花は、困ったように眉根を寄せた。
そんな里花の肩を、ぽんと叩いて大月は言った。
「まだ、芦田だって決まってわけじゃないし。明日本人に聞いてみよう」
「・・・なんの話してんの?」
声をかけてきたのは、唯華だった。
里子は唯華に聞いてみた。
「真美ちゃん、昨日の昼休みどこに行ってたか知ってる?」
「え?真美なら、図書室に居たって言ってたけど」
「俺、確認してくる」
大月は、小走りで教室を出ていくと、
職員室へと向かった。
「ね、真美がどうかしたの?」
唯華の質問に里花は、慌てて否定する。
「う、ううん!なんでもないの」
「そう?・・・じゃ、また明日ねっ」
唯華は手を降って帰っていった。
入れ違いに、大月が教室に入ってくる。
「おい、嵩也。どうだった?」
大月は首を横に振った。
「じゃあ、やっぱり・・・!」
「どちらにしても、明日だ。今日はもう帰ろう」
6人は複雑な気持ちのまま、それぞれ帰路へついた。
3、真犯人は・・・。
「真美ちゃん、ちょっといいかな?」
ほとんどの生徒が帰った教室には、
里子と、真美、美佐子、唯華が居た。
「美佐子ちゃんもいいかな?」
「・・・うん」
里子が声をかけると、美佐子は小さく頷いた。
「あたしも聞いていい?」
唯華が近づいて言った。
里子は頷くと三人を連れて、空き教室へと入った。
そこには、鈴本、大月、里花、北原、夏樹。そして、真保がいた。
「何か、用?忙しいんだけど」
真美の声には少しの苛立ちが混ざっていた。
「・・・一昨日の昼休み、どこで何してたんだ?」
「図書室にいたけど」
「本当に?」
大月がそう返すと、真美はさらに苛立ったように声を張った。
「なんなのよ、図書室に居たって言ってるでしょ!?」
里子が言いにくそうに、唯華の方を見た。
「実は昨日、唯華ちゃんから聞いて、図書室の受付係の子に聞いたの」
「え・・・?」
真美の顔色が一気に変わった。
少し青ざめているように見える。
「芦田、一昨日はジャージで登校してたよな」
「・・・」
「本当のことを言って、真美ちゃん!」
里花は真美の手を握って目を見つめる。
「責めてるわけじゃないの!ね、真美ちゃん」
里花がもう一度強く手を握ると、真美の頬に涙がこぼれ落ちた。
「・・・私、が・・・盗んだ、の」
小さい声だったが、確かに私が盗んだと言った。
「どうして、あんなことしたの?」
「・・・成績が、下がってることで・・・お、母さんに、すご・・く、怒られたの・・・」
「・・・うん」
「こ、のままだったら、志望校に、合格できないって・・・すごくプレッシャーで・・・」
真美の涙が止まる気配はなかった。
真保は依然黙ったまま。
北原は美佐子の方を見た。
「美佐子は、芦田が辛かったのを知ってた。だから、庇って嘘をついたんだろ?」
涙目になっていた美佐子は、しばしの沈黙の後、ゆっくり頷いた。
「な、にそれ・・・」
不意に唯華の口から言葉が漏れた。
「そんなの、知らなかったよ?真美が辛い思いしてるのも、美佐子がそんな嘘をついて庇ってるのも!」
唯華の目にもうっすら涙の跡が見えた。
「うちら、友達じゃないの?真美、どうして辛いって言ってくれなかったの?
美佐子、どうして相談してくれなかったの?」
「・・・ご、めん。ごめんなさい、唯華・・・美佐子」
真美はとうとう、床に崩れ落ちた。
「相談、すれば良かったんだよね。・・・ごめん唯華、真美」
しばらく、三人は声を上げて泣いた。
6人と真保は、そっと空き教室を後にした。
「先生、真美ちゃんたちの事は、どうするんですか?」
「・・・」
夏樹の質問に真保は答えない。
「せ、先生?」
「真犯人は、芦田真美。松野美佐子はそれを庇っただけ。
・・・しかし、盗んだのはテストの解答用紙ではなく、新しい席替えのプリントだった」
「・・・は?」
真保のいきなりの言葉に、思わず漏れてしまった大月。
「ま、そういう事しておこう。よってお咎めなし。
いいか、お前たち。くれぐれも、この事は口外するなよ!」
6人は、大きく頷く。
その顔にはいつもの笑顔が戻っていた。
「先生、いい人・・・!!」
「見直したぜ、先生!」
「よかったね、夏樹」
「萌えない展開ではあったけどね」
「・・・夏樹の言うことって相変わらず意味わかんないな」
「おまえら、テンション高すぎだよ・・・」
結局、真保が改めて問題を作ることになり、レクは延期となった。
「いったい、何時になったらレクができんだよぉっっ!!!!」
END
**あとがき**
はい、グダグダですね、わかります。
いやいや、所詮中学生クオリティですから・・・!!!
いいわけです、ごめんなさいm(_ _)m
少しでも楽しんでいただけたでしょうか??
リア友のみなさん、満足できましたか?
これから、一羽完結型シリーズとして、少しずつ書きためようと思います。
感想などは、下のコメントから。
誤字脱字を発見したり、アドバイスがある方は、下記のアドレスまでお願いします。
nakamiya3b@yahoo.co.jp
ここまで見てくださった方、本当にありがとうございました。
次回をお楽しみに。
それでは、さよなら。さよなら。さよなら。
※ご指摘ありがとうございます。修正させていただきました。
「はぁ?!学級レクが無くなったぁ!?」
教室に騒がしい声が響く。
声の主は、<鈴本 ゆうき>。
クラス1の行事好きである。
「うるさいな。そんなことでいちいち騒ぐなよ」
前の席から冷たく言い放ったのは、<大月 嵩也>。
メガネの弦をくいっと持ち上げて言う。
「理由も無くレクが無くなる訳ないだろう」
「じゃあ、どういう理由で無くなったっの?」
隣の席から、<福地 里子>が質問する。
「そんなの、俺が知るわけないだろ」
「じゃあ、何でなくなるんだよっっ!!」
鈴本がまた、大きな声を出した。
そんな鈴本をなだめた<福地 里花>は先生に聞き返す。
「ゆうき、ちょっと黙ってて。先生、どうしてレクが無くなるんですか?」
里花の言葉に、<真保 直樹>先生はクラス中を見回した。
「実は、このクラスの中に、数学のテストの解答用紙を盗んだ奴がいる」
真保の言葉にクラス中がざわつく。
「どうしてうちのクラスの奴だって分かるんですか?」
「なくなったのは、昼休みの時間だったんだが、
先生の机の近くを3年B組の名札をつけた生徒が捜し物していたそうだ。
隣のクラスの八雲が見たそうだ」
大月の質問に真保が答える。
「俺は、わかんないよ!昼休みは体育館でバスケしてたし」
<北原 涼二>は手を上げて言う。
真保の目はその隣の<富山 夏樹>に移る。
「私は知りません。教室で本読んでましたから。・・・体操着、萌え。」
夏樹の最後の呟きが聞こえてしまった近くの生徒は、
得体の知れないものを見るような目で夏樹を見やるが、
本人はまったく気にしていないようだ。
「とにかく、名乗り出てくる奴がいるまで、学級レクは無しだからな」
真保は一言残すと、教室から出ていった。
真保の一言に教室内がざわめく。
『誰だよ、盗んだ奴』
『さっさと名乗り出て欲しいよね~最悪ぅ!』
不満の声があちこちから聞こえてくる。
「ま、どっちにしろ今日はひとまず帰ったほうがいいんじゃない?」
里花がそう言うと、教室内にいた生徒もぱらぱらと帰路につく。
「ほら、ゆうきも落ち込んでないで帰ろう?」
「くそー、楽しみにしてたのになぁ」
鈴本もぼやきながら教室をでる。
それに続いて、大月、福地姉妹、北原、夏樹が教室から出る。
「憂さ晴らしに、ゲーセン行こうぜ!」
「いいけど、俺は金貸さないからな」
鈴原の提案に大月は嫌味っぽく言い返す。
その横で里子は呆れ顔で歩いてる。
「どうせなら、バッティングセンターあるとこにしようぜ!」
「そのあとは、アニメイト行こう!」
北原に続いて夏樹も提案する。
「あそこはゴメンだよ、変人が多すぎて異次元のようだ」
大月はアニメイトが苦手らしい。
確かに一般人には辛い空間かもしれない。
最後尾を歩いていた里花は何となく後ろを見た。
里花の視線の先には、真保と話をしている<松野 美佐子>だった。
「・・・・・・」
「里花?どうしたの」
「ううん、なんでもない」
里花は笑顔でみんなの輪の中に入る。
しかし、里花の脳裏には美佐子の姿がなかなか離れることはなかった。
2、犯人は・・・
次の日の朝学活は、謝罪から始まった。
「皆さん、ごめんなさいっ!!」
美佐子は教卓に立ち、深く頭を下げた。
突然のことにほかの生徒は驚きを隠せない。
唯一、<芦田 真美>だけは、俯いていて表情は分からない。
「私のしたことで、みんなに迷惑をかけることになってしまって、本当にごめんなさい!」
美佐子の言葉に、教室内は不思議と静かだった。
みな、美佐子がやったとはどうしても思えないのだった。
そんな中、担任の真保が口を開く。
「松野が素直に名乗り出てくれたので、このまま内緒にしておこうと思ったんだが
本人が、みんなの前で謝りたいというので、そうしてもらった。」
真保は、美佐子を座らせると教室内を見回した。
「松野のしたことは、決して許される事じゃない」
真保の言葉に美佐子は深く俯いた。
「しかし、素直に名乗り出てくれて良かった。松野、二度としないようにな」
「・・・はい」
美佐子の口からは小さい返事が漏れた。
「それじゃ、今日の連絡をする。一時間目は・・・」
放課後、いつものメンバーで帰り支度をしている最中、
里花がおもむろに口を開いた。
「ねぇ、本当に美佐子ちゃんが犯人だと思う?」
「はぁ?だって本人がやったって言ってんじゃん!!」
鈴本はわからないと言ってふうな顔をして否定する。
「確かに、美佐子はそんなことする奴じゃないよな」
「何か事情があったのかな?」
大月や里子も美佐子がやったとは信じられないようだ。
「でも、本当かどうかなんて調べようがないじゃん!」
北原の言葉にみんな黙ってしまう。
夏樹は読んでいた本をしまうと、荷物を持って教室を出ようとする。
「ちょっと、夏樹も考えてよ」
「だから、今から隣りのクラスに行くんだよ。八雲君に話を聞きにね」
夏樹の言葉に、ほかのメンバーは、あっと言う顔をする。
3年B組の名札をしていたと言っていたのはA組の<八雲 孝太>だった。
「よし、確か八雲は陸上部のはず!」
「今は、体育館だよね、行こう!」
6人は、急いで体育館へと向かった。
体育館の中は部活をしている生徒の声が響いていた。
居たのは、陸上部とバドミントン部だった。
「八雲くん、いる?」
陸上部の後輩である生徒に、声をかける。
「あ、いますよ。八雲先輩っ!」
「どーしたぁ?」
「鈴本先輩が呼んでます!」
後輩の呼ぶ声に、体育館内を走っていた八雲がこちらへ向かってくる。
「おお、鈴本じゃん!何か用?」
「ちょっと来い」
「え?テストの解答用紙が盗まれた!?」
「ばっ!声がでかいよ・・・」
八雲は、詳しい内容を知らされていなかったようだ。
「それで、あんなに慌ててたんだ」
「うん、それでね?他に見たことはないかなって・・・」
里子の質問に八雲は考え込む。
「うーん。あんまり覚えてないなぁ」
八雲は本当に何も覚えていないようだ。
八雲は済まなそうな顔をしてこう言った。
「悪いな、役に立てなくて・・・。あの時、里奈も一緒にいたんだけど」
「里奈って、奥井里奈?」
「うん、そうだけど」
<奥井 里奈>は3年B組の生徒である。
「そんなこと一言も言ってなかったけど・・・」
里花は眉根を寄せる。
「とにかく、里奈にも話を聞いてみよう!」
「ありがとな、八雲!」
「おう、頑張ってな!」
6人は、また教室へと向かった。
「里奈、待って!」
里奈は丁度、教室をでるところだった。
「どーしたの、みんな」
「昨日の昼休み、八雲と一緒に居たって本当!?」
「そ、そーだけど?」
里奈は、里子の勢いに驚いた顔をした。
「名札以外に、覚えてることない?」
「覚えてること?・・・そういえば、スカートは履いてなかったかも」
「え・・・?」
犯人は美佐子のはずだが、
里奈はスカートを履いていなかったと主張している。
里奈の言うことが正しければ、
美佐子が嘘をついているということになる。
「ね、もう帰っていい?」
「あ、ごめん。ありがとう里奈」
「んじゃね~」
里奈は颯爽と教室を出ていった。
「スカートじゃないってことは、男子の誰かが真犯人なんじゃ・・・?」
「待てよ、もしかしたらジャージを履いてた可能性もある」
里花の推理を否定した大月は、時間割表を見た。
四時間目のところには、<体育>と書いてある。
「昨日は体育があったから、ジャージは持ってきているはず」
「じゃあ、やっぱり美佐子が・・・?」
「やっほ~美佐子いる?」
6人が考え込んでいると、後ろのドアから女子生徒が顔を出した。
A組の<福島 千夏>である。
「美佐子は、もう帰っちゃったけど。どうしたの?」
「借りたジャージ返しに来たんだけど・・・」
「あぁ、ジャージね・・・って!」
夏樹は、一気に千夏に詰め寄った。
「ジャージ、いつ借りたの!?」
「え、5時間目に使うからっていったら、給食前に貸してくれたけど・・・」
「給食の時に借りてから、ずっと持ってたの?!」
今度は、横から里子も詰め寄る。
千夏は困ったかをしながら頷く。
「ありがと、これはうちから返しとくよ」
夏樹は千夏から美佐子のジャージを受け取った。
「そ、そう?じゃ、お願いね!」
千夏は小走りで教室を出ていった。
夏樹の顔が余りにも近すぎて、気持ちが悪かったのかもしれない。
「これで、美佐子がやってないって証拠になるよ!」
「「よかったぁ~」」
北原の安堵の声に双子は同時に息をついた。
「じゃあ、結局真犯人は誰かわかんねーじゃん!!」
鈴本は腑に落ちない様子で、ドカッと椅子に座った。
「美佐子ちゃんが庇うくらいだから、仲がいい子が犯人とか・・・?」
「松野と仲良いのって、芦田と石田だろ?」
<石田 唯華>と真美と美佐子は、いつも一緒にいる仲良し三人組だ。
「唯華は、俺達と一緒にバスケしてたぞ?」
北原の言葉に鈴本が大きく頷く。
「じゃあ、真美ちゃん?」
「バスケに来てたのは、クラスのほとんどだったけど、
居なかったのは夏樹と芦田だけだな」
「ま、まさか、夏樹が・・・!」
「そんなことしたって、萌えの足しにもならないじゃん。そんなことしないよ!」
予想通りの答えに、ほかのメンバーは苦笑する。
「でも、真美ちゃんって学年4位でしょ。盗む必要なくない?」
「そういえば、最近成績がガクッと落ちたて落ち込んでたよ、真美ちゃん・・・」
里花は、困ったように眉根を寄せた。
そんな里花の肩を、ぽんと叩いて大月は言った。
「まだ、芦田だって決まってわけじゃないし。明日本人に聞いてみよう」
「・・・なんの話してんの?」
声をかけてきたのは、唯華だった。
里子は唯華に聞いてみた。
「真美ちゃん、昨日の昼休みどこに行ってたか知ってる?」
「え?真美なら、図書室に居たって言ってたけど」
「俺、確認してくる」
大月は、小走りで教室を出ていくと、
職員室へと向かった。
「ね、真美がどうかしたの?」
唯華の質問に里花は、慌てて否定する。
「う、ううん!なんでもないの」
「そう?・・・じゃ、また明日ねっ」
唯華は手を降って帰っていった。
入れ違いに、大月が教室に入ってくる。
「おい、嵩也。どうだった?」
大月は首を横に振った。
「じゃあ、やっぱり・・・!」
「どちらにしても、明日だ。今日はもう帰ろう」
6人は複雑な気持ちのまま、それぞれ帰路へついた。
3、真犯人は・・・。
「真美ちゃん、ちょっといいかな?」
ほとんどの生徒が帰った教室には、
里子と、真美、美佐子、唯華が居た。
「美佐子ちゃんもいいかな?」
「・・・うん」
里子が声をかけると、美佐子は小さく頷いた。
「あたしも聞いていい?」
唯華が近づいて言った。
里子は頷くと三人を連れて、空き教室へと入った。
そこには、鈴本、大月、里花、北原、夏樹。そして、真保がいた。
「何か、用?忙しいんだけど」
真美の声には少しの苛立ちが混ざっていた。
「・・・一昨日の昼休み、どこで何してたんだ?」
「図書室にいたけど」
「本当に?」
大月がそう返すと、真美はさらに苛立ったように声を張った。
「なんなのよ、図書室に居たって言ってるでしょ!?」
里子が言いにくそうに、唯華の方を見た。
「実は昨日、唯華ちゃんから聞いて、図書室の受付係の子に聞いたの」
「え・・・?」
真美の顔色が一気に変わった。
少し青ざめているように見える。
「芦田、一昨日はジャージで登校してたよな」
「・・・」
「本当のことを言って、真美ちゃん!」
里花は真美の手を握って目を見つめる。
「責めてるわけじゃないの!ね、真美ちゃん」
里花がもう一度強く手を握ると、真美の頬に涙がこぼれ落ちた。
「・・・私、が・・・盗んだ、の」
小さい声だったが、確かに私が盗んだと言った。
「どうして、あんなことしたの?」
「・・・成績が、下がってることで・・・お、母さんに、すご・・く、怒られたの・・・」
「・・・うん」
「こ、のままだったら、志望校に、合格できないって・・・すごくプレッシャーで・・・」
真美の涙が止まる気配はなかった。
真保は依然黙ったまま。
北原は美佐子の方を見た。
「美佐子は、芦田が辛かったのを知ってた。だから、庇って嘘をついたんだろ?」
涙目になっていた美佐子は、しばしの沈黙の後、ゆっくり頷いた。
「な、にそれ・・・」
不意に唯華の口から言葉が漏れた。
「そんなの、知らなかったよ?真美が辛い思いしてるのも、美佐子がそんな嘘をついて庇ってるのも!」
唯華の目にもうっすら涙の跡が見えた。
「うちら、友達じゃないの?真美、どうして辛いって言ってくれなかったの?
美佐子、どうして相談してくれなかったの?」
「・・・ご、めん。ごめんなさい、唯華・・・美佐子」
真美はとうとう、床に崩れ落ちた。
「相談、すれば良かったんだよね。・・・ごめん唯華、真美」
しばらく、三人は声を上げて泣いた。
6人と真保は、そっと空き教室を後にした。
「先生、真美ちゃんたちの事は、どうするんですか?」
「・・・」
夏樹の質問に真保は答えない。
「せ、先生?」
「真犯人は、芦田真美。松野美佐子はそれを庇っただけ。
・・・しかし、盗んだのはテストの解答用紙ではなく、新しい席替えのプリントだった」
「・・・は?」
真保のいきなりの言葉に、思わず漏れてしまった大月。
「ま、そういう事しておこう。よってお咎めなし。
いいか、お前たち。くれぐれも、この事は口外するなよ!」
6人は、大きく頷く。
その顔にはいつもの笑顔が戻っていた。
「先生、いい人・・・!!」
「見直したぜ、先生!」
「よかったね、夏樹」
「萌えない展開ではあったけどね」
「・・・夏樹の言うことって相変わらず意味わかんないな」
「おまえら、テンション高すぎだよ・・・」
結局、真保が改めて問題を作ることになり、レクは延期となった。
「いったい、何時になったらレクができんだよぉっっ!!!!」
END
**あとがき**
はい、グダグダですね、わかります。
いやいや、所詮中学生クオリティですから・・・!!!
いいわけです、ごめんなさいm(_ _)m
少しでも楽しんでいただけたでしょうか??
リア友のみなさん、満足できましたか?
これから、一羽完結型シリーズとして、少しずつ書きためようと思います。
感想などは、下のコメントから。
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ここまで見てくださった方、本当にありがとうございました。
次回をお楽しみに。
それでは、さよなら。さよなら。さよなら。
※ご指摘ありがとうございます。修正させていただきました。