大人のみならず、どんな子供も多かれ少なかれストレスを抱えて生きています。子供が問題行動を起こしたことで注意を受けると親はびっくりして子供を叱って正させます。子供が未熟で間違っていたという場合は適切に指導をすればすぐに治りますが、もしも問題行動が続く場合はそうした行動をとる原因となっているストレスを疑ってそれを取り除くことが大切です。子供の問題行動がどんどんエスカレートすると親は不安になりますが、ストレスによる問題行動とその展開、収束はどの子もとても似通っています。

 

風邪を引いても最初の軽い違和感から、徐々に風邪らしい症状が現れ、熱が出て寝込んで、やっと回復する...という一連のサイクルが分かっているので自分が今どの段階なのか、今後どうなりそうか予想がつきます。寒かったのにそのまま無理をしたからなど、どこで対応を誤ったかの原因も思い当たります。風邪でオロオロする人はいないでしょう。子供の問題行動についても、風邪のように原因や予後を知っていれば、育て方に思い悩んだり、子供を叱りつけたりせずに対応が出来ます。子供が問題行動を起こした場合はもちろんですが、子供が被害を受けている場合もそれがストレスとなっていずれ問題行動を起こす潜伏期間たり得ますので、下記が参考になると幸いです。

 

スターティング・ポイントは子供の変化に気が付くことです。風邪と同じで最初は小さな異変です。私は娘が怒りっぽくなって変化に気がついたこともあります。ストレスが続くと、ある時点から無気力になって勉強が手につかなくなったり、お友達に因縁をつけて突っかかるようになったり、怒りっぽくなったり、急にキレたり、生活態度の退行があったりします。最初は今日はたまたま疲れているから我儘になっているのかもしれないと思いがちですが、そうした行動が続き最近変だなと思われる場合は「助けて!」という子供のメッセージかもしれません。ストレスが継続すると叫び声は段々と大きくなります。


問題行動は一番守備が弱いところで起こります。ある場所でとても良い子が、違う場所では全く異なる一面を見せることもあります。外での問題行動を注意され「うちの子に限って」とショックを受ける方もあれば、みんなに褒められるのに家の中では手を付けられないと嘆かれる方もいます。問題行動を起こす相手は友達、年下の子供、ベビーシッター、習い事の先生、両親、祖父母など様々です。子供は反撃してこないだろうと判断した相手に強く出ます。

 

子供のストレスの元凶は友人関係が大きいですが、他にも塾や習い事での出来事、発表会の準備、先生との相性、欲求不満、親との関係、子供の思い込みなど様々です。子供は刹那的なので本当は嫌なことでも簡単に取引に応じがちで、大人が都度子供も納得していたと思っていても子供の本心はそうではなかったということもあります。「えっ、そんなことが嫌なの?」と思われるような些細な事が長く続くとストレスとなって問題行動に現れることもあります。ストレスと問題行動は直接の因果関係がないことも多く、正確な原因がわかるまで時間がかかります。 子供自身なぜイライラするのかわかっていなかったり、上手く言葉に表せないことが多いのです。「今日は疲れているから半分のページしかやりたくない」、「しつこくされたからぶっちゃった」などと言う頻度が高い場合、その時に疲れていたりしつこくされたことが事実でも、本当の原因は全然違う場所でのストレスかもしれません。そのような場合、子供は鬱憤のはけ口を求めて都合の良いきっかけを探しているので直接的な原因を排除してもなかなか問題行動はなくなりません。


残念ながら、ストレスを抱えている子供に周囲がしてやれることは問題を根本から絶つ以外にはほとんどありません。問題を絶つことが出きない場合は、子供の問題行動に対してその場しのぎの対処療法を続けるしかありません。問題が解決すれば気持ちが素直になるので長い時間をかけて少しずつ学習態度や生活態度を改めていくことが出来ます。

 

問題行動を厳しく注意するとその問題行動はやめても、別の問題行動を始めます。問題行動だけを抑え込んでも根本となっているストレスが解消できていないと、一瞬問題が解決したように感じられても、すぐにまたもぐら叩きのように次々と新たな問題行動が生じて移転するのです。 

 

一方、子供のストレスに配慮して注意を控えてしばらく様子見ることにすると、子供には大人が無関心になったように映ります。関心を引いて問題を解決してもらうためにさらに激しい問題行動を起こすか、何も言われないのをこれ幸いと自堕落な生活を送るかになります。問題行動の移転は一瞬解決したように感じられるので一難去ってまた一難だわなどと思えますが、問題行動のエスカレートは負のスパイラルで親には堪えます。子供を厳しく叱責したり、甘やかしてみたり、自分の子育てや子供の先生の指導方針を責めたりしますが、問題行動そのものに囚われずに、冷静になって根本的なストレスの原因に立ち向かうことが解決への早道です。


ストレスの原因を解決できれば問題行動もおさまります。回復に要する時間はストレスが続いていた期間に比例して長くなります。問題解決までの期間が長引くとその後の子供の生活習慣や性格、態度、行動様式が少し変わってしまうこともあります。

 

ともすれば家庭の事情や、親の希望、コントロールが及ばない外的事情で、ストレスとなる原因を排除できなかったり、ストレスを排除しないという選択をする場合もあります。そのようなときは、ストレス下の好ましくない状態が慢性化することを受入れ、ストレスからの副作用を最小限にする対処方法を考えます。どんなストレスでも子供はやがて新しい現実に順応していくので、その過程で失われてしまうもの、いつか挽回できるもの、代わりに得られるもの、問題を先送りするだけのもの、などについてよくよく考えておく必要があります。ストレスがきっかけで良い方に好転する場合もありますが、だましだまし過ごさざるを得なかったり、時間が経ってからまた問題行動が再発することもあります。

 

問題行動の発展段階: 

1. ストレスの潜伏期 (2~3ヶ月間)

気持ちが入らず学習態度、生活態度が乱れる。いつもの学習量が消化できなくなる; 生活態度がだらしなくなる; 怒りっぽくなったり、不満ばかり言う。不機嫌; 愚痴っぽい; つまらなさそう


環境が変わったから? 勉強が難しくなったから? 反抗期? 育て方を間違えた? など本人に原因があると考え、本人に態度を改めさせようとします。あとから振り返るとストレスが始まった時期と重なります。力づくで無理矢理、態度を改めさせるよりも、なぜ態度が変わったのか原因を探ると解決が早いので、本当は何としてでもここで食い止めたいところです。

2. 鬱憤を晴らす (2~3ヶ月間)

ストレスが表面に出て来て、周囲に当たるようになります。 気持ちがむしゃくしゃするので友達に因縁をつける; 友達との喧嘩が増える; 友達の遊びの邪魔をする; 友達や小さな子に意地悪やキツイことを言う; シッターさんなど周囲の優しい人を困らせる。周囲への思いやりや優しさがなくなる; シッターさんを困らせる(道にしゃがんで歩かない、噛みつく、唾をかける、急に走り出す、逃げる); 人が不愉快になるのを見て楽しむ


子供本人ではなく、相手にも何か非があるのではないかと考え迷う時期です。最初は子供同士の対等な喧嘩のように見えますが、よく観察するとわざと遊びを妨害していることがわかります。楽しそうにしている子を見ると嫉妬してイライラします。根本的な原因が友達にはないので阻止する方法はなく、次第に友達と隔離せざるを得なくなります。それが本人に不満を募らせ...という悪循環に陥ります。原因がわかっていて解決できる場合は、ここで思い切って手を打つと良いです。 


3. 些細なことでキレて逆上するようになる。
 

ストレスの原因がわかっていてもすぐに解決できる方法がなく半年以上事態が改善しないと、ストレスを拗らせていよいよ些細なことでキレて暴れたり、周囲に因縁をつけて絡むようになります。大爆発する子供もいますが、小噴火してすぐに次のステップに行く子もいます。泣きわめいたり、叫んだり、情緒不安定なので周囲は腫れ物に触るように接することになります。本人以外の周囲の人たちのストレスも上手にケアする必要があります。


4. 諦めの境地。投げやりに。

無気力; やらないことで抵抗; やらない言い訳をする; 物を隠す; 嘘をつく; 嫌々やっている; チクチク意地悪をする; 決定的に叱られるようなことはしないが、叱られないギリギリのところで抵抗する。機嫌は悪くないが子供らしい覇気がなくなる

 

10ヶ月目以降となるとどんなに騒いでも根本的に問題が解決しないことに絶望して、ストレスを回避する無責任で投げやりな行動が増えます。楽しいことには喜んで参加しますが、勉強や生活で嫌なことはやらないことが常態化していて自分で考えようとせず、言い訳や、責任回避な発言が増えます。周囲に迷惑をかけない代わりに、無気力で何もしないことで折り合いをつけているかのようです。こうした状態からでも問題が解決すると気持ちが素直になるので長い時間をかけて少しずつ学習態度や生活態度を改めます。


以上は問題行動を起こす本人についてですが、もしも周囲に2,3の状態の子供がいたら、他の子供はストレスにならないよう用心が必要です。大人は悪い時のイメージで金輪際遊ばせたくないと思いがちですがストレスがなくなれば回復するか4のような状態になるのでまた一緒に遊べるようになります。また、2,3の症状が出るのも子供の生活の一場面に過ぎず、別の場所ではきちんとしていることも多いのです。運悪くそうしたところに出くわしてしまったら、大人(親・先生・指導員など)がきちんと子供たちの様子を観察していれば大丈夫ですが、子供が強いストレスを感じている場合は、しばらく少し距離をおいてもよいです。 キレるほど拗れることはなくても、とても素直で良いお子さんにも心の闇があり、困った行動をしない子供はいないと言ってよいほどですので必要以上に恐れる必要はありません。

 

ストレスの原因と解決策の例

 

・ 仲間外れ、いつもひっかけるので大縄跳びに入れてもらえなかった; 

・ 友達と遊ぶときに遠慮しすぎて言いなりになっている; 

・ 放課後学校で友達と遊びたいのにシッターさんが迎に来る、

・ 習い事で進級したクラスが難しくてついていけない

・ 発表会の練習で指導が厳しい

・ 親がいつも小さな約束を反故にすると感じている

 

・ クラス替え、担任替え

・ 自分の気持ちを伝えられるよう練習をした

・ 週に1回放課後遊びに参加することにした

・ 習い事の曜日を変える; 習い事を止める

・ 子供の話を真剣に聞く