Question;
 「交渉では期日を持っているほうが弱くなる」とのことですが、
何か具体例がありますか。
 
Answer;
 以前、日本企業が積極的に中国企業と提携交渉をしていた頃の逸話です。

 

 日本の中堅メーカーのA役員が、中国企業との提携話の最終交渉のため中国へ行きました。 

 

 中国の空港に着くと「熱烈歓迎!」の横断幕と共に、相手企業の社員が拍手と歓声で迎えてくれました。その中には、B重役の笑顔もありました。

 

 そして、黒塗りの高級車でホテルまで送ってくれました。道すがら、同乗していたB重役は笑顔でいろいろと世間話をしてきました。

 

 その中で「今回は、いつまで滞在されますか?」と質問してきました。

 

 A役員は「観光でもしたいところなのですが、○○日に重要な会議があるので、その前日までには帰らなければなりません。ですので、それまでに契約を終わらせたいので、よろしくお願いします」と気軽に答えました。

 

 その翌日から、連日のごとく条件交渉が行われましたが、相手企業のB重役からの譲歩は一切ありません。

 

 A役員は早く合意したいので、少しずつ譲歩案を提示するのですが、B重役が全く譲歩しないので合意に至りません。

 

 日にちが経過していき、最初は意気軒高だったA役員も、しだいに焦り出しましたが、帰国前日の交渉でも、平行線のままで終わりました。

 

 帰国の朝、意気消沈したA役員を、B重役が迎えに来て、黒塗りの高級車で空港まで送ってくれました。

 

 空港に着くとB重役は「フライトまで少し時間があります。部屋を用意していますので、どうぞ」と親切に案内してくれました。

 

 そして「このままでは申し訳ないので、○○については、ここまでなら譲歩します。それでOKでしたら、この場で契約書にサインします」と、初めて少しだけ譲歩案を出してきました。

 

 「このまま手ぶらで帰らなくてはいけないのか」と茫然自失していたA役員は、その提案にまんまと飛びついてしまったのです。

 

 この交渉の失敗原因は、A役員が無警戒で「期日」を教えてしまったことです。

 

 もし、A役員が次のように答えていれば、もっと良い成果を得られたのではないでしょうか。

 

 「できれば○○日までに決めたいのですが、ダメな場合は止むを得ません。他の中国企業からも猛烈な売込みがあると聞いていますので・・」