こんにちは。
金田 隆佳です。
--------------
ガイドラインだから、お固い言葉で書いてるけど、我慢してね(笑)
むち打ち症は自動車の追突事故などで頚部に過伸展と過屈曲が加わって生じる外傷性頚部症候群であり、損傷の程度によって無症状のものから骨折や脱臼による脊髄損傷に至るまで様々であるがゆえに、むち打ち症の捉え方にばらつきがある。
そこでケベック特別調査委員会(タスク・フォース)は、最優先課題としてむち打ち症(whiplash injury)の定義を明確にする必要があった。
特別調査委員会でコンセン サスが得られたむち打ち症の定義は以下の通りである。
むち打ち症(whiplash injury)とは自動車の衝突事故や落下事故などで前後または側面からの加速減速エネルギーが頚部に衝撃として伝達されることによって、骨組織や軟部組織の損傷を招いて多種多様な症状が生じるもの。
またケベック特別調査委員会は、むち打ち症によって引き起こされる一連の臨床症状を、「むち打ち関連障害(whiplash-associated disorders:以下WADと記す)」という用語で論じること を採択した。
WAD(むち打ち関連障害)には、頚部痛・頚部緊張・頭痛・肩の痛み・腕の痛みや麻痺・感覚異常・疲労倦怠感・嚥下困難・視覚障害・聴覚障害・めまい・耳鳴り・睡眠障害・情緒不安定・記憶喪失・顎関節疾患などが含まれている。
治療計画を立てるだけでなく、治療法の効果に関する研究、他科へのスムーズな紹介のためには、むち打ち症によって起こり得る多種多様な症状を分類整理する必要があると判断した特別調査委員会は、「ケベックWAD分類」を提案した。
◆【グレード0】頚部の症状がなく理学所見も異常なし。
◆【グレード1】頚部痛・凝り・圧痛のみで理学所見に異常なし。
◆【グレード2】頚部の症状に加えて筋骨格系所見(可動域制限・圧痛点など)あり。
◆【グレード3】頚部の症状に加えて神経学的所見(深部腱反射の低下や消失・筋力低下・知覚障害など)あり。
◆【グレード4】頚部の症状に加えて骨折か脱臼あり。
なお、難聴・めまい・耳鳴り・頭痛・記憶喪失・嚥下困難・顎関節痛はすべてのグレードで生じる症状であり、グレード0はもちろんグレード4はすでにむち打ち症といえるものではないため、特別調査委員会はグレード1~3を対象とした。
WADの診断に関する文献調査から次の事実が判明。
1)患者の評価は詳細な病歴聴取と理学検査により十分可能である。
2) グレード1では画像検査や特別な検査は必要ない。
3)グ レード2と3では頚椎のレントゲン撮影が必要である。
ケベック特別調査委員会はWAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated disorders)の診断法として「病歴聴取」「理学検査」「単純X線撮影」「画像検査」「特別な検査」について勧告を出している。
◆【病歴聴取】病歴聴取は全グレードのWAD患者に必要で以下の情報が含まれるべきである。
1)生年月日、性別、職業、家族構成、婚姻関係。
2)むち打ち症を含む首の問題の既往歴。
3)痛み、筋緊張、麻痺、筋力低下、頚椎以外の症状。
4)症状の部位、発症時刻、発症状況。
5)受傷原因(スポーツ、自動車事故など)。
6)受傷のメカニズム。
◆【理学検査】理学検査は全てのWAD患者に必要で、少なくとも以下の検査が含まれるべき。
1)視診。
2)患部の触診。
3)可動域の評価(屈曲・伸展・回転・側屈)。
4)上肢と下肢の神経学的テスト(腱反射・知覚検査)。
5)合併症の評価。
6)必要に応じて一般的臨床検査
◆【単純X線撮影】
1)グレード2および3の患者は、頚椎の単純X線撮影が必要で前後像・側面像・開口像を撮影すべきである。
2)また7個の全頚椎とC7-T1の椎間板スペースが撮影されていなければならない。
3)時には屈曲位か伸展位での撮影を必要とするかもしれない。
4)意識がはっきりしていて理学所見のないグレード1の患者は、知覚麻痺をきたすようなアルコールや麻薬といった薬物の影響がみられない限り単純X線撮影は必要ない。
◆【画像検査】
1)グレード1および2の患者に断層撮影・CTスキャン・MRI・ミエログラフィー・椎間板造影・シンチグラフィー・血管造影の適応はない。
2)画像検査はグレード3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。
◆【特別な検査】
1)ssepp(誘発電位)はグレード3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき
2)EMG(筋電図)や神経ブロックはグレード2および3の患者に専門家か外科医の判断で実施されるべき。
3)WAD(むち打ち関連障害)患者に対するその他の特殊な検査は、すべて専門家か外科医の判断に任せるべき。
ケベック特別調査委員会はWAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated disorders)治療法として、次の15について勧告を出している。
・「頚椎カラー」
・「安静」
・「頚椎枕」
・「マニピュレーション」
・「モビリゼーション」
・「運動」
・「姿勢のアドバイス」
・「スプレー&ストレッチ」
・「牽引」
・「物理療法」
・「外科手術」
・「ステロイド注射」
・「無菌水注射」
・「薬物療法」
・「その他の治療」
◆【頚椎カラー】頚椎カラーの有効性はRCTで証明されていないため、グレード1の患者に頚椎カラーを処方してはならない。
たとえグレード2や3の患者に処方したとしても、回復が遅れるので72時間(3日間)を越えてはならない。
◆【安静】安静の有効性はRCTで証明されていないため、グレード1の患者に安静を処方してはならない。
回復が遅れるのでグレード2や3の患者に4日以上の安静を処方してはならない。むしろ普段通りの生活を送るよう勇気づけること。
◆【頚椎枕】頚椎枕(サービカルピロー)の有効性はRCTで証明されていないため、WAD(むち打ち関連障害:whiplash-associated disorders)に頚椎枕を処方してはならない。
◆【マニピュレーション】長期間にわたる治療は正当化されないが、短期間ならWADの治療に脊椎マニピュレーションを用いることができる。
ただしこのテクニックを行なうのは有資格者に制限すべきである。
◆【モビリゼーション】限られたエビデンスからモビリゼーション(瞬間的に外力を加えることなく可動制限がある関節の可動域を無理なく徐々に広げて行く他動的ストレッチ)はWAD(むち打ち関連障害)の治療として用いることができる。
◆【運動】限られたエビデンスからROM(関節可動域)運動はただちに実行されるべきである。
痛みが激しい時は休み休み行なう必要があり、症状の悪化がみられた場合は臨床的判断が重要である。
◆【姿勢のアドバイス】限られたエビデンスからWADにおける姿勢に関するアドバイスは他の活動的な治療法の併用療法として処方することができる。
ただし具体的にどのようなアドバイスが有効かについては不明。
◆【スプレー&ストレッチ】トリガーポイント療法で行なわれるスプレー&ストレッチ、すなわちコールドスプレーによって瞬間冷却した後に筋肉をストレッチする方法は、WAD(むち打ち関連障害)の治療に勧められない。
◆【牽引】限られたエビデンスからWAD(むち打ち関連障害)における頚椎牽引は他の可動域を広げる治療法の併用療法として用いることができる。
急性期(受傷後4日以内)なら一時的に症状を改善する可能性がある。
◆【物理療法】
1)グレード1に対するプラシーボ対照試験でPEMT(パルス磁気療法)の有効性が認められたものの、3ヶ月にわたって1日8時間のソフトカラーを装着させた研究だったことからWADの治療として勧められない。
2)グレード2と3に対するその他の物理療法(温熱・アイシング・マッサージ・低周波・超音波・レーザー・短波ジアテルミー)は、受傷後3週間以内なら通常生活への復帰を目指した活動性を促す補助手段として用いることができる。
◆【外科手術】グレード1と2に外科手術の適応はない。外科手術は一部のグレード3、すなわち保存療法に反応しない持続的な腕の痛みか、急速に進行する神経麻痺があるWAD(むち打ち関連障害)患者に限定されるべきである。
◆【ステロイド注射】
1)WAD(むち打ち関連障害)患者に関節内ステロイド注射は推奨できない。
2)硬膜外ステロイド注射はグレード1と2に行なわれるべきでないが、グレード3で1ヶ月以上持続する神経症状には有効かもしれない。
3)トリガーポイントへのステロイド注射の繰り返しによる有害な副作用が報告されているため、RCTによってWAD(むち打ち関連障害)に対する有効性が証明されない限り、トリガーポイントへのステロイド注射は行なうべきでない。
4)髄腔内へのステロイド注射は重大な危険を伴うため、どのグレードであってもWAD(むち打ち関連障害)患者に対して行なうべきでない。
◆【無菌水注射】トリガーポイントへの無菌水皮下注射は、通常生活への復帰を目指した活動性を促す補助手段としてグレード2のWAD(むち打ち関連障害)患者に用いることができる。
◆【薬物療法】
1)グレード1のWAD患者にはいかなる薬物も処方してはならない。
2)短期間であればグレード2と3のWAD患者に非麻薬系の鎮痛剤とNSAIDを処方できるが、3週間を超えてはならず、副作用に注意する必要がある。
3)グレード1と2のWAD(むち打ち関連障害)患者に麻薬系鎮痛剤を処方すべきではないが、激しい痛みのある急性期のグレード3患者に限れば一時的に処方することができる。
4)急性期のWAD患者に筋弛緩剤を処方してはならない。
5)どのグレードであってもWAD患者に向精神薬は勧められないが、急性期(3ヶ月以内)の不眠や緊張状態に対する補助手段として処方してもよい。慢性(3ヶ月以上)のWAD患者には抗不安剤と抗うつ剤を処方することができる。
◆【その他の治療】
1)グレード1の患者には直ちに通常生活を再開するよう勧めるべきで、ネックスクール・仕事の変更・リラクゼーション法の適応はない。
2)グレード2と3の患者にはできるだけ早く通常生活に戻るよう勇気づけるべき。
3)ネックスクール(頚痛教室)・一時的な仕事の変更・リラクゼーション法・鍼治療は、症状が3週間以上持続しているWAD(むち打ち関連障害)患者の任意的補助手段として認められる。
4)磁気ネックレス・薬草(漢方薬を含むハーブ療法)・ホメオパシー・リフレクソロジ―(反射療法)などといった話題の治療法が有効だとするエビデンスはなく、特に磁気ネックレスは用いるべきでない。
以上です。
早期回復にご活用いただければ幸いです。