君が紅く色付く季節に。 | プールサイドの人魚姫

プールサイドの人魚姫

うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

 

Nikon Z7Ⅱ,Mモード,WB晴天,ISO500,SS1/160,f/10 Z24-200mm f/4-6.3VR

 

 

 

初めて口紅塗ったのは

わたしが15の秋だった

もみじの紅が好きだと

あなたが言った事

遠い昔のおとぎ話しだけれど

わたしは今でも忘れない

君が紅く色付く季節に

迎えに来るよと

あなたの優しい眼差しが

語っていた

幾度となく季節が

わたしの中を通り過ぎ

朱い紅が溶けてくちびるを濡らす

二度と戻らぬ二人の季節に

さよならの手を振って


 

 都内の紅葉の名所と言えば数多くあるが、これまで訪れた事のない『六義園』へと赴いた。国の特別名勝にも指定されているため、さぞ美しい紅葉が望めるだろと期待で胸を膨らませていたのだが…。空は雲ひとつない快晴!絶好の撮影日和であった。整備や手入れの行き届いた日本庭園は見事である。然し、何処を見渡しても私が求める紅葉が見当たらないのだ。新宿御苑のような広大な敷地ではないから2時間程度歩けば園内全てを見る事が出来たが、結果的に自分の撮影意欲を充たす被写体と出会う事は出来なかった。コスモスの時と同じ様に、このまま終わる訳には行かないので別の日に今度は『旧古河庭園』へと足を運んだ。

 こちらも六義園と似たりよったりではあったが『洋館とバラ園』もあり、前者よりも僅かだが心が動いたのは確かだった。ここには『手水鉢』があると言うので是非とも撮影したと思い地図を見ながらさほど広くない園内を回ってみたのだが目的の物が見つからない。気が付くといつの間にか園を3周していた。そして最後にやっと見つけた『手水鉢』は実に残念な事に紅葉一つも浮かんでおらず枯れ葉のみだった…。

 結局、今回も紅葉に振り回される結果となったが、庭園は止めて寺院の紅葉に眼を向け、選んだ場所がここも初めての『九品仏浄真寺』であった。東急大井町線にある各駅しか停まらない小さな駅。その昔、上京したばかりの頃、大井町に住居を構え、大井町線には何度も乗った事があった。その頃は車体が濃い緑色だったと記憶している。

 何十年振りだろう大井町線に乗るのは…。ギターを質屋に入れて作った1万円をズボンのポケットに突っ込み、東海道線の各駅に乗り東京を目指したあの無造作な自分の姿が脳裏を駆け巡った。九品仏駅を下り、ほんの少し歩くと『浄真寺』へと続く参道に入る。道の左右には自分の眼の前にまで垂れ下がった紅葉が出迎えてくれた。この時「これだ!」と撮影意欲が爆発したのである。やっと自分が求めていた紅葉に出会えて、無我夢中でシャッターを切った。目標があったなら何事も諦めてはいけないのである。写真は一期一会。その時、その瞬間が自分の世界となるのだから。