小狼は迷っていた。
どのように苺鈴に婚約解消の話を進めるかを・・・
在り来たりの話し出しなら簡単だ。
さくらを好きになった
さくらを愛してしまった
色々な言葉もシチュエーションも考えたが
どれも言い訳がましくて気が進まないのだ。
ただ、これだけははっきりしている。
ここを乗り越えなければ、さくらへの告白はあり得ない。
小さいころから一緒に過ごしてきた幼馴染に対して
最大の敬意を払って
今の気持ちを伝えたいと思った。
律儀だとか優しさだとかそんなんじゃない。
今までの自分を好きでいてくれた苺鈴への感謝の気持ちを伝えたかった。
ペンギン公園での襲撃もあって
苺鈴は俺の気持ちに気が付いてくれた様子だった。
「もし俺に一番好きなヤツができたら、苺鈴に言う約束だったな」
ああ、なんて俺はズルいんだろう。
あいまいに、そして、甘える形で
婚約解消話を進めることとなってしまった。
「きの・・・もとさん?」
そして、小狼はわざとらしく聞いてみる。
「な、なんで?!」
苺鈴への申し訳ない気持ちもあるが
こんな最中でも、小狼の心はさくらでいっぱいだった。
本当にさくらを好きになってしまったんだ。
さくらに出会って俺は変わった。
俺はもう昔の俺には戻れないんだ。
ただ、魔力を高めることばかりを考えていたあの頃には・・・