「いっしょにゴールしよう」



電話してから後悔した。


わざわざ車で常呂まで応援に来てくれたのに弱気なことばかり言ってしまった。

きっと心配しているだろう。

ほとんど車の移動で観光どころじゃないだろうし。

kanaも退屈しているだろう。


しかし、ゴールは確実に近づいてきているのだ。


最後までしっかり走りきろう!

何のために練習したのか・・ よく考えよう!

今日はちょっとカッコ悪い走りになったけど、よく頑張ったよ・・


そんなことを思いながら走った。


あと5キロからは、もう歩かないと決めた。

ゆっくりゆっくり・・ 前に進む。

ゆっくり進んだだけなのに20人くらいは抜いた。

まわりのランナーはみんな消耗していて歩いている人も多数いる。

表情がみんな辛そうで見ているとこっちも切なくなってきた。

何人かに「頑張りましょう!」と声をかける。


ワッカの入り口の坂を今度は下る。

来るときにほとんど歩いた坂だ。


給水ポイントの撤収を終えたスタッフが並んで声援と拍手でランナーを迎えてくれた。

とても大きく温かい声援だ。ありがたい。

ちょっとウルッときた。


ゴールが近くなったせいだとは思うが、足が動くようになってきた。

さきほど飲んだお茶のおかげか、眠気もなくなった。

あとは進むだけだ。


残り2キロまで来た。

完走を確信したので再度kanamamaへ電話する。


「あと2キロまできた。」

「kanaといっしょにゴールしたいから待ってて。」


親子でゴール・・ 実は大会の参加要項に出ていた親子の写真を見た時から考えていた。

直前に家族が常呂まで来ることが決定したので実現できることになったのだ。

また少し走りが軽くなった。この時は足の痛みも忘れていたと思う。


いよいよゴールが近付いてきた。夢見心地だ・・ ほんと、ウソみたい。

このオレが完走できるのだ!


少しづつ沿道の観客も増えてきた。

何とも言えない。。 ただただ感無量。


常呂町スポーツセンターが見えてきた。

昨日下見した時とは全く違う建物のように見える。


家族を探すが人が多くてわからない。

ゆっくりゆっくり進みながら見回していたら、いた!

義父がビデオカメラを構えて義母がデジカメをこちらに向けている。

去年の滝川コスモスマラソンとおなじ光景だ。

すぐそばにkanamamaとkanaがいた。

すかさずkanaの手を引っ張る。


「いっしょにゴールしよう!」


ちょっと躊躇しながらもkanaは走り出した。


いっしょに走るのは、昨年5月の「みどりさわやかマラソン」以来だ。

あの時は親子ペア3キロだったが途中で大泣きされて最下位だった。

そのショックでkanaは「マラソン引退宣言」をして走っていない。

あの時は親の都合で強引に走らせてしまったのだった。

本当に申し訳ないことをしたと今でも反省している。


でも今日の表情はにこやかで楽しそうだ。

走っているわずかな時間の中でkanaとはいろんな話をした。

とても嬉しかった。

サロマは彼女の復活ランになったのだ。

大きくなっても憶えていて欲しいと思った。


ゴールゲート方向に右折する。

観客がいっぱいだ。
手をつないだままゴールに向かう。

係りの女性に「ゴールテープを張ってください!」とお願いした。


手を上げながらゆっくりゴールゲートに入った。

何か叫んだような気もするが思い出せない。



ゴール・・ 12時間16分42秒 

        (10キロ 86:30




あー 終わった。。 朝の5時から夕方5時まで走ったんだ。


感無量・・ (T_T)


長い長い100キロレースが幕を閉じた。



メダル獲ったどー!

応援FAX&メールをくれた走友の皆さん、ありがとうございました。




(おわり)