西太后の孫娘である寿安(ショウアン)は張作霖や李春雷がどんな人物かを探りに満州を訪れている

 

馬賊が集まる料理屋の2階に男の格好で座っている所へ、最近はお互いを「雷哥(レイコウ)」「秀哥(シュウコウ)」と呼び合う春雷と秀芳が店に入って来た。

 

亭主「春雷、見かけぬ壮士がおまえさんを探しているぜ」

 

2階に目を向けると二人も見上げる

 

春雷「知ってるか秀哥」

 

秀芳「見かけねえツラだ」

 

亭主「席に着いたとたんいきなり総攬把に取り次いでくれときた。そいつは無理な相談だと言ったら、それじゃあ李春雷はいるかって。馬賊のなりをしちゃあいるが、あれは女だ」

 

三人が再び二階を見上げると寿安が会釈し手招きをした

 

秀芳「何様だあいつ!」

 

春雷「この俺を手招きしたからにはそれなりの挨拶はさせてもらおう」

 

舞台では胡弓の演奏が始まった。春雷が階段を上って行くと寿安が片膝をつき挨拶する

 

寿安「御無礼はお許しください」

 

春雷「俺は張作霖配下の攬把、李春雷だ」

 

寿安「手前、張寿安と申す流れ者にございます。仔細あってあなたをおよびたて致しました」

 

春雷「その仔細とやらを聞かせてもらおう。座れ」

 

寿安は立ち上がり二人は席に着いた。春雷が酒をついで二人とも一息に飲み干す

 

春雷「仁義の切り方は知っているようだが、どちらのご身分だ」

 

寿安「北京の総攬把にございます」

 

春雷「都の総攬把だと?誰だそれは」

 

寿安「私の名は愛新覚羅寿安。総攬把は私の祖母の西太后陛下です」

 

西太后の名を聞いても春雷は全く動じない

 

春雷「どういう事情があるのか知らないが女だてらに馬賊の真似をするのはやめた方がいい」

 

寿安「さあ、遠慮なくお召し上がりください」

 

春雷は卓に並んだ料理を食べ始めた。寿安は酒を飲みながら春雷の顔を見つめている。

 

 

春児のことをどう切り出すのか・・