張作霖は担いでいた袋を総督の机の上に置いた

 

張作霖「おまえさんの命令通りロシア兵の首を取って来たぜ」

 

徐世昌「君ならば苦も無く倒すだろうと思っていた」

 

張作霖「苦も無くか・・俺たちが殺したロシア人は軍隊を逃げ出したわけじゃねえ。軍隊に見捨てられたんだ。奴らは食うために悪さをしなけりゃならなかった貧乏人なんだ。俺は総攬把だの何のと呼ばれたって骨の髄から貧乏人さ。その貧乏人が貧乏人を攻め殺したんだ。分かってるのか!俺は義に外れたことをやったんだぞ」

 

そういって床を”どしん”と踏むと部屋にいる幕僚たちが一斉に拳銃を抜いた。だがその前に春雷と麒麟が総督の眉間に狙いを定めている。

 

張作霖「総督さんよ、あんたは貧乏人の底力ってのを知らんらしい。ここで俺がどうこうなりゃ奉天の官軍は一日で皆殺しだ」

 

徐世昌「そんなことができるものか」

 

張作霖「試してみるか?喧嘩のあとには俺の手下の誰かがあんたの首を北京の袁世凱の目の前に置くぜ(ゆっくり椅子に座る)」

 

副官「ぶ、無礼にもほどがあるぞ」

 

張作霖「(春雷と麒麟に)物騒な物はしまっておけ」

 

二人が銃を下ろすと幕僚たちも銃をゆっくり下した

 

徐世昌「面倒な話はその辺りにして、褒美のことを話そうじゃないか」

 

張作霖「褒美?その言い方はおかしいぜ。失くしたものは弁償してくれ」

 

徐世昌「はっきり言いたまえ。いくら欲しいんだね」

 

張作霖「まず昨日の戦で死んだ30人の命代を払ってくれ」

 

徐世昌「いくらだ」

 

張作霖「みんな俺が手塩にかけて育て上げた強者だった」

 

徐世昌「はっきり言え、いくら欲しい」

 

張作霖「(春雷を指さし)俺はこいつを浪人市場で買った。一千元だ」

 

幕僚たちが驚きの声をあげる

 

徐世昌「つまり一千元が30人で3万元を弁償しろという事か」

 

張作霖「体を張って戦った連中には褒美がいる。兵隊なら勲章で済むところだが馬賊は何てったって金だ。(はぎとった勲章を投げつけて)こんなおもちゃを貰ったところで誰も喜びはしねえ。俺の手間賃と合わせて7万元、しめて10万元いただこう」

 

室内はどよめいた。法外な金額に大騒ぎである。張作霖が立ってかかとを踏むと静かになった。

 

張作霖「次は踵の音じゃねえぞ。聞きてえか・・そうだ、弾薬10万発も頼むぜ」

 

背を向けた張作霖に向かって一人の役人が叫んだ

 

役人「お、おまえは鬼だ!人間の皮を冠った鬼だ!」

 

張作霖はゆっくり振り返り言った

 

張作霖「鬼でも仏でもない。俺様は張作霖だ」

 

 

馬賊たちが出て行ったあと徐世昌にスポット

 

徐世昌「一体何の因果で漢族にとっては地の果てのような満州に来て、馬賊に銃口まで突きつけられねばならないのか・・」

 

徐世昌は今日のことを北京の袁世凱に報告に向かうのであった