さて、いよいよ楊喜楨が光緒帝の親政(自ら政を執り行う)を西太后に提案することになります。現在の事務方トップ、いかに奏するか・・

 

 

楊喜楨「太后陛下に申し上げます。場所柄もわきまえず、かような奏上を致します非礼をどうかお許し下さりませ」

 

栄禄「陛下はお芝居をお楽しみじゃ、控えよ」

 

楊喜楨「お控えなさるは栄禄閣下でございましょう。昨年、汚職の罪で官位を剝奪されたそこもとに、指図されるいわれはございませぬ」

 

栄禄「黙れ。わしは本日、太后陛下の命により内務府大臣に復職した。奏上の手順についてはわしが差配するのが道理じゃ」

 

楊喜楨「官吏の任免は私が起案しておりますが、私の知らぬうちにどのような経緯で内務府大臣におなりに?光緒陛下にお伺いいたしまする。かような人事についてお聞き及びになっておられますか」

 

光緒帝「朕は知らぬ。栄禄が罪を免ぜられたことも知らぬぞ」

 

楊喜楨「さすればこの栄禄めは、勝手に罪をまぬがれ、勝手に官職をかたる大逆人ではござりませぬか」

 

光緒帝「まあ待て。実は昨日のこと李鴻章が参内して朕の学問の進みを鑑別していった。その折に栄禄のことを母后様に奏上いたしたのであろう」

 

楊喜楨「ならば、李総督はなにゆえ天子様のお耳には入れず、母后様と図られますのか」

 

光緒帝「李総督とは日頃疎遠な故、朕にどれほどの裁量があるのかわからなかったのであろう。総督を責めてはならぬ。母后様は未だ国事を朕にお任せになったわけではない。朕がかように成長いたした以上、思い違いや手順の間違いは起きぬ方がおかしい。そうでござりましょう」

 

西太后「陛下の仰せられる通りじゃ。余は明日にでも栄禄のことを申し上げようと思うておった。して、楊の申すところは何なのじゃ、申してみよ」

 

楊喜楨「申し上げます。光緒陛下はもはや国事を全うされる十分なご英知をお持ちあそばれます。かくなる上は太后陛下もお心置きなく重簾の内よりお出ましあそばされるよう、謹んで奏し奉りまする」

 

西太后「ふむ、それはめでたい事じゃ。醇親王、そちは陛下の実の父としていかが思うか」

 

醇親王「まず皇后を冊立し、大婚の儀を終えたのちでよろしいかと」

 

西太后「たしかに。至急皇后の選定を致すとしよう。それでどうじゃ楊喜楨」

 

楊喜楨「御意にござりまする」

 

 

 

なにやら、シナリオ通りに話を進めた感がありますね。光緒帝もなかなか賢いようです。とにかくも親政に向けてスィッチが入ったようです。