文秀は春児を飲み友達の家に連れてきた。そこは・・

 

春児「兄さんどこいくの?そろそろ帰らないとみんなが心配するよ」

 

文秀「飲み友達の家さ」

 

春児「飲んじゃだめだよ!」

 

文秀「わかってる。それにまだ奴は仕事中だ」

 

 

小さな女の子が鞠をついている

 

文秀「こんばんは お嬢ちゃん、親方はいるかい?」

 

蘭琴「おじさん誰?」

 

文秀「飲んだくれの挙人様が来たと伝えてくれないか」

 

ピイウ「よう、誰かと思えばろくでなしの文秀か。夜の更けるのも待ちきれずにお出迎えとはな」

 

文秀「いや、酒じゃない。今日着いたんだが挨拶しとこうと思ってね」

 

ピイウ「晴れの会試に来て宦官製作人にご挨拶とは、あきれて返す言葉もねえよ。ん、なんだこいつは(春児)ははあ、これを買えってか?どれ、器量は悪くないし賢そうな顔をしてるな」

 

文秀「どうだ、出物だぞ。肌も白いし頭もいい。おまけに読み書きが出来る」

 

ピイウ「ほう、読み書きがな」

 

文秀「五十両でどうだ」

 

ピイウ「高いな。御覧の通り凶作続きで子供は余っている。食費や着物代だってバカにならねえ。何より娘に化けさせて年頃まで育てなきゃならねえんだ」

 

春児「あの子たち、みんな男の子なの?」

 

ピイウ「ああ、四十両にまけておけ。当分の酒代になる」

 

春児「酒代はひどすぎるよ。でも半分は母さんにやってくれる?」

 

文秀「冗談だよ。こいつは春児。俺の家来で幼馴染の弟だ」

 

ピイウ「なんでえ、俺ァ忙しいんだ。挙人様の酔狂に付き合ってる暇はねえんだ」

 

文秀「いやな、今さっき大総監の行列に会って、こいつすっかりいかれちまって。太監になりたいと言うからちょいと脅してみただけさ」

 

ピイウ「そうか。小僧、二度と妙な気を起こさないように中を見ていくがいい」

 

 

奥の施術部屋へと入っていく。しばらくして春児がはい出てきて吐く。

 

文秀「ちょっとやりすぎたかな。俺もまさかこんなにひどいもんだと思わなった。体を売ってこの先の人生を買おうなんて愚かなことさ。白太太の言ったことはもう忘れろ。いいな。」

 

 

文秀、春児をかかえて歩き出す。中庭に出るとさきほどの女の子が来て

 

蘭琴「兄さんも天子様にお仕えするの?」

 

春児「君は?」

 

蘭琴「おいら、じゃなかった。あたしはもうじき。この夏にはって親方が言ってた」

 

二人は無言で出て行く