『日の名残り』(「The Remains of the Day 」134分 93年米 監督ジェームズ・アイヴォリー)

 1958年イギリス。郊外に立つ一軒の屋敷は新しい主人であるアメリカの政治家ルイス(クリストファー・リーヴ)を迎えていた。亡くなった前主人のダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)の代から執事を務めるジェームズ(アンソニー・ホプキンス)は、ルイスがアメリカから家族を呼び寄せると聞き、屋敷の人員不足に悩んでいた。そこへ、20年前に屋敷のメイド長として働いていた(旧姓)ケントン(エマ・トンプソン)から、もう一度屋敷で働けないか?との手紙が届く。ケントンにほのかな恋心を抱いていたジェームズは休暇を利用してケントンの元へ向かう。その道中、ダーリントン卿に仕えていた(第二次大戦前の)20年前の屋敷でのさまざまな出来事を思い出すジェームズ。さて…。

 ダーリントン卿の屋敷は、イギリス首相、ドイツ外交官、アメリカの政治家…そうそうたるメンバーが集まる隠れ外交の場。大袈裟に言えば、第二次世界大戦はここから始まったともいえます。ジェームズは、それらの、一部始終を見聞きしていたのです。道中、至る所で、ダーリントン卿の悪評を聞き、曖昧な返事をしていたジェームズですが、最後に出会ったカーライルに本音を言うシーンが秀逸(このシーン、何回も巻き戻して観ました)。そして、ケントンと再会。しかし、ケントンから出た言葉は…。いやぁ、カズオ・イシグロ原作作品素晴らしい。


ちなみに…アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソン。前年『ハワーズ・エンド』に続いて共演。両名ともアカデミー賞主演男優賞、主演女優賞ノミネート。この作品では、アンソニー・ホプキンスが読んでいる本をエマ・トンプソンが取り上げるシーンが面白い。この時のアンソニー・ホプキンスの顔、必見ですよ。