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昨年4月、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」に行った話(または僕が暗闇で味わった苦痛について)

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」って知ってますか? 公式サイトによると、「まっくらな中で、五感を研ぎ澄ます。森を感じ、水の 見えない、が見える。 見えないが、見える。まっくらやみのエンターテイメント」なんだそうで。一昨年、大好きなラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」にて、これに参加した宇多丸師匠がその体験談を語っていまして。「面白そう!」と思った僕は、昨年4月、奥さんと一緒に行ったんですよ。1人7000円とかなり高いけど、奥さんの誕生日ということで、そのためにコツコツと貯めていた“つもり貯金”を使って、チケットを2枚買ったワケです。

ところが! 事前に内容を説明して奥さんの了承を得ていたハズなんですけど、中に入ると突然「やっぱり嫌だ!」「こんなの聞いてない!」と言い出しまして…僕の方こそ聞いてないよ! 何か暗闇に入るのが怖くなったみたいなんですけど、周囲の人たちも微妙に気を遣う雰囲気になっちゃって、ただでさえ参加者全員でコミュニケーションをとるイベントなのに、気まずいったらありゃしない…。と困っていたら、奥さんもその空気を読んだのか、大人しくなって中に入ってくれまして(所詮は内弁慶)。周囲の人とちょっと話したりしているので、「おやおや、機嫌が直りましたね( ̄▽ ̄)」と思ったら、僕とは全然口利いてくれないんですよ(ノДT)

よく考えたら、僕は他人とコミュニケーションをとるのが苦手なんですね。で、唯一仲良く話せる奥さんと話せない(話しかけても一切返答がなくて、そうなると僕は心が折れて話しかけられない)となると、誰と話すこともなく、まったくの暗闇の中でひとりぼっち…。恐ろしく孤独な気分になってしまい、1人半べそ状態でしたよ(まぁ、周囲では話し声がするんですが)。なんというか、シャカに五感を奪われた一輝気分というか。


天舞宝輪を受けたフェニックス一輝さん(15歳)
三角絞めでつかまえて-フェニックス一輝


とは言いつつも、民家(施設の中に民家のセットがある)に辿り着くころには奥さんも話してくれるようになり、何とか気持ちも立ち直りましたが、ちょっとしたトラウマが残ったような…。これからも僕は4月になると「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のことを思い出すような気がします。

って、ネガティブな雰囲気の話を書いてしまいましたが、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」ではかなり興味深い体験ができるので、一度は行くことをオススメしますぞ!


先週読んだ本やら漫画やら(適当な備忘録)

仕事もプライベートも全然うまくいかない昨今、ブログに逃避する時間もなかなか持てなかったり…。しかも、今月は奥さんの「誕生日月間」ということで(というか、呼び方的に“日”と“月”が被るのはおかしいですよね?)、普段の担当である洗濯とゴミ捨てに食器洗いやマッサージが加わって…。そうなるとね、読書をするヒマなんてないんですよ! ただ、今読んでいる「代替医療のトリック」「タマフル」の読書特集放送作家の古川耕さんが薦めていた)は、分厚くて難しそうな雰囲気の割には思いのほか読みやすくて、しかもメチャメチャ面白いので、今週中には読み終わりそうだったり。まだ途中ですけど、超オススメの一冊ですよ~。そんなワケで、今週は漫画一冊です。


喧嘩商売(20)
三角絞めでつかまえて-喧嘩商売(20)
喧嘩商売(20) (ヤンマガKCスペシャル)


格闘技漫画といえば、「グラップラー刃牙 」な僕ですが、この「喧嘩商売」も結構好きでして。「絵がアレだし…」とか「ギャグパートがどうも…」とか「漫画家自身が格闘技をやっていないと信用しない!」とか、嫌いな人もいるとは思いますが、僕的には板垣恵介先生が「バキ」で描ききれなかった“真の何でもあり”を心理バトル込みで描いているのが素晴らしいと思っているんですね。この巻では、やっと最凶最悪のドーピング魔人・金田戦が終了しましたが、続きが気になりますな~。


以上、先週はこんな感じでした。ではでは。

第9地区(ネタバレ)

第9地区※シネマハスラーへのリンクなどを追記しました(4/27)

三角絞めでつかまえて-第9地区

原題:DISTRICT 9
2009/アメリカ 上映時間111分
監督・脚本:ニール・ブロンカンプ
製作:ピーター・ジャクソン
出演:シャールト・コプリー、デヴィッド・ジェームズ
(あらすじ)
ある日、ほかの惑星から正体不明の難民を乗せた謎の宇宙船が、突如南アフリカ上空に姿を現す。攻撃もしてこない彼らと人間は、共同生活をすることになる。彼らが最初に出現してから28年後、共同居住地区である第9区のスラム化により、超国家機関MNUは難民の強制収容所移住計画を立てるのだが……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




96点


グロい場面も多いので、ダメな人も多いと思います。序盤、主人公・ヴィカスのクズ野郎振りにイラついて感情移入できない方もいるかもしれません…。でも、僕的には超オススメの映画でしたよ! 残念ながら僕の能力ではこの湧き上がる想いをうまく文章化できないので、とりあえず良かったところを個条書きにしてみますね。


「難民になったエビ星人がヨハネスブルグにやってきた」という素敵な設定
フェイクドキュメンタリー風の作りから劇映画への見事な移行
居住区の恐ろしいスラムっぷり(ガチでロケしたとか…スゲェッ!)
あえて“昔の特撮に出てきました感バリバリ”にしたエビ星人のデザイン
“宇宙人がいることに慣れきった世界”でのエビ星人への世間のぞんざいな扱い
ナイジェリア人ギャングとエビ星人の微妙な馴れ合い感
頭が悪そうなエビ星人の愉快な行動の数々(タイヤのゴムを食べたり、キャットフードに夢中になったり、勢いよく立ちションしたり
ヴィカスの嫌な奴っぷり(エビ星人の卵を燃やすくだりには怒!)
MNU(悪の軍事組織)の非人道的な行動の数々(特に義父は面白いほど心がなくて爆笑)
MNUが流した「ヴィカスはエビ星人とセックスしてウィルスに感染した」というデマ(ありそう)
爪や歯が取れたりする、ヴィカスの肉体変化描写(「ザ・フライ」みたいで怖い!)
ヴィカスと頭の良いエビ星人クリストファーがMNUに乗り込んだ時のバディ感
カッコ良くて破壊力のある宇宙人兵器と、撃たれると爆散して死ぬ描写
グロ描写が多い…けど、これ見よがしではなくてさりげないところ
クリストファーが生体実験された仲間の遺骸を見て呆然とするシーンで涙
最高にカッコ良いパワードスーツバトル!
嫌な奴だったヴィカスがクリストファーを助けるシーンに燃え!!
宇宙船を狙ったロケットランチャーをパワードスーツがキャッチ!
「良くやった!」(スタンディングオベーション)
完全にエビ星人化してしまったヴィカスが妻への贈り物を手作業で作るシーンでまた涙…



というか、後半、ヴィカスがクリストファーを助けに戻って、パワードスーツでバトルするあたりから、“燃えによる涙”で画面が滲みまくりでしたよ。僕は虫とか甲殻類が大の苦手でして(「ナウシカ」でいうと「なぎはらえ!」側)、本来、この映画に出てくるエビ星人なんて論外のハズなんですが、クリストファー親子に対しては「がんばれ!」と応援しまくりでしたね。

ニール・ブロンカンプ 監督はとにかくセンスが良いというか、冒頭のニュース映像とか「上手く作ったなぁ」と感心しましたよ。バトル時の残虐描写も必要以上に映さない感じに好感が持てました。「こういうバトルが観たかったんだよ!」と、フンフン鼻息を荒くしながら観てましたね~。最後、宇宙人との関係性が安易に良くなっていたりしないところも良かったです。


このオブジェ、よく考えたなぁ。
三角絞めでつかまえて-第9地区友愛の像


ちなみにこの映画を観た人は「異星人との異文化コミュニケーションを描いた作品」ということで、どうしても「アバター」と比較しちゃうと思うんですよね(宇多丸師匠も「アバター」評の時に触れてましたな)。僕は「アバター」も大好きなんですが、主人公のイヤな奴感とか(でも“特別にイヤな奴”なワケじゃなくて、たぶんみんなああなる感じ)、宇宙人との“分かり合えない感”とか(「アバター」だと人間がよほど変なことをしなければ普通に仲良くできそう)、「第9地区」の方が“入り込みやすい要素”がギッシリ詰まっていたりしまして、もし日本で「第9地区」が先に公開されていたら、僕も「アバター」にあそこまでグッときたかどうか…(3Dはスゴかったし、映画としても好きなんですけど)。何というか、「第9地区」がSF小説だとしたら「アバター」はラノベという感じがしてしまうというか…。いや、どっちも好きなんですよ!(ラノベも好きです)

「なんで宇宙船の燃料がかかっただけでエビ星人になっちゃうんだよ!」とか「あんな科学力があるなら~」とか文句もあるかもしれませんが、僕的にそこら辺は全然気にならなかったです。今年のベスト候補の作品がまた1本増えてしまったというか、また観に行きたいというか…。苦手な人もいるかもしれませんが、本当に素晴らしいSFバトル映画だと思うので、興味がある人は劇場へぜひ!

宇多丸師匠の批評がアップされたので、ぜひ聴いてみてくださいな~。




地球人とエイリアンのバディムービーといえば、これを思い出す人は多いハズ。



こっちはこっちで好きなんですよ…。いいじゃないか!









JUNO/ジュノ(ネタバレ)

JUNO/ジュノ



原題:JUNO
2007/アメリカ 上映時間96分
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アリソン・ジャネイ、J・K・シモンズ、オリヴィア・サールビー
(あらすじ)
パンクとホラーが好きなクールな女子高生ジュノ(エレン・ペイジ)は、親友ブリーカー(マイケル・セラ)との興味本位にセックスをして妊娠してしまう。中絶を思いとどまったジュノは友だちのリア(オリヴィア・サールビー)に協力してもらい、養子を希望している夫婦を探すことに。理想的な夫婦を見つけ、会いに行ったジュノだったが……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




87点


「マイレージ、マイライフ」を観て、「ジェイソン・ライトマン監督の他の作品も観ておくか」と思ったのは確かなんですが、それよりもむしろ「アメリカン・クライム」を観てからイヤなしこりがずっと心に残っているので、「幸せそうなエレン・ペイジが観たいなぁ…」と思って「JUNO/ジュノ」を借りてきました。かなり面白かったですよ!

正直なところ、僕は「乱暴な言葉を使う女子」とか「不躾な感じの女子」ってかなり苦手なんですね。僕の長姉のような元ヤンの人はもちろんなんですが、最近の若い女性って、一見、普通な感じの人でも話してみたらそうだったりするじゃないですか? もう僕はそういうのが本当にダメでして、主人公のジュノはモロにそのタイプなんですが、しかし! 彼女に関しては「まぁ、良いじゃないですか」と思えた不思議。なんて言うんでしょうか、先日、「アメリカン・クライム」でエレン・ペイジが恐ろしく酷い目にあっているのを観ているだけに、逆に「女の子はそのくらい元気な方が良し!」と非常に優しい目で観てしまったというか。いや、ジュノは本当に可愛かったですよ~。

それに、親友のリアやブリーカーとの会話が実にボンクラっぽくて(ブリーカーが友だちと話す会話も「ヒゲ生やせよ」「パンツを履かずに精子を増やす」とか頭が悪い感じがして良し!)、それも非常に僕好みなんですよね。映画の内容は全然違うけど、ちょっと「ゴーストワールド」を思い出したりしました。

ジュノのお腹の子の里親で、突然、「僕の心の準備が…」「親になる自身がない」「やりたいことがある」とか言い出して、結局、離婚することになるマーク(ジェイソン・ベイトマン)には本当に頭に来ましたね。いや、正直、気持ちは分からないでもないんですよ。僕も今、絶賛子作り中なんですが、子作り前に部屋の模様替えをしたりとか(まだ子どもが出来てないのに!)、指定された日には早く帰ったりとかいろいろ大変だし、先行きを考えると「僕なんかが父親になれるのか?」「自分が子どもに暴力を振るうようになったらどうしよう」とか不安になったりもするし。マークが奥さんから「そのTシャツバカみたい」って言われてましたけど、僕もしょっちゅう奥さんに言われてるもんなぁ…。こういう「大人になりきれない男」って、僕を含めて増加中なんでしょうね。

でも、どう考えても「その段階になる前に気付け!」としか言いようがないですわな。どう足掻いてもやっぱり「もう大人」なんだから。僕はそのことで傷ついてしまったジュノが可哀想で可哀想で…。奥さん役のジェニファー・ガーナーといえば代表作は「エレクトラ」なワケで、「サイでアイツの目をえぐれ!」と心から思いましたね。

超音波検査士が「十代の母親の家庭環境は赤ちゃんを育てるには劣悪」みたいなことを言い出して、義母が恐ろしくイヤミな感じでやりこめるくだりは、「もう少し頭を使う仕事を選んだら?」はさすがに言い過ぎだとは思いましたが、ちょっと胸がスッとしましたね。世の中、10代の妊娠どころか、デキ婚に対しても否定的じゃないですか? 確かに10代の妊娠なんて手放しで褒められたモンじゃないかもしれませんが、情報が氾濫していてセックスする10代が増えているのが現実なんだから、そういうケースが増えるのも仕方ないじゃないですか。妊娠を知ったジュノの両親の「賛成はできないけど、できたものは仕方ないから、前向きに頑張ろう」的な対応、僕的には結構良かったです。「里親に出す」という選択も、ちょっと人身売買的な怖さは感じるけど、「合理的で良いんじゃないか」と思いました。まぁ、現実ではもっと大変なのかもしれませんが…。

まぁ、なんだかんだ言って物語的には、結局、「10代の妊娠」ってのは話の入り口でしかなくて、「ありのままの自分を受け入れてくれる人が大切」みたいな感じなんですかね。少女が妊娠して、お腹の子を養子に出すことにしたことがキッカケとなって、あらためて自分にとって大切なものや愛について考えて、成長した話というか。最後、素直になって、ブリーカーに謝って告白するシーン、最高でした。「いいやつジュノ!」と感動しましたよ。その時、遠目からジュノのことを好きだった男子がションボリするのも素晴らしくて(素直になったジュノとの対比なんでしょうか)、なんか泣けましたね~。「ジュノが牙を失った」感じもあって、少しだけ寂しい気分にもなりましたが…。


ちなみに昭和のプロレスファンがよく使う「いいやつ○○」の元ネタは「プロレススーパースター列伝」のこのコマだったりします。
いいやつタイガーマスク!


とにかくジェイソン・ライトマン監督は上手いですよね。撮り方や演出だけじゃなく、普段は音楽なんて全然気にしない僕が「使い方にセンスがあるなぁ」なんて感心しちゃったり(偉そう)。脚本も素晴らしかったです。脚本家のディアブロ・コディは「元ストリッパーのブロガーで文才を認められて…」的なエピソードがクローズアップされてますけど、ちゃんとオハイオ大学で勉強して、法律事務所や広告会社とかで働いている経歴もあって、「普通に頭が良い人なんだろうな」と思ったり。

まぁ、例によって、グチャグチャな駄文を書いてしまいましたが(気に入った映画ほどそうなるような)、僕はかなり好きな映画でした。「幸福な十代の妊娠があったって良いよね」って思いましたよ(いや、そんな簡単な話じゃないのは分かっていますが)。「モラル的にどうもダメ」って人もいるかもしれませんが、僕的にはオススメですな~。




ジェイソン・ライトマン監督の長編デビュー作。これも観ないとなぁ。



「アメリカン・クライム」の時は気付かなかったけど、壁抜けの子はエレン・ペイジだったんですね! それを使って逃げれば良かったのに…。



マイケル・セラのボンクラ振りが堪能できる1本。超オススメです(特に男)。



大大大大大好きな映画。系統は違うけどボンクラ女子の駄話が楽しいです、うふふ。原作も超オススメですぞ!








マイレージ、マイライフ(ネタバレ)

マイレージ、マイライフ

三角絞めでつかまえて-マイレージマイライフ

原題:UP IN THE AIR
2009/アメリカ 上映時間109分
監督・脚本・製作:ジェイソン・ライトマン
出演:ジョージ・クルーニー、ジェイソン・ベイトマン、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック、ダニー・R・マクブライド、エイミー・モートン、メラニー・リンスキー、サム・エリオット、J・K・シモンズ
(あらすじ)
仕事で年間322日も出張するライアン(ジョージ・クルーニー)の目標は、航空会社のマイレージを1000万マイル貯めること。彼の人生哲学は、バックパックに入らない荷物はいっさい背負わないこと。ある日、ライアンは自分と同じように出張で各地を飛び回っているアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と出会い、意気投合するが……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




88点


映画評論家の町山智浩さんが「キラ★キラ」で紹介されていたので、結構観たかったんですよ(「資本主義のための死の天使」とかのフレーズが素晴らしい。この人の批評を読んだり聴いたりすると、自分が“感想文程度”しか書けないのがよく分かりますな…)。で、新宿武蔵野館で観てきたんですが、これはかなりオススメですぞ! 非常によく出来ている作品だと思いました。この映画はジェイソン・ライトマン監督の3本目の長編映画だそうですが、前2作(「サンキュー・スモーキング」「JUNO/ジュノ」)も評判は良いし…天才ってのはいるんですね~。

オープニングは上空から眺めた画で始まるんですが、幾何学的に見える地上が非常にキレイだったりして。もう町山さんの「主人公は死の天使だからずっと空の上にいる」ってのを聞いてしまっているから、そういう目線で観ちゃいましたね~(残念ながら自分の脳では思いつかなさそう…)。“神の視点”というよりは、もう少し人間に親身な感じの存在=天使の目線っぽく感じたりして。ジョージ・クルーニー演じるライアンが登場すると、とにかくカッコ良くて。彼の行動から伝わってくるプロフェッショナル感の小気味良さでやられてしまうというか。まぁ、人によっては「フン、いけ好かない野郎だぜ」と心の中で舌打ちをするかもしれませんが、ほとんどの人がこのオープニングだけでライアンに好感を抱くんじゃないですかね。ベタではあるけど、その見せ方のテンポが素晴らしくて、しかも、それだけで「ライアンはこういう人なんだな~」とスムーズに理解できちゃうってのはスゴいと思いました。

ストーリーをザッと書くと、ライアンの仕事はリストラ勧告人で、さまざまな企業に出向くため、1年のうちの322日間が出張なんですね。自分の仕事に誇りを持っているわ、出張自体も大好きで「1000万マイル貯めること」を目標にしているわで、充実した毎日を送っていたワケですが、そこにハイテク化の波が押し寄せまして。仕事のやり方が変わることに反発を覚えつつも、現実を突きつけられてションボリしたりして。一度は恋愛に逃げようかと思ったりしつつ、それも叶わなかったりするんですが、最終的にはハイテク化が頓挫したことで出張も再開。状況的にはオープニングの時と同じなんですけど、本人の自覚的にはノリノリ状態から「とりあえず俺は今、仕事をするしかないんだな」という感じに変わった…という話だと思ったんですけど、どうですかね?

正直、町山さんが宇多丸さんとの対決ポッドキャストの時におっしゃってたような「今、自分がやれる最良のことはこれしかないんだ!」という勢いがある覚悟はあまり感じられなくて、僕的には「今まではまだ人生の選択はいろいろあると思っていたけど、もう自分の居場所はここにしかないのかもしれない。まぁ、とりあえずまたやってみるか」とやや諦観しているように見えました(感じ方は似ているんですが)。確かにオチだけ見ると「レスラー」「ハート・ロッカー」っぽいんですけど、まず「レスラー」の場合は主人公のラムが「現実は厳しくなるばかりだからもう違う生き方をしたいんだけど、気付いてみたら自分がボンクラなせいで他の居場所なんてなかったよ…。仕方ねぇ、リングに戻るか!(ここで「Sweet Child O' Mine」が!(ノДT))」って感じだし、「ハート・ロッカー」の場合は「自分には家庭もあるけど…ダメだ、ツマンネ! 酷い目にも遭ったけど、あそこでは自分の能力を活かせるし…やっぱり戻る!」って感じだと思うんですよ。だから、「状況がそんなに深刻じゃない」というのもありますが、この映画の主人公の方がまだ全然救いがあると思いました。あ、でも、3本とも「面白おかしく暮らしていた人生とあらためて向き合って自覚する男の物語」ということでは一緒なのかな。

役者さんたちはみんな素晴らしかったですね~。ジョージ・クルーニーが恐ろしく魅力的なのは当たり前なんですが、ライアンの女性バージョンであるアレックスを演じたヴェラ・ファーミガも良かったです。ライアンとのやり取りはちょっと誇張気味な「ザ・仕事ができる男女!」というような描写で、かなり笑いました。この人、昨年は「エスター」「縞模様のパジャマの少年」のお母さん役で見かけましたが、まさか今回もお母さんだったとは…。ちょっと生意気な部下のナタリー役のアナ・ケンドリックも可愛かったです。突然、彼氏にフラれたことを告白して泣き出すシーン、場内は大爆笑でしたよ。僕も最初は笑ってたんですが、次第に可哀想になってしまって、最終的にはナタリーと一緒に大泣きしちゃいました。…ううむ、ちょっと心が弱っているのかもしれませんな。あと、ライアンのお姉さんが出てくるんですけど、その威圧感が非常に“自分の姉”っぽくて、ちょっと怖かったりしました。メイナード・フィンチというチーフパイロット役を演じたサム・エリオットも相変わらず存在感があって良かったです(超然としている感じ)。あのニヤニヤ顔を好きな人って結構多い気がします。

というか、今回の更新の文章がいつもよりグダグダになっていることくらい、当然ながら自覚してますよ! 細かいエピソード(ナタリーの志望動機やら妹の結婚のドタバタやら「道に迷っている人よ」という台詞やらリストラした人の自殺やら最後の推薦文やら)やいろいろな要素がイチイチ見事に合わさって素晴らしい映画になっているんですが、そのレベルが高すぎて全然上手くまとめられないというか…(言い訳)。何はともあれ、僕的には「これからの人生の途中で、また観たくなるだろうな」と思うような映画だったので(宇多丸師匠が「ハッピー・フライト」に抱いた気分っぽい感じ)、とりあえず観てくださいな、もう!




ジョージ・クルーニーがアカデミー主演男優賞にノミネートされた作品。未見なんですよね…。
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ジェイソン・ライトマン監督の長編デビュー作。かなり評判は良かったような。
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ジェイソン・ライトマン監督の長編2作目。アカデミー監督賞にノミネートされてましたな。天才め!!(鎬昂昇風)
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故パトリック・スウェイジ主演のB級格闘アクション映画。サム・エリオットが先輩用心棒役でニヤニヤしてます。
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