サファリ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

サファリ(ネタバレ)

サファリ



原題:Safari
2016/オーストリア 上映時間90分
監督・製作・脚本:ウルリッヒ・ザイドル
脚本・美術協力:ベロニカ・フランツ
撮影:ボルフガング・ターラー、ジャジー・パラツ
編集:クリストフ・シェルテンライブ、クリストフ・ブルナー、アンドレア・バーグナー
出演:ジェラルディン・アイヒンガー、エバ・ホフマン、マニュエル・アイヒンガー、ティナ・ホフマン、マンフレッド・エリンガー、イング・エリンガー、マリタ・ニーマン、ボルカー・ニーマン、マルコルフ・シュミット、エリック・ミューラー
パンフレット:★★★★☆(800円/読み物が充実していて、映画を理解するのに助かった)
(解説)
アフリカの草原で群れをなすインパラ、シマウマ、ヌー、キリンなどの野生動物たち。そうした動物を嬉々として撃ち、狩猟するハンターたち。値段が付けられた野生動物を殺すことを趣味や娯楽とするオーストリア人とドイツ人のグループ、彼らを草原へと案内するナミビアのリゾートホテルのスタッフ、そして彼らが狩猟した動物の毛皮を剥ぎ、余った肉を食べる現地人。そんな人間たちの姿をカメラが肉薄していく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




80点


1月27日公開の本作、「2018年1月公開で観たい映画の覚え書き」を書いた時は気づかなくてスルーしちゃったんですけれども。のちに「トロフィーハンティングを扱ったドキュメンタリーが公開される」と知って、興味が湧いたので前売り券を購入。とは言え、なかなか観に行けなかったんですが、なんと3月中旬の今もイメージフォーラムで上映されていたので、新宿で「ゆれる人魚」を観てから、渋谷に移動して鑑賞いたしました。「ひでぇな… (`Δ´;)」と素直にドン引きしましたよ。


観客は5人程度。3月23日(金)まで上映されるそうな。


ちなみに前売り特典は「“I Shot The Zebra”ステッカー(2枚1組)」でした。



映画の流れをザッと解説すると、舞台はアフリカで、黒人たちが角笛を吹くシーンでスタート。序盤から中盤にかけては、白人ハンターたちがトロフィーハンティング(スポーツハンティング)に精を出したり、「ハンティング禁止と、どこに書いてあったかね?( ´_ゝ`)」と自己弁護したりする様子を映してまして。終盤は黒人たちが狩られたシマウマやキリンを黙々と解体したり、その肉を焼いてモリモリ食べたりするシーンが入ってきましてね。最後はハンティングロッジのオーナーが「命には限りがあるということを我々は肝に命じるべきだ。我々人間がピラミッドの頂点にいることが間違っている。何の役にも立っていない人類が消えたら、もっといい世界になるだろうね ( ´_ゝ`)」なんて知った風なことを語って、黒人たちがホルンっぽい管楽器を吹いて終わってましたよ、確か。


映画は、狩りのシーンと…。


ハンターたちが自分たちの「狩り観」を語るシーンが映りまして。


狩った獲物を黒人たちが解体して…。


その肉を食べるシーンなんかも出てきましてね。


最後は右の親父が偉そうなことをほざいて終わるのでした。



正直なところ、“見世物”としてスゲー面白かったです。不謹慎ながら、トロフィーハンティングの現場とその当事者の話、さらにシマウマやキリンが解体される様子なんて観たことがなかったので、モンド映画っぽい楽しさがあったというか。僕は2015年に起きた「ジンバブエのライオン“セシル”殺害事件」と、それに伴うバッシングは知らなかったんですけど、トロフィーハンティングなんてどう考えても堂々と胸を張れる行為ではないワケで。ウルリッヒ・ザイドル監督はパンフで「先入観を持たず、中立的な立場で、なぜ人々は“殺戮の休日”に衝き動かされるのかを見たかった」と語っていましたが、ハンターたちを映画に出演させただけでもスゴイなぁと感心いたしました(「アクト・オブ・キリング」「ルック・オブ・サイレンス」のような“騙し討ち”ではなく!)。


一応、ハンターにはハンターなりの言い分があるのです。



つーか、残酷だと感じる描写が本当に多い。その筆頭は、ハンターたちが射殺した動物と喜びながら記念撮影するシーンで、まさに醜悪のひと言。あまりに不快なので、映画に出演したハンターたちの今後が心配になるほどでしたよ。黒人たちが「シマウマのしまをグルグル取って〜♪」と解体していく様子に関しても(不要なウソ)、そりゃあ「カルネ」「いのちの食べかた」級のキツさがあって。僕は、肉を食べる以上は「動物がどう解体されるのか」を知っておくべきだと思うので、これらのシーンだけでも観る価値はあるんじゃないかと思ったり。


記念撮影シーン、なかなかおぞましかったです。


皮だけになった動物を見せられた後に剥製が映るのも、結構ヘビーだったり ('A`) ウヘェ



あと、白人が奴隷のように黒人を使役する状況もあって(黒人の肉体について語るオーナーはモロに“理解ある風の差別者”ムード)、ワカンダは傍観してんじゃねーよ…というフィクションが混同した文章。もうね、トロフィーハンティングに関しては、嫌悪感しか抱けないワケですが、しかし。綺麗事では片付けられない「お金」という厳しい現実があって。ハンターたちは普通の観光客が2ヵ月で使う費用を1週間で使うほどの“上客”であり、狩猟産業が地域で雇用を生み出しているみたいだし…(ただ、動物の保護に繋がっているってのは眉唾だと思う)。僕らが抱くジレンマなんて、アフリカの貧しい国々からすれば「よそ者が勝手なこと言ってんじゃねーよ ( ゚д゚)、 ペッ」って感じなんでしょうな。

とは言え、狩猟を生業にしている人は別として、僕がトロフィーハンティングする人を嫌いなのは「勝負ヅラ」をするところ。素手(もしくはナイフや槍など)で戦うならまだわからないでもないけどさ、ガイドに頼って、とっても安全な遠距離から一方的な攻撃を仕掛けることにロマンだなんだって、自分に酔っててスゲー気持ち悪い。本作のハンターたちがやってることは、背後から通行人の後頭部をバットで殴って殺害して「良い戦いだったぜ… (;`∀´) フゥ」なんて汗を拭いているだけのこと。いや、法律では許されているし、好きなら余暇を活用してやればいいけどさ、「自分は動物をノーリスクな状態での攻撃によって殺害することで興奮を覚える人間です」程度の自覚は持ってほしいものですな。


ズールのように素手での狩猟は無理だとしても(「グラップラー刃牙」より)。


せめて銃弾を外したら反撃されるぐらいの距離で戦ってほしいものです(「グラップラー刃牙」より)。



その他、「“夢のような美味しさ”というエランドテンダーロインは食べてみたいよぅ… (´Д`;) ハァハァ」なんてことはどうでも良いとして。不快にはなったものの、興味深い映像がいろいろ観られて、非常に勉強になる映画でした。ウルリッヒ・ザイドル監督は、「スイーツパラダイス」「わんわんパラダイス」「にゃんにゃんパラダイス」「パラダイス」三部作などで知られる超有名な方らしいですが(乱暴なウソ)、他の作品も観たくなりましたよ。まだ上映中だし、今後もあちこちで公開されるみたいなので、気になる方は観ておくと良いですぞ。




ウルリヒ・ザイドル監督による三部作。ちょっと観たいです。



パンフでもコラムを書かれていた安田章人先生の著書。読もうかなぁ。



同名のモキュメンタリー。観光客が動物たちに食われてました。