カルテル・ランド(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

カルテル・ランド(ネタバレ)

カルテル・ランド

カルテル・ランド

原題:Cartel Land
2015/メキシコ、アメリカ 上映時間100分
監督・製作:マシュー・ハイネマン
製作:トム・イェーリン
製作総指揮:キャスリン・ビグロー、モリー・トンプソン、デビッド・マキロップ
撮影:マシュー・ハイネマン、マット・ポーウォール
音楽:H・スコット・サリナス、ジャクソン・グリーンバーグ
出演:ホセ・ミレレス、ティム・フォーリー
パンフレット:★★★★☆(700円/山本昭代さん、酒井隆史さん、丸山ゴンザレスさん、森達也さん、町山智浩さんと、コラム陣が豪華!)
(あらすじ)
メキシコ、ミチョアカン州の小さな町の内科医ホセ・ミレレスは、地域を苦しめる凶悪な麻薬カルテル「テンプル騎士団」に対抗するべく、市民たちと蜂起する。一方、コカイン通りとして知られるアリゾナ砂漠のオルター・バレーでは、アメリカの退役軍人ティム・フォーリーが、メキシコからの麻薬密輸を阻止する自警団「アリゾナ国境偵察隊」を結成。2つの組織は勢力を拡大していくが、やがて麻薬組織との癒着や賄賂が横行するようになってしまう。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


愛聴しているラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の影響で、最近はすっかり“メキシコ麻薬戦争モノ”が大好物…というのは「ボーダーライン」の感想でも書いたので省くとして。「メキシコの麻薬カルテルに対抗すべく、街の人たちが自警団を作った!」なんてドキュメンタリーの話を聞いたら観たくないワケがないということで、前売り券を購入。5月末、渋谷のシアター・イメージフォーラムに足を運んできました。「こんなことがあっていいのか…? (`Δ´;) ヌゥ」と思ったり。


劇場には記事の切り抜きがありましたよ。
記事の切り抜き

僕の心境を代弁するサミュエル副所長の画像を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。
こんなことがあっていいのか......?


尊敬する映画評論家の町山智浩さんが「たまむすび」で紹介しただけでなく、パンフでコラムも書かれているんですが、それらによると、監督のマシュー・ハイネマンは、雑誌「ローリングストーン」の記事で自警団「アリゾナ国境偵察隊」のことを知って、そのリーダーである退役軍人ティム・フォーリーの撮影を始めまして。で、その後、「ウォールストリート・ジャーナル」紙の記事で、メキシコのミチョアカンで自警団を始めた内科医ホセ・ミレレスを知って、密着取材をスタートしたとのこと。さらに監督はスペイン語もよくわからないということで、なんか頑張って自警団について行ったら、いろいろとスゴイものを撮影してしまった…って感じらしいんですけれども。とにかく映っていることがあまりにマッドすぎて、「んもう、こんな救いのない話が実際にあるわけないじゃん!(;`∀´) バカバカシイ」と、思わず現実逃避したくなる映画だったのです。


メキシコとの国境沿いで自警活動をする退役軍人ティム・フォーリーも主人公ではあるんですが…。
アメリカの退役軍人ティム・フォーリー

基本的には、メキシコで自警団を立ち上げて麻薬カルテルに対抗し始めたドクター・ミレレスがメイン。
自警団のリーダー、ホセ・ミレレス

町の人も大歓迎であり、武器を取り上げようとする軍隊に対抗してくれたりするというね。
軍隊を追い返す町の人


映画冒頭、凶悪な麻薬カルテル「テンプル騎士団」に家族を殺された被害者の告白がとにかく凄惨でゲッソリさせられるので、最初はギャングどもに対抗すべく立ち上がったドクター・ミレレス with自警団の活躍にグッとくるんですよ。ところが、活動が進むに連れて内容がエスカレートしてきまして。ギャングの家の物を盗むのはまだ100歩譲るとしても、「自警行為」として他の一般人を拉致・尋問・拷問するくだりにはドン引き。これって、法の制約を無視してやっている分、警察より悪質なんですよね。しかも、映画終盤、自警団が政府の管理下に入ることになると、それを拒否したドクター・ミレレスは逮捕されてしまうんですが…。実は「そもそも自警団にはギャングが混ざってた」ことが発覚→政府公認のギャングが誕生するという着地なんだから、「なにこの後味の悪さ!∑(゚Д゚)」とビックリいたしました。


自警団が家族の前で父親を拉致する場面とか、地獄のようでした… ('A`) イヤーン
パパを連れて行かないで!

自警団にはギャングが混ざってた…どころか、パンフの山本昭代さんのコラムによると、最初から資金提供してたそうな。
自警団を結成!


一応、ティム・フォーリー率いる「アリゾナ国境偵察隊」も同時に描かれてて、最後は「キリがないかもしれないけど、オレたちも頑張るぜ (`・ω・´) キリッ」的に終わるものの、メキシコ側を見てしまうと、あまりに頼りないというか、「蟷螂の斧」にしか見えなくて。本作の絶望的な読後感は、昨年観た「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」と被ったものの、「市民たちの自警行為すらギャングの手の内」という輪を掛けて救いのない状況に、なんとなく「もうどうにでもな~れ♪ヘ(゚∀゚*)ノ」気分になってしまった次第。つーか、劇中に何度か出てきた「麻薬を作ってるギャング」が言ってた通り、もう麻薬の売買がメキシコの経済活動に組み込まれてるから、いろいろとどうしようもないんでしょうな。


このギャングの言うことは身も蓋もないんですが、正論にも聞こえましたよ。
違法なクスリを作ってる人


そう考えるとね、「ドラッグは他人に迷惑をかけない犯罪だからいいんだ!ヘ(゚∀゚*)ノ ヒャッハー」とか「大麻はタバコやアルコールより害がないんだからバレなきゃOKさ!(`∀´) ケケッ」なんてうそぶく人も犯罪者に金を落とす時点で十分迷惑なので、違法薬物に興味がある若人はマジで気をつけていただくとして。何はともあれ、銃撃戦とか拷問とか「ミレレスが若い女性を愛人にしようとする場面」とか、「こんなのよくガチで撮れたなぁ… (`Δ´;) ヌゥ」と感心する場面が目白押しであり、あんまりすぎるオチも含めて、とにかくスゴいドキュメンタリーであることは間違いないと思います。つーか、メキシコが平和になる日は来るんですかね…。




昨年鑑賞した救いのないドキュメンタリー。僕の感想はこんな感じ



メキシコ麻薬戦争に興味がある方はマストの名著。



10月に発売される麻薬戦争映画。僕の感想はこんな感じ