複製された男(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

複製された男(ネタバレ)

<どうでも良い前置き>

ドゥニ・ビルヌーブ監督の「灼熱の魂」「プリズナーズ」が面白かったから、気になっていたんですよ。で、ムービーウォッチメンの「her/世界でひとつの彼女」評の時、ラジオネーム・ピエロさんがガチャの目に推薦されてまして。「理解不能でした」「つまらなかったわけじゃなくわかりませんでした」とおっしゃってたから、あらためて予告編を観てみれば、またもや試してくる映画だったというね…。


「“脳力”が試される」だと… (`Δ´;) ヌゥ
脳力が試される!


ハッキリ言って、スゲー鼻につく感じ。今年は2月に「オンリー・ゴッド」観客の創造力と感性を試してきて、今度はこの映画が“脳力”とやらを試すワケですか。もうね、日々仕事でいろいろなことを試されて生きてきて、もうすっかり試されることに疲れているだけにね、趣味の時間までそんな目に遭うなんてノーサンキュー。絶対観ないと思っていたんですが、しかし。

今月の映画の日、「怪しい彼女」を見終わった帰り道。本当ならこの後は、どこか適当な場所でお茶をしながら愛用のポメラで仕事関連のテキストを打つ→夜は鉄板麺を食らう&ポレポレ東中野「劇場版 テレクラキャノンボール2013」を観る予定だったんですけど、たまたまTOHOシネマズシャンテの前を通りかかったら、なんと驚くほどに上映時間のタイミングがバッチリでして。すると、「予定外の映画を観るのも、それもキミのタイミング♪川o^-')b」と僕の中のビビアン・スーが振り付けをしながら歌い出したので(不要なリンク)、「よーし、お父さん、脳力を試されちゃうぞ!ヘ(゚∀゚*)ノ」と観てきたのですが…。


TOHOシネマズシャンテの画像を貼っておきますね。
シネマシャンテ












複製された男

複製された男

原題:Enemy
2013/カナダ、スペイン 上映時間90分
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
製作:ニブ・フィッチマン、M・A・ファウラ
製作総指揮:フランソワ・イベルネル、キャメロン・マクラッケン、マーク・スローン、ビクター・ロウイ
原作:ジョゼ・サラマーゴ
脚本:ハビエル・グヨン
撮影:ニコラ・ボルデュク
美術:パトリス・バーメット
衣装:レネー・エイプリル
編集:マシュー・ハンナム
音楽:ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ
出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ キャロライン、ジョシュ・ピース、ティム・ポスト、ケダー・ブラウン、ダリル・ディン、ミシャ・ハイステッド、メーガン・マン、アレクシス・ウイガ
パンフレット:★★★★★(720円/両方から読める仕様が凝ってて大好き! 映画の補完としてもオススメ)
(あらすじ)
大学の歴史講師アダム(ジェイク・ギレンホール)は、DVDでなにげなく鑑賞した映画の中に自分とそっくりの端役の俳優を発見する。驚いたアダムは、取り憑かれたようにその俳優アンソニー(ジェイク・ギレンホール/2役)の居場所を突き止め、気づかれないよう監視するが、その後2人は対面し、顔、声、体格に加え生年月日も同じ、更には後天的にできた傷までもが同じ位置にあることを知る。やがて2人はそれぞれの恋人と妻を巻き込み、想像を絶する運命をたどる。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




55点


「フェアじゃない」と思いました。


このブログではお馴染みの刃牙の画像を貼っておきますね(「グラップラー刃牙完全版」第21巻)。
三角絞めでつかまえて-フェアじゃない


もしこの映画を観ていない人がこの文章を読んでいるのなら、ネタバレを知ってしまうと興が削がれるタイプの作品であることは間違いないので、観てから読んでくださいな。とは言いつつも、ちゃんとしたネタバレを知りたい人は映画評論家の町山智浩さんのポッドキャストがベストなので、200円かかるけどぜひ聴いて! もし、ブログで読みたい方は、カゲヒナタさんのところがまとまっていて、リンクもいろいろと貼られているので、そっちをチェックすると良いですぞ。

さて、僕の感想を書きますよ。この映画を観て何が何やらだった方には申し訳ないのですが(苦笑)、見終わった瞬間、僕はクレアラシルのCMの外人少年のようにカタカナで思いましたね、「ナルホドネェ ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」と。偉そうに上から目線で試してきた映画配給会社に対して、勝ち誇りたい気持ちすら湧き上がったのです。


勝ち誇る寂海王を貼っておきますね(「バキ」第25巻より)。
勝ち誇る寂海王


あらすじを簡単に書くと、ボンヤリ暮らしていた大学教授が同僚に勧められてDVDを借りて観たら、自分にそっくりな男を発見。興味しんしん丸になって、その俳優に電話してみたら、最初はストーカー扱いされたものの、会うことになりまして。ホテルの一室で対面してみたら、双子というよりは複製されたようにソックリで、大学教授ったら怯えて逃げちゃうんですね。

ところが、俳優の方は大学教授に興味が湧きまして。尾行してみたら、超可愛いガールフレンドがいたので、大学教授を「入れ替わってセックスさせろ!ヽ(`Д´)ノ」と脅すのです。大学教授はヘタレなのでスムースに受諾したものの、当然ながらションボリ状態。「そうだ、オレもアイツの家に行こう!∑(゚Д゚)」と俳優の家に行ってみれば、そこには妊娠6ヵ月の奧さんがいるワケです。

罪悪感に駆られながらも旦那になりすましていたら、薄々気付いていた奧さんもまんざらではなさそうだったから、なんだかヤル気が湧いてきて(ちなみにその間、俳優とガールフレンドは事故で生死不明状態)。翌朝、秘密クラブの鍵もゲットしたので、「今夜予定があるから!」と部屋に行ったら、そこには巨大なクモがいて。「そうか、奧さんはクモだったか… (´・ω・`)」とガッカリして、映画は終わってましたよ。


エンドクレジットで流れるThe Walker Brothersの「After The Lights Go Out」を貼っておきますね↓




僕なりの解釈を書くと、「異星人なりすまし映画か!∑(゚Д゚)」と。要は「SF/ボディ・スナッチャー」であり「ゼイリブ」であって、最近では「ワールズ・エンド」もそうでしたが、あの世界はクモ人に乗っ取られていて。人間たちが気付かぬうちに、着々とクモ人による人間の複製が作られていたということなんですね。

映画は全編、示唆に満ちていて。例えば、冒頭の秘密クラブは上級クモ人の集まりであり、あえてこの世界のクモを殺すことで「自分たちが異世界の存在」ということを表していて。レンタル屋で胡散臭いB級SF映画のポスターが貼られていたのも、この映画がSFであることを匂わしているんですね。途中、夢の中に顔はクモで体は人間の女性というストレートなクモ人が出て来たりするし、相談に来た大学教授に対して変なことばかり言う母親のシーンの後、巨大なクモが登場するに至っては、大っぴらに侵略映画ということを示すだけでなく、「すでに母親もクモ人→人類の大半がクモ人化しているのでは?」という予感を漂わせていて、非常に恐ろしかったです。


ビルよりも巨大なクモが出てくるシーンは、なんとなく六本木の巨大クモ・ママンを思い出しましたよ。
ママン


たぶん支配と侵略は緩やかにおこなわれていて。あの奧さんは自分がクモ人なのを知らなかったのではないか。監督的には、クモ=大地&母性の象徴なので、彼女を妊娠させていることで、観客に「この人もクモ人ですよ」ということを暗に示していたのでしょうな。あのラスト、大学教授が残念そうな顔をしたのは、実は彼も“複製された男”で、自分がクモ人だということを思い出したからではないだろうか(同じクモ人同士のセックスにより、奧さんは翌朝にクモ化してしまった!?)。俳優とガールフレンドが事故った車のガラスがクモの巣になっていたのも意味深だし…(俳優だけでなくガールフレンドもクモ人だった!?)。というか、あの無機質なビル群を意味ありげに映すのは、クモの巣のイメージというだけでなく、あの建物が作られたころからすでに侵略が始まっていたのではーー?


なんとなくhideさんの「ピンクスパイダー」を貼っておきますね↓




まぁ、なんにせよ、「典型的な侵略映画だな!(`∀´) フハハハハハ」と映画配給会社との“脳力”試しに勝った気マンマンでロビーに出れば、原作小説が売られていましてね。「この見事な分析に合わせて、原作本の内容に触れれば、ブログのアクセスアップは間違いないのでは…(`∀´;) ケケケ」と目論んだ僕はパンフレットとともに購入。そこから東中野に行って、「劇場版 テレクラキャノンボール2013」を観て、帰宅して。風呂に入った後、アンニュイな気分でパンフレットを開いてみたら、解釈、超間違ってた!Σ(゚д゚;) ヒィ!


原作本は2200円もしたのです。
原作本、購入。


もうね、その後、すぐに購入済みだった町山さんのポッドキャストを聴いてみたら、目からウロコがボロボロボロボロ落ちまくって、素敵なスケイルアーマーを1着仕立てたほど(これはウソ)。すでにネットにも溢れているので、町山さんの営業妨害にならない範囲でネタバレを書けば、「ジキル博士とハイド氏」以来、大量に作られているもう1人の自分話”なんだそうで。

大筋は「俳優として頑張っていた男が、奧さんの妊娠を機に大学教授として働き出すものの、浮気心は押さえられなくて、愛人がいたころを思い出したりして。また秘密クラブに行こうかなって思ったら、その心は奧さんに見抜かれてた!」という感じ。スジが通らない部分がある理由は「この映画が主人公が観ている夢だから」で、さらにはループ構造にもなっていると(ラスト、秘密クラブに行こうとする→冒頭の秘密クラブの場面に繋がる)。ちなみにクモは監督が勝手に入れた“原作小説にはない要素”で、主人公への女性たちの抑圧を表しているんだそうな。だから、最後に奧さんがクモ化したのは「※イメージです」ってことらしいですよ。

いや、確かに良く出来ているんじゃないでしょうか。ビルの警備員が「6ヵ月振り」というのが妊娠期間と一致していたのも「なるほど」と思ったし(とは言え、妊娠がわかるのは1ヵ月以降だから期間が同じなのは変だけど、なんせ夢だからね!)。いろいろと踏まえると「車で事故ったのは事実で、それが原因で奧さんに浮気がバレた」ってこともあり得るんじゃないかしらん。町山さんのポッドキャストを聴いたら、なんか少し前までの「クモ人がぁ~」なんて言ってた自分がバカみたい (ノ∀`) テヘ どう考えたって不自然な解釈なのに、どうして侵略映画だなんて思ったのカナー。


要はこういうことなんでしょうけど。検索すると、僕以外にも結構いる様子。
思い込みの威力だ


って、全然納得できないYO!ヽ(`Д´)ノ キィィ! まず、邦題。原作小説がそういうタイトルだから仕方ないにせよ、結局、脳内の話なんだからさ、誰も「複製」してなくない? してなくなくなくなくなくない?(「今夜はブギーバック」風に) さすがにミスリードがすぎますよ。というか、そもそも「ミステリー」としてはズルくないですか? 確かに「どういう映画なのか」を見破るという意味での謎解き要素はあるけど、いわゆる“ドッペルゲンガーもの”のくせに「本当は夢」なんて設定にしたら、どうとでもなると思うのです。よくよく考えればさ、


同 僚「キミ、『道は開かれる』って映画は観たかい?(`∀´) シッテル?」
主人公「あ、それ、オレ出てるよ!(´∀`) ヤクシャヤッテタ」



これで終わる話じゃないですか、本人なんだから。でも「夢だからOK!(o^-')b」ってさぁ。まぁ、「ミステリー」というよりもデヴィッド・リンチ監督の「ロスト・ハイウェイ」みたいな映画と考えれば、逆にスゲー納得できるような…って、こっちの受け取り次第ってことなんでしょうけど。なんにせよ、かなりフェアじゃないと思った次第。


なんとなく宮崎吐夢さんの「私事」を貼っておきますね↓




って、不満が強め風ですが、勝手にクモ人映画として怯えたりして楽しんだところはあるし、ジェイク・ギレンホールの芝居は素晴らしかったし、メラニー・ロランとサラ・ガドンのオッパイはありがたかったし、全編に漂う不穏なムードは良かったし、とにかく終わり方の切れ味はスゴかったのでね、そんなに嫌いじゃない作品でもあります。興味のある人は適当に観て、“脳力”を試されると良いんじゃないでしょうか。僕の“脳力”は低かったようです… (ノω・、) ワタシマケマシタワ




ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴによる原作本。無理して買ったのに、すっかり読む気がなくなっちゃった…。



もう1つのドゥニ・ビルヌーブ監督×ジェイク・ギレンホール出演作。僕の感想はこんな感じ



サントラです。



町山さんが引き合いに出していた映画、その1。スゲー面白いですな。



町山さんが引き合いに出していた映画、その2。ウロ覚え。