哀しき獣(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

哀しき獣(ネタバレ)

哀しき獣※シネマハスラーへのリンクなどを追加しました(11/11)

三角絞めでつかまえて-哀しき獣

原題:黄海
2010/韓国 上映時間140分
監督・脚本:ナ・ホンジン
撮影:イ・ソンジェ
美術:イ・ウキョン
編集:キム・ソンミン
音楽:チャン・ヨンギュ、イ・ビョンフン
出演:ハ・ジョンウ、キム・ユンソク、チョ・ソンハ、イ・チョルミン、チョン・マンシク
(あらすじ)
中国・延辺朝鮮族自治州でタクシー運転手を営むグナム(ハ・ジョンウ)は、借金返済のために賭博に手を出すが、失敗して逃げ場を失う。殺人請負人のミョン(キム・ユンソク)に韓国へ行ってある人物を殺せば借金を帳消しにすると言われたグナムは、韓国へ出稼ぎにいったまま音信の途絶えた妻に会うためにもミョンの提案を受諾。黄海を渡り韓国へたどり着くが、そこで罠にはめられ、警察や黒幕すべてから追われる身となってしまう。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




96点


※このブログではよくあることですが、今回の記事もダラダラとした文章を書いちゃって、すっかり読みにくくなっちゃいました…。
※今回の記事は、モロに「チェイサー」「オールド・ボーイ」「母なる証明」のネタバレもしているので、知りたくない人は気をつけて!


この「哀しき獣」という作品、昨年末の時点で、宇多丸師匠が「2012年のベスト!ヽ(▼Д▼)ノ」とおっしゃってましてね。僕的にも期待してたので、シネマート新宿で観てきたんですが…。予想外に面白かったYO!ヽ(`Д´)ノ


手作り感溢れる展示がありました。
三角絞めでつかまえて-記事の展示


予告編「この闇には、一縷の光りさえ届かないーー」という宣伝コピーを見て、「どうせ重くてイヤ~な感じの映画なんでしょうよ (`Δ´) ケッ」というか、「どうせシングルマザーの風俗嬢が杜撰な風俗店経営者と無能な警察のせいで、殺人鬼に惨殺されるんでしょうよ (`Δ´) ケッ」とか「どうせ近親相姦させられた挙げ句、舌を切りとるハメになるんでしょうよ (`Δ´) ケッ」とか「無実を証明するために頑張ったのに、どうせ自分の息子がやっぱり犯人で、踊って忘れようとしたりするんでしょうよ (`Δ´) ケッ」とか思ってまして(どれも好きな映画ではあるんですが)。こんな記事を書いたりしてそれなりに期待はしてたけど、正直、そんなに期待してなかったんですよね…(矛盾まみれの文章)。

ところが! 実際に観てみたら僕好みのハードなアクション映画だったので超ビックリ! ∑(゚Д゚) 良いところはいっぱいあるんですが、僕的に「これは素敵!ヽ(`Д´)ノ」と思ったアクション演出が2つありまして。1つ目は、ケレン味重視の「捕まりそうで捕まらない」アクション。「こんな大量の敵に、こんな近距離から追われたら、助けが来ないと絶対やられちゃうよぉ (ノω・、)」というダッシュ系ゾンビ映画の末期状況にも似たハードな場面でも、グナムは何とか逃げ切っちゃうんですよ。で、それがテンポの良い編集&グナムのコクのある顔によって「コイツなら、逃げかねん… (゚д゚;) ゴクリ」って感じで飲み込めるというか。中盤の「大量のおまわりさんからダッシュして逃げるの巻」(勝手なタイトル)と、後半の「罠にハメられて追い詰められるけど、船から飛び降りたりして逃げるの巻」(同じく勝手なタイトル)に関しては、ワクワクしながら観ちゃいましたね~ (´∀`) ウフフ


この状況下から自力で逃走って、逆に予想つかなかったです(まぁ、警察が無能すぎでもありますが)。
三角絞めでつかまえて-ダッシュで逃げる!


2つ目は、サクサク刃物バトル。アジアの映画で手斧やドスを使った生命力溢れる戦闘シーンがあったりすると、「おっ、来ましたネ! ヘ(゚∀゚*)ノ」と、ついつい頬が緩んじゃいがちですが、この映画の戦闘は「むしろ手斧や牛刀を使うのが基本=バンバン出てくる」ということで、もうテンションがガン上がり。みんな、ちょっと刺されたり斬られたりしても全然へこたれないという“雄度100パーセントな姿勢”が超たまらない (´Д`;) ハァハァ 特に最高だったのが、終盤のミョン率いる朝鮮族vsキム社長の手下の乱戦で、もうね、この場面での“牛刀のサクサク感”は天下一品の心地良さ。たぶん、これからのバイオレンス映画では、牛刀アクションが流行するんじゃないかなぁ(無責任な予想)。ちなみに、コンテナに閉じ込められそうになったグナムが敵の腕を牛刀でサクサクするシーンも実にキュートで、大好物でした (o^-')b


ドスじゃなく、一般家庭にもある牛刀を使っての殺し合いって、ナイスアイデアだよね (´∀`) ステキ
三角絞めでつかまえて-牛刀バトル!

ちなみに手斧で敵の腕をサクサクするシーンも良し。テンポ重視で「切断→手のアップ」とかやらないのがイイ!
三角絞めでつかまえて-手斧でサクサク!


その他にも好きなシーンが目白押しで、“あえて見せない演出”もカッコイイ! 作品内でトップクラスに哀れな登場人物ソンナム(イ・チョルミン)がミョンの寝込みを襲って逆襲されるシーン。暗闇でドタバタと音がして灯りが点いて、スクリーンに手斧を持った血まみれのミョンが映った時の衝撃ったら、もう!ヽ(`Д´)ノスキニシテ! 終盤、ミョンがキム社長の地下室に乗り込んだ時も同じように戦闘シーンを省略してましたけど、この演出は上手いなぁと感心しました(ただ、2回目は「ちゃんと見せろ!ヽ(`Д´)ノ」とも思ったり)。あと、序盤、殺人を請け負ったグナムが試行錯誤しながら殺害計画を立てるシーンも良く出来ててドキドキしましたね。「2時10分、3時10分」の台詞を繰り返すところとか、可愛かったなぁ。

つーか、役者さんたちが超魅力的なんですよ。グナムを演じたハ・ジョンウは、「チェイサー」の時は八つ裂きにしたいくらい憎かったけど、まったく同じ人とは思えない乱雑なタフガイ振りを発揮してて、かなり渋かったです。常にイラついてて負け犬臭が漂いまくりだった序盤も良かったけど、事件に巻き込まれてもがきながら生命力を取り戻していく感じ、非常にグッときました。それとグナムが食事するシーン、全体的にスゲー美味そうでお腹が減りましたよ~。


腕を撃たれてゲンナリ気味のグナム。「映画秘宝」で真魚八重子さんが触れてましたが、山越えシーンは「エッセンシャル・キリング」を思い出したり。
三角絞めでつかまえて-撃たれてゲンナリ


ただ、MVPは朝鮮族の元締め・ミョンを演じたキム・ユンソク。「チェイサー」「亀、走る」の時はダメなオッサンって感じでしたけど、今回はまったく関わり合いたくない感じ (((( ;°Д°))))ガクブル まさにターミネーターおじさん”というか、粗野なキリングマシーン振りが最高というか、牛骨があんなに似合う男を初めて観たというか。見た目はドカジャンを来た普通のオッサンなんですが、とにかく強烈でしたな…。間髪入れず海に手斧を投げるとか、あのダッシュ振りとか、腹を刺されても動じない姿勢とか、もう彼を観ているだけで恐ろしくて面白かったです。映画史に残るレベルの凶悪なオッサンじゃないでしょうか。


牛骨が似合うミョン。この後、手前の人は撲殺されます。
三角絞めでつかまえて-うしろ、うしろ!


バス会社社長兼ヤクザのキム・テウォンを演じたチョ・ソンハも“偉そうだけど焦ってる人”の役がピッタリでした。あのミョンからの電話に出た時の強ばった顔とか、地下室でミョンが部下をみなごろしにした後の「渡すさ、もちろん」と言う時の気まずそうな表情とか、“ガサツな奴が勝手に自分の日常に入ってくる恐怖”がヒシヒシと伝わってきましたよ。


キム社長。若干、小物感が漂う感じがイイね。
三角絞めでつかまえて-キム社長


キムの部下のソンナム役のイ・チョルミンも良かった。監督の演出も上手いんですけど、朝鮮族をイケイケで締め上げるシーンはちゃんと“それなりの怖い人”に見えましてね。だからこそ、ミョンの部屋に乗り込んで、逆襲された後の“すっかり心を折られた顔”が最高でして…(しみじみ)。ミョンの「頭は捨てて、残りは犬にやれ」って台詞にビビるシーンとか、笑っちゃいました。その他、朝鮮族役の人たちは本当に“イイ顔”揃いで、非常に良い雰囲気を作り出してましたな。


手前の右にいるのがソンナム。非道い奴なんだけど、自分自身も酷い目に遭いまくってました。
三角絞めでつかまえて-ゲンナリなソンナム


ただ、物語に関しては微妙に感じたところもあって。「キム社長が、義兄弟の大学教授が自分の女に手を出したのを知って、部下の運転手に殺害を命令した(そして、運転手は2人組に依頼)」のと、「大学教授の奧さんと浮気をしていた銀行マンが、ツテを頼ってミョンに殺害を依頼→借金のためにグナムが実行することになった」という2つの殺害計画がバッティングした上に、「ミョンが見捨てたグナムが意外と頑張り屋さんだった」とか「キム社長の部下がミョンを殺そうとしたら、返り討ちに遭って暗殺計画を知られて、逆に脅されてしまう」といった不確定要素が発動した挙げ句、「それぞれの思惑より大ごとになっちゃって、みんなで破滅にまっしぐらですね ┐(´ー`)┌マイッタネ」という“ノワールっぽい本筋”はまだスムースに理解できたんですけど…。

分からなかったのが最後の展開。「韓国に出稼ぎに行った奧さんが水産会社のオッサンと同棲してた挙げ句、自分が訪ねたのがキッカケで殺害されてバラバラにされた」と思ったグナムは、「もう自分には何もないけど、せめて大学教授の奧さんのためにも真犯人を見つけてやる!ヽ(`Д´)ノ」と頑張るんですけど、結局、その奧さんの浮気相手の銀行マンが殺害の依頼主→2人はグルでして(訪ねた後、奧さんがチクる→銀行マンが手配→グナムが拉致られたりもする)。ミョンとキム社長がハードに殺し合った後、やっとその事実を突き止めたグナムは「もういいや… (`・ω・´)」とゲンナリ。漁船をハイジャックして黄海を渡ろうとするも、重傷を負ってたため途中で死亡し、海に捨てられるんですが…。なんと死んだハズのグナムの奧さんが列車から降りるシーンが映って終わるんです。

バラバラにされた遺体が奧さん本人なのかを第三者に確認してもらった際、その男が「う~ん、わかんないや (´ω`;)」みたいな台詞を言ってたから、確かに僕も「あれ? バラバラにされたのは奧さんじゃないの? ∑(゚Д゚)」とは考えましたよ。ただ、「あの日、あのエリアで、オッサンと“旦那が訪ねてきたせいで揉めた朝鮮族の人妻”がグナムの奧さん以外にもいた」というのはさすがにあり得ないから、「バラバラにされたのは奧さんだろう」と思ってまして。

とりあえず、映画冒頭で仕送りのお金が滞ってたのは確かだし、娘の写真があった→あの荒れた部屋で奧さんが誰かと同棲してたのも間違いないワケで。それを踏まえて、好意的に解釈すると、「オッサンは朝鮮族の人妻の面倒をみるのが好きで、グナムの奧さんの後、別の朝鮮族の人妻と知り合って暮らしてた」ということであり、「グナムの妻は他の男と同棲してたけど、ちょうどあの日にケンカをして、中国に帰ることにした」と。…ううむ、なくはないけど、やっぱり飲み込みづらいよなぁ。冒頭のナレーションに出てきた「狂犬病」を「愛する女性への妄執」と考えた場合、それに囚われた男たちの物語のオチとしては素晴らしいと思うんですがー。

な~んてグダグダ考えてたら、ナ・ホンジン監督が「映画秘宝 2012年 02月号」でのインタビューで「(あの結末は)最初から考えていたよ」「ちょっと難解にしておけば、みんな2回くらい観てくれるんじゃないかと思ったんだ(笑)」と答えてたので、あのシーンに関してはそんなに深く考えなくても良いのカナ (・∀・) ヨクワカンナイヤ そういえば、グナムを逃した後のミョンが「オレとしたことが忘れてた!」みたいな台詞を言ったので、「テメェ、グナムの娘を人質にする気だな! あんな幼い子を利用するなんて人でなし! ヽ(TДT)ノ」と先走って激怒してたら、その後に何も起こらなかったのも拍子抜けしましたね(というか、何がしたかったんですかね?)。

う~ん、例によってまとまりもなくダラダラと長い文章になっちゃいましたな… ('A`) 「冒頭、ミョンがグナムの手を見て『なんだ、この手は』と笑ったのが、よく分からなかった」とか「『殴られても哀れに見えない』って表現はカッコイイね」とか「女性のオッパイが見られたのはありがたい」とか「トレーラーが横転するシーンは良かったけど、カーチェイスは分かりづらかった」とか「警察の検問突破シーンはあんまりだったけど、刑事役のチョン・マンシクの『何やってるんだか ┐(´ー`)┌ヤレヤレ』の台詞がツボに入ったから許す」とか「『4 黄海』ってチャプター名が出た時にゾクッとしたから、原題のままの方が良かった気がしないでもないけど、やっぱり『哀しき獣』って邦題もピッタリな気がしますね」とか、書きたいことはいろいろあるんですけど、面倒くさいので割愛!ヽ(`Д´)ノ 僕的には同じナ・ホンジン監督作の「チェイサー」よりも上というか、ツッコミどころはあるけど、勢いがあって超面白かったです。間違いなく、もう一度、観に行きますよ。万人にオススメできるかと言ったら微妙だけど、バイオレントな韓国映画に抵抗がない人だったら劇場に行った方が良いんじゃないかな。特に“ターミネーターおじさん”は一見の価値アリですぞ。

宇多丸師匠のタメになる批評がアップされてるので、ぜひ聴いて!




ナ・ホンジン監督作。好きだけど、この映画のデリヘル業者と警察にはどうしても激怒してしまう…。









※どうでも良すぎる備考

この映画は名シーンが多いと思うんですけど、僕がかなり胸を掴まれたのがグナムの食事シーン! 上陸したばかりのころの食事は微妙なんですけど、張り込みの時のカップラーメンとフランクフルト、水産会社のオッサンを待ち伏せしてた時のおでんのちくわっぽいヤツとか、美味そうで美味そうで…。帰り道、つい、自宅近くのファミリーマートでいろいろ買っちゃいました。


グナムが食べてたのが不明なので(確か大盛サイズ)、とりあえず日清のぼてどろを購入。具はチープだけど、太麺で食べ応えアリ。
三角絞めでつかまえて-日清のぼてどろ

次はフランクフルト。ケチャップなどはあえてつけないのが「獣」の流儀(少し気取ったムードで)。
三角絞めでつかまえて-フランクフルト

そして…ちくわ! 自ら箸で刺すことにより「獣」っぽさを再現。和ガラシなどはあえてつけ(ry
三角絞めでつかまえて-ちくわ その1

確かグナムは2本食べたので、再度ちくわ。でも、もったいないから、途中で投げ捨てたりはしないヨ (・ε・)
三角絞めでつかまえて-ちくわ その2

よく考えると、劇中では茹でられてた様子だったので、おでんのフランクフルトも買ってみました。パリッとして美味い!
三角絞めでつかまえて-ゆでたフランクフルト

刺身屋で隠れて食べてた“ふかしたジャガイモ”(たぶん)がなかったので、代わりに玉子と大根…って、単に食べたいおでんの具を買っただけでした (ノ∀`) テヘ
三角絞めでつかまえて-玉子と大根


おしまい。