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「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」

 

 

 

 

京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を

ついに、ついに、ついに…

読んだ、読了した、読破した!

 

 

 

このブログを記憶とともに遡るに

京極夏彦を読もうかなと

私が初めて意識をし始めたのは

2020年の4月のこと。

 

 

 

▽身近に読書量の多い人がいて

嫉妬と羨望を抱いたのだった…笑

 

 

 

 

「読みたい」と思ったが吉日、

それから間も無くして

本屋で『姑獲鳥の夏』を購入する。

図書館で借りていては

いつまでたっても返せないと思い

買うことで本気度を高める。

 

 

 

しかし、それから軽く半年以上経過、

「読みたい」という気持ちはあっても

なぜだか一向に食指が動かず、

いつまでも本棚で順番待ち状態。

 

 

 

▽2021年の2月になっても

1ページも読んでいなくて

これから読みたい作品の一つに

『姑獲鳥の夏』を挙げている始末。

 

 

 

 

仕方ない。

本というのはなんとなく

読むタイミングというか

フィーリングがあるのだ。

 

 

 

読みたい=読める時期ではない。

 

 

 

その時が来たら読める、

それまでは読めなくても焦らないこと

ただじっと待って待って待って

諦めずに自分のタイミングを待つ。

 

 

 

そんなこんなで悠長に構えていたら

いつの間にやら2024年、

本は逃げない、腐らないとはいえ、

四年越しとはずいぶんと

時間がかかってしまったものである。

 

 

 

 

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「だいたいこの世の中には、あるべくしてあるものしかないし、起こるべくして起こることしか起こらないのだ。自分達の知っている、ほんの僅かな常識だの経験だのの範疇で宇宙の凡てをを解ったような勘違いをしているから、ちょっと常識に外れたことや経験したことがない事件に出くわすと、皆口を揃えてヤレ不思議だの、それ奇態だのと騒ぐことになる。だいたい自分達の素性も成り立ちも考えたことのないような者に、世の中のことなんかが解ってたまるかい」

 

 

 

京極夏彦の作品は

今まで全く読んだことがなかった。

 

 

 

どこかおどろおどろしくて

妖艶な表紙の雰囲気から

勝手にホラー小説だと思い込んでいた。

なんという勘違い、甚だしい。苦笑

 

 

 

しかし、ホラーじゃないとして

これはどういうジャンルだろう。

 

 

 

事件が起こる、探偵が登場する、

謎が解けるという点からすると

ミステリーと言えるだろうが

異色というか異端というか。

 

 

 

神主でもあり、古書店を営む

京極堂こと中禅寺秋彦、

その妹で雑誌編集者の中禅寺敦子、

作家の関口、探偵の榎木津、

刑事の木場、などなど、

誰が主人公になっても遜色のない

個性豊かな顔ぶれが登場。

 

 

 

ここではこの小説の内容を

あえて事細かには出さないけれど、

とある医院で一人の男性が密室から姿を消し

残された妻が20ヶ月経っても子供を

身籠ったままという異常な事態が起き、

その家の者が依頼を持ちかけるところから

事件の捜査が始まっていく。

 

 

 

生きているか死んでいるか

まるっきり行方知れずな男と、

身籠ったままで部屋に篭り

どんどんやつれていく女。

その周りを取り巻く、

世間とずれた感覚で生きる人々。

 

 

 

なんとも非科学的すぎる現象に

なにかの呪いや怪異の仕業ではないか、

この小説の語り手である

作家の関口でなくても

そう思わずにいられない。

 

 

 

しかし、本当にそうなのだろうか?

否、そうではないと

京極堂は静かに論じる。

この世に不思議なことなど

なにもないのだと。

 

 

 

なんとも奇妙で不穏で暗い、

じっとりとした湿度の高い空気が

始終まとわりついてくるような

そんな調子で物語が進んでいく。

 

 

 

ずっと見ないようにして

重い蓋で閉じ込めていた真実

ようやくこじ開けてしまう瞬間、

事件は終わっても消えない傷跡。

 

 

 

 

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「いいか、関口。主体と客体は完全に分離できないーーつまり完全な第三者というのは存在し得ないのだ。君が関与することで、事件もまた変容する。だから、君は善意の第三者では既になくなっているのだ。いや、寧ろ君は、今は当事者たらんとしている。探偵がいなければ、起きぬ事件もある。探偵などというものは、最初から当事者であるにもかかわらず、それに気づかぬ愚か者なのだ。いいか、干菓子は蓋を開けたときにその性質を獲得した可能性もある。事件もまた然りだ」

 

 

 

魅力的で尖った個性のキャラクターたち、

インテリでナンセンスな言葉の応酬、

妖怪よりも怪奇的な人間達の所業、

断ち切れない悲劇の連鎖…

 

 

 

ごちゃごちゃと書いたけれど

ずばり、面白かったです。

 

 

 

文庫本にして約620ページ。

これがデビュー作だなんて

まったくどうかしている。

(褒め言葉)笑

 

 

 

京極堂の登場する

百鬼夜行シリーズは

『姑獲鳥の夏』に始まり、

このあと数作続いている。

(いずれも大長編)

 

 

クリスティーも横溝正史も

まだ読み終わっていないのに

読みたい本がたくさんあって

贅沢にも悩ましい。

 

 

 

続きを読むかどうかは

まだわからないが

いずれまた、そのうちに。

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

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