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仕事と家庭を両立して、家も買って、
運動もして、流行も追って……
それができる人はそうしたらいい。
でも、そういうのが
「うまくできる人間」ばかりじゃない。
「しなきゃいけないこと」が
世の中には無数に溢れている。
「これをしないとヤバい」という
不安を煽るメッセージだらけ。
どうしていつも追い立てられるような
気分になるんだろう?
理由の一つは「情報が多すぎるから」。
テレビ、雑誌、ネット、
あらゆるメディアで様々な人が
情報を発信し続けており、
絶えず浴び続けていると
どれを信じたらいいかわからなくなる。
もう一つの理由は「そのほうが儲かるから」。
人間は現状に満足するとお金を使わなくなる。
だからモノを売るときには
「このままじゃまずいんじゃないか?」と
不安にさせたほうがお金を使ってくれる。
でも本当はそんな手に引っ掛からなくていい。
いわゆる「しなきゃいけないこと」の99%は「本当は別にしなくていいこと」だ。
この本の著者のphaさんは
高校から京都大学へと進学し、
その後、新卒で就職をする。
しかし「なんとなく」で突き進んだ道は
全然好きになれなかったという。
「なぜしないといけないのかが、自分でよくわからないことは、もうやめよう。まわりに理解されなくても、自分で実感の持てることや、自分のしたいことだけをやっていこう」
そうしてとうとう、
こんな生活は続けられないと思い、
ついに会社を辞めることに。
周りからは当然止められたし、
「普通」から外れることに不安が
なかったわけではない。
だが、会社を辞めた代わりに
友人が増えた、自由な時間が増えた、
収入は減った、ストレスも減った。
生きるうえで最低限のこと、
そして自分がしたいことをして
前より今のほうが幸福感が増したと語る。
1.他人や世間の評価で行動を決めるのではなく、自分なりの価値観を持つこと
2.他人や世間のペースに無理に付いていこうとせず、自分のペースを把握すること
この2つのポイントを抑えることが肝要だ。
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この本ではphaさん自身の体験に基づいて
「これはしなきゃいけない」という
思い込みの呪縛をとくために、
4つのテーマに分けられた36個の
「しないことリスト」が登場する。
「所有しないリスト」
「努力しないリスト」
「自分のせいにしないリスト」
「期待しないリスト」
どこから読んでもよいと紹介されており
興味深かった項目があるので
いくつかピックアップ。
全部真似ができるわけではないけれど
ちょっとした考え方のヒントに。
・買い物しない
…年を重ねていくと欲しいものが
それほどなくなってくる。
経験から、なんとなく買う前に
想像が着くようになってくるから。
生活に必要十分なものが把握できれば
無駄な買い物はなくなってくる。
別に服にそれほど興味がない人は
「別に毎日同じ服着てもいいんだ」ってわけで。
・お金で解決しない
…なんでもお金で得ようとしていないか?
お金と時間には互換性がある。
お金がなくても時間に余裕があれば
補えることも多いという発見。
・一箇所にとどまらない
「人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは、「決意を新たにする」ことだ。
…これは経営コンサルタントの
大前研一さんの言葉だそうだ。
気持ちを入れ替えるなんて
やわなことを言っていていても
なにも変わらないのだ。
精神論で突破するのではなく
身を置く環境を変えること。
引越ししなくても、ちょっと旅に出て
いつもと違う場所に身を置くだけでもいい。
・何かのためにしない
…何かをしようと思ったとき、
実用性にとらわれすぎないこと。
「楽しさというのは結果じゃなくて
そこに至るまでのプロセスに宿る」。
「何の役に立つか」を考えてするのではなく、
そのこと自体を楽しむこと。
アメリカの社会学者タルコット・パーソンズは
これを「コンサマトリー(自己充足的」と呼ぶ。
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もし何の疑いもなく、あれもこれも
「しなきゃいけない」と思い込んで、
がんじがらめになっている人がいたら、
どうかこの本を開いて、
「あ〜、別にしなくてもなんとかなる」って、
気づいてもらえたらと思う。
「すべて自分で変えないといけない、自分にすべての責任がある」と思って生きるのはしんどいものだ。
「人生には自分自身ではどうしようもない、自己責任じゃない部分がたくさんあるんだ」という認識をするだけでも、少しラクに生きれるし、他人にも優しくなれる。
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『しないことリスト』って
オリバー・バークマンの
『限られた時間の使い方』の
考え方にも通じるなぁと感じた。
何をやって、何をやらないか。
やること以上に
「しないこと」を決めることが
重要なのかもしれない。
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